ベトナム

目次

ベトナムの概要

一般事情および経済

①面積:329,241平方キロメートル(日本の約85%)

②人口:約9,946万人(2022年時点)

③首都:ハノイ

④言語:ベトナム語

⑤宗教:仏教、カトリック、カオダイ教ほか

⑥農林水産業、鉱工業・建設業、サービス業

⑦主要産業:GDP(2022年)︓約4,138億米ドル

⑧一人当たりGDP(2022年):約4,110米ドル

⑨輸出額(2022年):3,719億ドル(対前年比10.6%増)

 主要輸出品目:繊維・縫製品、携帯電話・同部品、PC・電子機器・同部品、履物、機械設備・同部品等

 主要輸出農産品:殻つきカシューナッツ、コメ(精米)、コーヒー(生豆)

 主要輸出相手国:米国、中国、韓国、日本、香港

⑩輸入額(2022年):3,607億ドル(対前年比8.4%増)

 主要輸入品目:機械設備・同部品、PC・電子機器・同部品、繊維・縫製品、鉄鋼、携帯電話・同部品等

 主要輸入相手国:中国、韓国、日本、台湾、米国

現行ベトナム知的財産法について

1996 年7月1日に施行された民法の中に工業所有権に関する規定が含まれ、従来の法律や規則を改め工業所有権法に改正された。

その後知的財産権に関する規則が民法から独立し、知的財産法として2006年7月1日に施行された。2023年1月1日からは、2022年6月16日に改正された知的財産法が施行された。

加盟している主な国際条約はパリ条約 (Paris Convention 1949.3.8効力発生)、世界知的所有権機関を設立する条約(WIPO条約, 1976.7.2効力発生)、特許協力条約(PCT, 1993.3.10効力発生)、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(Trips協定, 2007.1.11効力発生)、標章の国際登録に関するマドリッド協定(マドリッド協定, 2006.7.11効力発生)、意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(ハーグ協定 2019.12.30効力発生)。

ベトナムの現状

2007年1月WTOに加盟以降、BRICsに続く新興国グループVISTAの一つとして、将来の発展が期待されている。また、賃金が中国の3分の1程度のため、ネクストチャイナとしても注目され、先進国の企業が生産拠点を中国から移し始めている。

知的財産面でもWTO加盟に備えて制度が整備されてきた。主な知財関連の国際条約にも加盟しており、ASEAN諸国の中でも際立って積極的であるといえる。

近年、イノベーションを実践する製造業が発展する兆しがあり、知的財産関連の出願数は、2015年において、特許が約5000件、商標が約4万2500件、意匠が約2400件であり、いずれも増加傾向である。

  • 〔特許・実用新案〕
    出願件数は、全体的に見ると増加傾向にある。2015年には5,033件、2021年には8,543件に増加している。
  • 〔意匠〕
    出願件数は、全体的に見ると増加傾向にある。2015年には2,445件、2021年には3,783件に増加している。
  • 〔商標〕
    出願件数は、全体的に見ると増加傾向にある。2015年には42,542件、2021年には69,834件と増加している。

 

2018年度~2021年度における出願件数および登録件数の統計は下表のとおりである。

出願件数 2020年 2021年 2022年 2023年
特許 全数 7695 8534 8707 9458
(内 外国出願) 6674 7468 7812 8467
(内日本から) 1700 1620 1530 1602
(内 PCTルート) 5748 6663 6966 6418
実用新案 全数 575 466 601 835
(内 外国出願) 175 129 146 241
意匠 全数 3499 3783 3396 3824
(内 外国出願) 1499 1754 1396 1810
(内日本から) 273 212 264 241
商標 全数 63667 69842 64180 68964
(内 外国出願) 16377 16916 16428 18239
(内日本から) 1553 1411 1459 1329
登録件数 2020年 2021年 2022年 2023年
特許 全数 4319 3691 3868 3668
(内 外国出願) 4180 3538 3715 3353
(内日本から) 1645 1258 1327 1041
(内 PCTルート) 3713 3092 3279 2991
実用新案 全数 278 250 243 46
(内 外国出願) 77 63 67 77
意匠 全数 2293 2484 2245 2415
(内 外国出願) 1183 1288 1168 1270
(内日本から) 286 259 193 176
商標 全数 43011 42484 45630 40415
(内 外国出願) 17349 17108 16184 15223
(内日本から) 2150 1794 1541 1365

