台湾支援室

当特許事務所はかねてより台湾の知的財産権の代理業務に携わってきました。台湾の皆様による日本国での知的財産権取得および権利行使、並びに日本の皆様による台湾への知的財産権取得および権利行使等に関し、より質の高い各種サービスを提供いたしたく、「台湾支援室」を開設しました。

「台湾支援室」は、台湾と日本との間の架け橋となり、お客様をサポートし、よりハイレベルな知的財産権の保護を求めることを目指しております。日台間での知的財産権取得等に関し、有効に審査側とコミュニケーションを図り、理想的な権利化を実現することで、お客様に満足していただける各種サービスを提供致します。

また、中国語(北京語)や地元の台湾語での意思疎通や交渉もできますので、特許出願のみならず、日台間での知的財産権の権利行使にも役立つものと考えまております。

台湾の知的財産権に関するご質問等がございましたら、ご遠慮なくご相談ください。

台湾支援室 室長 吉田 良子

 

特許の種類

 台湾において専利(特許に相当)というのは、発明専利(発明特許)、新型専利(実用新案)及び新式様専利(意匠)の三通りがあり、すべて特許法に一括して定められている。
 発明特許とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものであって、産業上利用することができるものを指す。
 実用新案とは物品の形状、構造または組み合わせにかかる創作または改良であって、産業上利用することができるものを指す。
 また、意匠とは物品の形状、模様、色彩またはこれらの結合であって視覚を通じて訴える創作で、産業上利用できるものを指すものである。

 

特許権の存続期間

日本:発明特許20年、実用新案10年、意匠20年
台湾:発明特許20年、実用新案10年、意匠15年

 

出願公開制度、実体審査請求制度

 2002年10月26日から、台湾で出願公開制度、実体審査請求制度が始まった。

 出願公開制度

 台湾の出願公開制度は発明特許のみに適用し、実用新案及び意匠には適用しない。
 出願日(優先権主張の場合、優先権日)から1年6ヵ月経過すると、発明特許は自動的に公開される。なお、より早い公開も、希望すれば可能である。

 実体審査請求制度

 発明の場合、実体審査を請求する際のみ審査が行われる。また、実体審査を請求できる期間は出願してから3年以内。出願日から3年以内に審査請求しないと、特許出願は取下げたものとみなされる。
 一方、意匠は、実体審査を請求する必要がなく、出願後、自動的に審査が行われる。
 以上(1)・(2)は日本と同じ。

 

自発補正可能時期

出願の補正に対する時期的制限

(1)出願から1回目の審査意見通知書に対する回答期限内又は特許査定通知書送達まで
(2)最終理由通知書に対する回答期限内(※1)
 ※1次のいずれかに該当する場合に限って自発補正が認められます。
 ・特許請求の範囲の削除
 ・特許請求の範囲の縮減
 ・誤記または誤訳の訂正
 ・不明瞭な記載の釈明

 

 

商標制度

出願ルート

WTO加盟国であるため、日本商標出願に基づく優先権主張が可能。
※マドプロ未加盟

 

出願言語

中国語(繁体字)

 

商標の種類

文字、図形、記号、色彩、立体形状、動態、ホログラム、音など、又はその結合
※位置、匂いなどの非伝統的商標も保護される。
※防護標章制度、連合商標制度は1998年の改正により廃止された。
※一出願多区分制度を採用(商標出願の分割、商標権の分割制度も採用)

 

保護対象

一般商標(商品、役務)、証明標章、団体標章、団体商標

 

商標分類

国際分類を採用。 ※ニース協定には未加盟

 

出願に必要な書類・情報

必要な書類

・委任状の写し
・【優先権を主張する場合】優先権証明書の写し(中国語の翻訳を提出する必要がある)
※認証/公証は不要
※出願日から3月以内に提出可能

必要な情報

・商標見本
・指定商品・指定役務とその区分
・出願人
・優先権主張の有無(部分優先権主張、複数の優先権主張可能)

 

出願公開

出願公開制度はない。

 

異議申立制度

商標登録の公告日(公告の当日を含まない)から3ヶ月以内に、何人も異議申立を行うことができる。

※異議申立の決定を下す前に、異議申立て人は当該異議申立を撤回するができるが、同一事実について同一の証拠及び理由をもって再度の異議申立て及び無効審判を請求することができない。
※異議申立を経過し、登録された商標に対して、何人も同一事実について同一の証拠及び理由をもって無効審判を請求することができない。

 

審査

方式審査の経過後、すべての登録要件について実体審査がなされる。

 

情報提供

出願中の商標に不登録事由を発見した時は、何人も、証拠能力のある関連資料を添付した意見書を経済部智慧財産局に提出することができる。
※審査官は、第三者から提供された意見書に添付された証拠資料を出願人に提供し、意見を述べる機会を与えなければ、当該証拠資料を拒絶査定の基礎として採用することができない。審査官は、意見書を採用するか否かについて第三者に回答する必要はなく、最終審査結果を通知する必要もない。

 

無効審判制度

無効審判制度がある。

 

