意匠の業種別ヒント

【意匠】玩具業界の皆様へ

(1)はじめに

「玩具は、子どもにとって芸術への最初の入門であり、更に言えば、むしろ芸術の最初の実現でもある。」と、ある詩人が詠んだように、玩具は少年少女時代を形成する夢の道具といえます。大人になっても、なお惹きつけられる娯楽でもあり、「単なる遊び道具」の一言だけでは語れない奥深さがあります。また、赤ちゃん時代に触れる玩具は、情操性や社会性を豊かにする知育・教育の重要な役割も持っているそうです。

近年、玩具業界は、少子化問題に加えて消費者嗜好の変化・多様化等の影響や、業界全体が世間の気運に左右されやすいこともあり、国内マーケットは若干ではありますが縮小傾向にありました。しかし、2018年度は「遊戯王OCG」や「ポケモンカードゲーム」等のカードゲーム・トレーディングカードの分野、サプライズトイや女児キャラクター等の女児玩具の好調によって、国内市場は過去18年で最高の売上高を記録して、2009年を底に元気さを取り戻しており、玩具業界の力強さが感じられます。また、今後はハイテク技術を取り入れた玩具や、アナログ玩具の復刻、シルバー向け玩具で需要が見込まれるようです。

”HARAKENZO more では、日本を支える玩具業界の皆様の知財活動を応援したいと考え、このようなページを設けました。当記事が、意匠出願を考えていらっしゃる方々のお力となれれば幸いです。

(2)玩具の意匠について

玩具というものは、いかに一般消費者を惹きつけ、夢中にさせることができるかがとても重要かと存じます。特に子供向け玩具ですと、尚更直感的にそのような印象を与えなければなりません。その印象を左右する重要な要素の1つが「デザイン」です。優れた商品デザインは、その玩具会社の「顔」として世間に認識されることでしょう。

しかしながら、デザインというのは目に見える「外観的特徴」ですから、特許のように一見して模倣が困難なものと違い、パッと見ただけで容易にデザインをマネされる可能性が多くあり、これがデザインの弱いところでもあります。

そのようなデザインを保護して、他人にマネされないよう独占的に使用できる権利が「意匠権」です。

我が国の玩具メーカーが取得している意匠の一例を以下に紹介致します。

★コマおもちゃ

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(株式会社タカラトミー 登録意匠第1538616号)

★形態変形玩具

 

 

 

 

 

 

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(株式会社バンダイ 登録意匠第1453138号)

★家屋おもちゃ

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(株式会社エポック社 登録意匠第1449207号)

(3)全体だけでなく、玩具の「一部分」についても権利保護できます

意匠は物品全体について権利保護される制度です。しかしながら、ある一部分に特徴がある玩具の意匠に対し、第三者に「その特徴部分だけ模倣されたうえで全体として似ていない玩具」を使用された場合には、第三者に対して意匠権の効力は及びません。

このような事態を回避するために、玩具全体を意匠登録するだけでなく、一部のデザインを「部分意匠」として登録することができます。よって、ある部分に特徴をもたせた玩具の、その部分だけに限定して意匠権を得ることが出来るのです。

我が国の玩具メーカーが取得している部分意匠の一例を以下に紹介致します(実線部分が部分意匠の権利範囲です)。

★ゲーム機

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(株式会社バンダイ・株式会社ウィズ 登録意匠第1325908号)

★人形

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(任天堂株式会社 登録意匠第1515141号)

★時計型玩具(薄赤色着色部分以外が部分意匠の権利範囲です。)

Eグループ(趣味娯楽用品及び運動競技用品)
(株式会社バンダイ 登録意匠第1541881号)

(4)自動車や新幹線などを模した玩具について

意匠権は、原則「1物品」につき「1デザイン」をセットで保護する権利であるため、例えば、「物品:自動車」に対して「ランボルギーニのデザイン」の組合せでしか保護されません。

自動車や新幹線のデザインは、そのまま模型玩具等として使用されることが多くございます。例えば、玩具メーカーから「ランボルギーニのデザイン」を真似した自動車の玩具を販売されても、自動車メーカーが自動車に対して取得した意匠権はその玩具の意匠権には権利は及ばないことになります。(※不正競争防止法等その他の法律で取り締まることは可能です。)

★自動車の例

(ランボルギーニ)

 

(マセラティ)

 

★新幹線の例(JR東日本)

新幹線についても、JR各社が「物品:電車おもちゃ」にも意匠権による保護を行っています。
自動車や新幹線等の乗り物のデザインを玩具にして販売する際は、デザイン元と物品が違っていても注意が必要です。

(5)海外で模倣品が出回ってからでは遅い

ひとたび玩具が大ヒットとなると、外国、特に東アジアから模倣品が国内に流入し、出回ることがあります。また、現地で意匠や商標の出願が済まされてしまっていることも多いものです。

そういった事態に直面した後で、やっと海外で権利保護を図ろうとしても大変厳しい状況になりますので、国内での意匠権取得と同時に海外諸国でも意匠出願を行うことを強くお勧め致します。海外での展開を考える際にも、ぜひ、お気軽に当所にご相談ください。

欧州・米国などの知財先進国をはじめ、近年では東アジア、東南アジア諸国、その他各国において意匠の取扱は様々でございます。意匠登録を行う方法にも、各国において必要なノウハウが存在しますので、この点はお気軽にご相談頂ければ幸いです。

また、2015年より我が国もハーグ協定に加入したことから、国際意匠登録制度の利用が可能となりました。国際意匠登録制度を利用すれば、1の出願で複数の国に出願したのと同じ効果を享受することができ、手続面・費用面共に負担を軽くすることができます。

国際意匠登録制度について詳しくはこちらをご欄ください。

(6)”HARAKENZO more は玩具業界の皆様を応援します

玩具業界では、独自のデザインで他社との差別化を図ることで事業の大きな戦略となりますが、一方、知的財産で適切に保護されていないと、そのデザインをマネた海賊版が簡単に流通してしまい、水際対策に追われることになってしまいます。

そのため、皆様が知的財産権の問題を意識せざるを得ない状況に直面することもあろうかと思います。”HARAKENZO more では、玩具業界の皆様の知的財産保護に全力を尽くす体制を整えております。どうぞお気軽にご相談ください。

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