 

 

(出典:WIPO IP Statistics)

 

 

特許制度情報

出願から特許まで

手続言語

手続言語:ベトナム語(省令7.2b(ⅱ))

委任状、譲渡証、明細書、優先権書類は、ベトナム語に翻訳する必要あり。
*書面による出願だけでなく、オンライン出願システムによる電子出願も認められる。

出願から特許まで

特許を受けるためには、発明が不特許事由に該当せず、且つ新規(New)で、進歩性(Inventive Progress) を有し、産業上利用性 (Industrial Applicability) を有していなければならない。

(1) 不特許事由(59条)

次のものは、発明として特許を受けることができない。

  • ① 発見,科学的理論,数学的方法
  • ② 精神活動の実行,飼育動物の訓練,ゲーム,事業遂行を行うための計画,企画,規則又は方法,コンピュータ・プログラム
  • ③ 情報の提示
  • ④ 審美的特徴のみの解決
  • ⑤ 植物品種,動物品種
  • ⑥ 植物及び動物の生産のための本質的に生物学的性質の方法であって,微生物学的方法以外のもの
  • ⑦ ヒト又は動物のための疾病予防,診断及び治療

(2) 新規性(60条)

次の事項に該当する発明は,新規であるとみなされる。(60条(1))

  • ①発明登録出願の出願日前,若しくは該当する場合は優先日前に,ベトナム国内又は国外において,使用により又は書面での説明その他何らかの形態の手段により,公然と開示されていない
  • ②発明登録出願の出願日前,若しくは該当する場合は優先日前に提出され,当該出願日又はその優先日以降に公表された他の発明登録出願がない

なお、発明を守秘義務のある者にのみ知られた場合、発明は新規性を喪失しない。(60条(2))

新規性喪失の例外

発明が新規性を喪失した場合においても、以下の場合には公知となった日から12ヶ月以内に出願された場合には、喪失しなかったものとみなされる。(60条(3)(4))

  • ① 特許を受ける権利を有する者による開示
  • ② 特許を受ける権利を有する者から直接的・間接的に知得した者による開示
  • ③ 願書や登録証における、産業財産権の所轄当局による開示であって、適法でない開示
  • ④ 特許を受ける権利を有さない者の出願の開示

(3) 進歩性(61条)

発明が、出願日(又は優先日)前の国内又は外国において既に公表されている発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができなかった場合には、その発明は進歩性を有する。

なお、上の新規性喪失の例外に関する①~④に示す開示にて公知になった事項は、進歩性の判断時にも、公知技術として扱われない。

(4) 産業上利用性(62条)

発明が、同一物を大量生産することができ、又は反復継続的に同一の結果を達成することができる場合には、その発明は産業上利用可能性を有する。

(5) 審査手続

ベトナム特許制度
≪出願~登録までのフローチャート≫

 

① 出願は方式審査され、要件を満たしていない場合、受理拒絶の予定を出願人に通知(応答期間は1ヶ月以内)される。(省令13.6 (a))。

② 出願は、原則出願日(又は優先日)から19ヶ月後に公開される(PCT国内移行の場合、出願が適法なものとして受理された日から2ヶ月以内に公開される。)(省令14.2 (ⅰ)(ⅱ))。

なお、出願公開日から9ヶ月以内の間であれば、第三者は公開された出願への特許付与に対して異議申立てを行うことが出来る。異議申立ては書面で行うものとし、当該第三者はその主張理由の裏付けとなる関連書類および情報を提出しなければならない。

上記の異議申立とは別に、出願公開日から特許付与日までの間であればいつでも、第三者は公開された出願に記載されている発明の特許性に関して意見書を提出することができる。

③審査請求制度が採用されているため、出願人は出願日又は優先日から42ヶ月以内に、審査請求をしなければならない。(省令25.1(ⅱ))。なお、審査請求は第三者も行うことができる。
 また、出願人が証明可能な不可抗力な事態(自然災害など)に遭遇した場合または客観的な障害(病気、出張、遠隔地での研究など)が存在する場合にのみ、審査請求の期限を6カ月延長することが認められる(省令25.1(ⅱ))。但し、不可抗力な事態および客観的な障害の基準が不明確であるため、上記延長が認められない場合もあり得る点に注意が必要である。

④審査官が出願を審査した結果、特許要件を満たしていないと判断した場合には、応答期限を指定して拒絶理由を通知する。この拒絶理由通知に対して、出願人は3ヶ月以内に意見書や明細書等の補正書を提出することができる。(省令15.7(ⅰ)(ⅱ))。
 また、方式審査において、書誌的事項に不備が発見された場合には、補正指令が通知される。上記補正指令に対する指令応答期限は、2ヶ月である(省令13.6 a)。
 出願人は、省令の規則9.2の規定に基づき、上記の期間の延長を請求することができる。具体的には、書誌的事項に関する指令応答期限については2ヶ月の延長が可能であり、拒絶理由通知に対する応答期間は、3ヶ月の延長が可能である。
 審査官の審査結果に対し、出願人は審判請求をすることもできる。

⑤審査の結果特許要件を満たしていると判断した場合には、特許を付与すべき旨の決定をおこなう。この決定に対して必要な料金(特許料)が納付された場合、特許が登録原簿に登録される。その後、特許権者に特許証が発行される。保護期間は出願日から20年(ただし、権利の発生は登録日から)。
 上記特許料の納付期限は、特許を付与すべき旨の決定通知の発行日から3ヶ月である。

⑥ 補正又は申請書の明細書に記述した内容を超えて、保護範囲(数量)を拡張したり、申請書に記述する対象の本質を変えることは認められない。(省令17.1(c))

⑦ 特許出願を実用新案出願に変更することは認められる(17.3(a))。

⑧ 分割出願は出願が審査中に可能。

⑨ 対応外国出願の情報提出について

 

出願人は、対応外国出願に関する情報をベトナム国家工業所有権庁に提出することができる。対応外国出願の審査結果を提出することによって、審査を促進することが可能。提出書類は以下のとおりです。

  •  a)対応外国出願において発行されたサーチ結果及び審査結果の写し
  •  b)対応外国出願の許可された明細書(特許公報又は登録公報の写し)
  •  c)当該発明の技術内容について対応外国特許庁により発行された書類の写し

PCT 出願国内段階移行手続

優先日から31 ヶ月以内に国際出願時の明細書等の翻訳文を提出する必要がある。(省令27.4a)

また、2018年1月15日に実施された改正特許法において、従来の翻訳文の提出期限の延長制度は廃止された。

なお、PCTルートの場合、譲渡証および優先権書類は不要。

パリ優先

パリ条約に基づく優先権を主張する場合、翻訳文の提出期限は、優先日から12ヶ月以内。

特許権の存続期間

(i) 出願日(PCT 出願経由ベトナム出願の場合は、国際出願日)から20 年間。

  →権利の発生は登録日から 存続期間の延長制度はなし

(ii) 年金:最初の年金は、特許付与の際に、その後は毎年特許付与日に対応する日前に納付する必要あり

審査の促進について

ベトナムの審査官は、JPO、USPTO、EPO、AU特許庁等の、一部の海外特許庁の審査結果を認めている。従って、JPOにおいて特許が登録査定を受けている場合には、JPOに出願したクレームを変更せずに、ベトナム特許庁への出願を行うことにより、出願から5~6ヶ月程度の期間で、特許が付与される。

また、出願とともに審査請求を行った場合、早期の公開請求をすることにより、審査を早めることができる。(但し、PCT国内移行の場合を除く)

なお、日本国特許庁とベトナム特許庁との間にて、特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムが2016年4月1日より開始されている。
但し、ベトナム特許庁への日本国特許に基づくPPH申請は、1年当たりの上限が200件である。詳細には、4月1日~9月30日までの期間の上限が100件に設定され、10月1日~3月31日までに期間の上限は、年間件数が200件に達するまでの件数に設定される。
現在(2020年12月時点)、ベトナム特許庁への日本国特許に基づくPPH申請の受付は停止しているが、2021年4月1日から上記PPH申請の受付が再開される予定である。

秘密特許制度の存在

ベトナムでは、公開するにふさわしくない発明(国益にかかわる発明や国防及び国家の安全にかかわる発明)については、秘密特許としての保護を受けることができる。この場合、外国出願について制限を受ける。

 

実用新案(Utility Solution)制度情報

実用新案に関する独立した法律はなく、特許等と共に知的財産法((Law on Industrial Property)の中で規定されています。保護対象は特許と同様(日本の実用新案法と違い、物品等に限定されずに方法も保護対象)。特許出願の規定が実用新案出願にも適用される。

従って、実用新案に対しても、方式審査に加え、実体審査が行われる。よって、日本法にある実用新案技術評価制度は存在しない。また、審査期間も、特許の場合と同様である。

特許と実用新案の相違点

(1) 登録要件

特許の場合は、新規性、進歩性、及び産業上利用性の要件が要求されるのに対し、 実用新案の場合は、新規性及び産業上利用性の要件のみ要求され、進歩性の要件は要求されない。

なお、特許から実用新案への出願変更が可能である。このため、進歩性欠如の理由によって、特許の権利化が認められなかった場合に、実用新案での出願を行うことができる。

(2) 審査請求期限

出願日(又は優先日)から36 ヶ月以内。

(特許の場合は、出願日(又は優先日)から42 ヶ月以内。)

(3) 存続期間

出願日から10 年

(特許の場合は、出願日から20 年)

 

商標制度情報

国際分類の採用

一出願多区分を採用(101条(4))

2006年7月11日付でマドリッドプロトコルに加入

出願時に必要な書類・情報

(1)願書

願書に記載する情報は、以下の通り

  • 出願人の名称・住所・代表者氏名
  • 指定商品/役務とその分類(ベトナム語で明示しなければならない)
  • なお、商標制度の保護対象として、商標に加えて、サービスマークも含まれる。

(2)商標見本

出願商標が外国語の単語または語句である場合は、ベトナム語の翻訳や音訳を付さなければならない。

また、日本語からなる商標を出願することが可能であるが、この場合、英語による発音・音訳の表記を、商標の一部として、日本語に付加する必要がある。

従って、ベトナムに出願した商標は、日本に出願した商標と異なるものとなるが、日本出願を基礎とする優先権の主張が認められている。

審査は、付加された英語に基づいて行われるため、ベトナムへの出願を行う場合には、付加された英語が適切であることを、事前に確認する必要がある。

音商標の場合には、オーディオファイル形式、またはグラフィック形式で表現したものを提出する必要がある。

(3)委任状

公証・認証不要

出願審査のながれ

方式に不備がなければ、出願受理日から2ヶ月以内に出願内容が公開される。

2023年1月1日改正法施行により、出願公開日から5ヶ月以内に、何人も異議申立をすることができるようになった。この異議申立とは別に、出願公開日から登録査定日前までの間、情報提供手続も可能である。

実体審査の期間は、出願公開日から9ヶ月。従って、商標権の取得に要する平均期間は、12ヶ月以内程度である。

審査官より拒絶理由が通知された場合には、出願人は意見書・補正書の提出が可能である。なお、出願において、優先権が主張できる期限は、優先日から6ヶ月以内である。

ベトナム商標制度
≪出願~登録までのフローチャート≫

存続期間

商標登録出願の日から10年(権利の発生は登録日から)

商標権の存続期間更新

10年毎の更新が可能。

更新手続は、存続期間満了日の6ヶ月前までに行わなければならない。

→満了後6ヶ月の猶予期間あり

更新手続時、商標登録証の原本を提出する必要がある。

標章の使用義務

出願時点での使用義務はないが、登録後は標章を使用する義務が生じる(136条(2))。すなわち、標章が正当な理由なく、継続して5年以上、標章の所有権者またはその者の使用権者により使用されなかった場合、標章の所有権の効力が終了する。

コンセント制を採用

商標法上に規定はないが、実務上、コンセント制を採用している。異議申立の審理等において、同意書を提出することができる。ただし、コンセントの採否は担当審査官の裁量に委ねられている。

 

意匠制度情報

保護対象

(1)定義:形状、線、寸法、色彩若しくはそれらの組合せにより表現された製品、又は複合製品の組立部品の外観であり、その製品又は複合製品を使用する際に見える外観

登録要件

① 不登録事由に該当しないこと
  ・物品の機能にのみ基づく物品の外観
  ・公共のまたは工業上の建造物の外観
  ・製品の使用中に見えないもの

② 新規であること(世界主義を採用)
  ただし、以下に該当する意匠は、公開または展示の日から6月以内に出願されることを条件として新規性を欠くとはみなされない。
  ・創作者または譲受人の許可なしに、他人により公開された場合
  ・創作者または譲受人により、学術的発表の形態で公開された場合
  ・創作者または譲受人により、ベトナム国内博覧会又は公式若しくは公認の国際博覧会において展示された場合

③ 創作的であること

④ 産業上の利用可能性があること

(3)その他

※一意匠一出願(ただし、例外として組物および変形を伴う工業意匠)

出願時に必要な書類・情報

※手続言語:ベトナム語

(意匠の場合のみ、優先権書類のベトナム語訳は不要。)

(1)願書 

願書に記載する情報は、出願人の名称・創作者の氏名・優先権主張の有無、物品の名称等

(2)意匠の説明書(クレーム) ※必須

公知の意匠との相違点を明示しなければならない

意匠の内容を表わす特徴を明示しなれければならない(例:物品の全部または一部が透明の場合はその旨を記載)

変形から構成される意匠の場合は、これらの変形を十分に明示しなければならない

意匠が組物に係る場合には、組物を構成する各製品の特徴を明示しなければならない

(3)意匠の写真または図面及びその写真または図面に含まれる明細書

6面図と斜視図

5部提出する

図面等の代わりに見本・ひな形を提出することは認められていない

明細書には、次の事項を順に記載しなければならない
・それぞれの写真、図面
・意匠の形状、模様の特徴

(4)委任状

包括委任状制度あり

出願審査のながれ

方式審査の後、実体的な審査が行われる(審査請求不要)。方式上有効であるとして受理された日から2ヶ月以内に出願内容が公開される。さらに、実体審査後にも公開される。

※2023年1月1日改正意匠法の施行により、出願時における出願人の申立てにより、出願公開を出願日から最大7ヶ月まで延長可能になった。

2023年1月1日改正法施行により、出願公開日から4ヶ月以内に、何人も異議申立をすることができるようになった。この異議申立とは別に、出願公開日から登録査定日前までの間、情報提供手続も可能である。

審査官より拒絶理由が通知された場合には、出願人は意見書・補正書の提出が可能である。

ベトナム意匠制度
≪出願~登録までのフローチャート≫

存続期間

出願日から5年

(2回更新可/最長15年)

権利範囲

意匠権者は、登録意匠および類似意匠について排他的権利を有する。

使用権の設定はベトナム特許庁に登録を要する(第三者対抗要件)。ただし、未登録でも当事者間では有効。

 

模倣品対策

模倣品・海賊版の出現状況

深刻な模倣品の問題に直面している。

侵害品の数と範囲が増加しており、また、印刷技術の進歩等によって侵害の方法がより巧妙になっている。発生源については、模倣品・海賊版の相当数は密輸入されるものであり、中国との北部国境において最も活発な密輸活動が報告されている。

対策

(1)行政処分

侵害品の流通をストップさせることが最終目標である場合には、行政措置がもっとも効果的であるケースが多い。

具体的には:

  • 警告
  • 罰金(最高500,000,000VND=約180万円)
  • 模倣品および製造装置の没収
  • 虚偽情報の強制修正
  • 侵害要素の強制的な除去

(2)民事訴訟

迅速性に欠けるため、主に損害賠償請求の手段と考えられている(侵害品の問題を訴訟で解決するという方法は未だ定着していない)。

ベトナムでは知的財産関連の判例の数が少ないうえに判例の公開が十分でないため、裁判所の判断傾向を把握するのが困難。

(3)国境取締り

権利者は、ベトナム国境を越えて輸出入される商品の通関の監視および差し止めを税関に請求できる。ただし、権利者は侵害の主張が誤っていた場合の税関の懸念を緩和するため、侵害疑義物品に知的財産権の侵害があることを示す予備的な証拠を集めて提出し、その主張に誤りがあった場合には賠償金の支払責任を引き受けなければならない。

(4)刑事的措置

侵害行為によって社会に深刻な影響を与えられた場合や再犯の場合には、刑事訴訟が実施される。

権利者の請求は、刑事訴訟の必要条件ではない。ただし、権利者は侵害の事実を示す一応の証拠を添えて所管当局に告訴状を提出できる。所管当局は、この証拠を予備的証拠として捜査・検証をおこなう。

刑事罰の対象となった場合でも、権利者は損害賠償を請求可能(…民事裁判所に請求を提出しなければならない)。

権利保有者が主導的に所管当局と緊密に協力し、侵害者に対してエンフォースメント措置をとることが重要

将来に向けて解決すべき課題

司法制度が未発達

行政手続の透明性・公平性に対する不信(汚職の問題が深刻)

国民への知財教育が不十分

≪ 解 決 策 ≫

  • 法制度の構築
  • 手続の透明性の確保
  • 表現の自由の確保
  • 国民への啓蒙活動

市場の信頼性を高め、外国企業からの投資を呼び込む

 

 

ベトナムに関する資料

ベトナム特許庁

http://www.noip.gov.vn/

知的財産法・産業財産権に関する政令・権利保護と知財管理に関する政令・ 産業財産権の行政罰に関する政令・ 産業財産権に関する省令・ベトナム知的財産法の日本語訳は日本特許庁HPの下記URLからダウンロードできます。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/gaikoku/mokuji.html

JETRO(日本貿易振興機構)が作成した「模倣対策マニュアル ベトナム編」は、下記URLからダウンロードできます。

https://www.jetro.go.jp/theme/ip/manual.html

 

更新情報

※ベトナム知財制度概観(2022/12/12更新)

1. 主な条約に加盟
→「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」に加盟している。

2. ベトナムに出願する場合、登録された現地代理人の選任が必要

3. 日本と比較して主要四法の扱いで共通している部分が多い
→著作権や商号、営業秘密等も含め、統一した「知的財産法」という法典が存在

  • ① 料金減免制度は、四法全てで不採用
    →日本では、意匠法以外で存在(ただし、商標法では分割納付制度)
  • ② 四法全てで、実体審査および出願公開が行われる
    →・日本では、実用新案法において実体審査は行われていない(同法14条2項)
     ・日本では、出願公開は特許法(同法64条)および商標法(同法12条の2)のみ
  • ③ 存続期間の起算日は、四法全てで出願の日
    →日本では、商標法のみ設定登録の日から(同法19条)
  • ④ 四法全てで異議申し立て制度が存在
    →日本では、現在特許法(同法113条)と商標法(同法43条の2)のみ

4. 模倣品対策等の侵害に対する救済手段としては行政措置の利用が一般的

国家知的財産権庁(NOIP:National Office of Intellectual Property)について

  • 1. 組織
    ・2010年以降、独立行政法人化
     →財務が独立:審査費用の一部は、国の許可によりNOIPで活用可
  • 2. 審査官…平均70~80名
    ・ベトナム国内で3拠点
     →本部(ハノイ):審査
      支部(ホーチミン・ダナン):出願受付のみ
    ・特許戦略部
     →第1部:機械・電子電気系
      第2部:化学・産業系・医薬品
      第3部:食品系
    ・意匠部
    ・商標部
     →第1・2部:国内申請分
      第3部:国際商標および地理的商標
    ・著作権(ソフトウェア含む)
     →原則として、文化スポーツ観光省の所管

 

日本からの出願の審査における問題点

1. ベトナム語の翻訳精度を上げることの重要性

・審査時にはまず英文を見る

   ↓

・英語とベトナム語との齟齬が大きい場合には、ベトナム代理人に
ベトナム語の訂正を依頼する場合あり

 →齟齬がひどい場合には取り消す場合もある

2. 優先権主張と審査請求

・日本でベトナムを指定して、優先権主張出願をしたにもかかわらず、
日本で審査請求がされない案件あり

 

 

 

弁理士 スペシャリスト  鷲見 祥之

 


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