不使用取消制度の有無

不使用取消制度がある。商標登録後、正当な理由なしに継続して3年間不使用の商標は、不使用取消審判により取り消される可能性がある。

 

商標権の存続期間

商標登録の公告日(公告の当日を含む)から10年である(10年毎に更新可能)。
更新手続期間は存続期間満了日の前6ヶ月。
※存続期間満了日を経過しても、満了日から6ヶ月以内であれば2倍の更新料金を納付することにより更新が可能。

 

並行輸入に対する台湾最高裁の見解

 台湾商標法第36条第2項には「商標権の消尽」が次のように明文規定されています。

「登録商標を付した商品が、商標権者又はその同意を得た者によって国内外の市場で取引流通されたとき、商標権者は当該商品について商標権を主張することができない」

この条文は、並行輸入業者が真正品の平行輸入を合法的に行える根拠となっています。
一方、同一の商標が国内外で異なる商標権者に取得され、且つ、当該異なる商標権者との間に一定の経済上の関連性がある場合、商標権の消尽原則の適用については肯定説と否定説が存在していました。もっとも、これまで台湾では並行輸入の際は、国内外の商標権者が同一である場合に限り、商標権が消尽し、商標権者は並行輸入業者に対して権利を主張できないというのが多数の判決で取られている見解でした。

しかし、このほど、台湾最高裁は2020年1月30日の民事判決(108年台上字第397号)で次のように見解を示しました。

商標権者が同一の商標について自ら又は他人に許諾して複数の国で商標権を取得した場合、(中略)異なる国における商標権者に互いに許諾関係、又は法律上の関係があれば、許諾を得た商標権者に対し、消尽の効果が生じる。

・原審の知的財産裁判所の判断に対し商標第36条第2項に規定される商標権の消尽原則が台湾の国内外の商標権者が同一である場合のみに適用されるとして並行輸入業者に不利な判断をしたことに間違いがある。

■現行の台湾商標法逐条解説に、当該最高裁の判決を受けて、上記の見解が明記されました。

 

 

Q&A

 

台湾において特許権侵害に関するQ&A

Q1:特許権を侵害した場合は、刑事責任を有するか?

A:2003年3月31日より、他人の特許権を侵害した場合は、民事責任のみが問われ、刑事責任が問われない。

Q2:特許権を侵害した場合の民事責任とは?

A:特許権が侵害され、損害賠償を請求する場合、特許権者は下記二択より損害額を算定することができる:
 ①民法第216条に基づく。ただし、算定した損害額の証拠を提供することができない場合、特許権者は、当該特許権の実施による通常の利益から、侵害を受けた後に当該特許権を実施することによる利益を差し引いたものを受けた損害額とする。
 ②侵害者が侵害行為を行ったことにより得た利益に基づく。侵害者がそのコストや必要経費を証明することができない場合、その物品を売却した合計金額を得た利益とする。前記事項以外にも、特許権者の業務上における名誉や信用を失った場合、相応の賠償金額を請求することができる。
 上記二項の規定に基づき、侵害行為が故意であると判断された場合、裁判所は当該侵害状況を判断し、推定損害額以上の賠償を決定することができる。ただし、損害額の3倍を超えることはできない。

Q3:一般人が市場に存在している特許権取得中の物品を製造した場合、どのような責任が問われるか?

A:物品に特許権取得中と表示されているが、出願人はまだ特許権を取得していない場合、一般人が当該物品を製造しても権利侵害責任は問われない。ただし、当該出願が特許出願であり、特許法第40条の要件を満足するのであれば、特許権者は、適宜、賠償金を請求することができる。
 即ち、特許法第40条によれば、特許出願が公開された後で、出願人から特許出願の内容についての通知書を受領した者が、その通知から出願公告までの期間に引き続きその発明を業として実施した場合は、特許出願人は、その特許発明について公告がされた後、前記の者に対して適正な金銭的補償を請求することができる。
 また、前記請求は、特許出願が公開されていることを知りながら、その出願の公告まで、引き続きその発明を業として実施した者に対しても行うことができる。

Q4:特許権の効力とは?

A:特許法第56条の規定により、物の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人が当該特許権者の事前の承諾を得ずに、その特許物を製造、販売の申出、販売、使用すること、又は前記の目的で輸入することを排除する排他権を有するものとする。
 また、方法の特許権者は、本法に別段の定めがある場合を除き、他人が当該特許権者の事前の承諾を得ずに、その方法を使用すること及びその方法を直接使用して製造された物品を使用、販売すること又は前記の目的で輸入することを排除する排他権を有するものとする。
 特許の権利範囲は、その発明の明細書に記載されているクレームに基づいて定めなければならない。クレームを解釈するとき、明細書及び図面を参考することができる。

Q5:特許権の行使に制限はあるか?

A:特許権の行使に関する法的制限は、特許法第57条の規定により、次に掲げる場合においては、その効力が及ばないものとする(実用新案第108条準用、意匠第125条にも類似の規定がある):
1発明が、研究、教育又は実験のみの目的で、非営利的行為として実施されるとき;
2発明が、特許出願前に、台湾において実施されていたか又はそのために必要なすべての準備が完了していたとき。ただし、製造方法の知識が、特許出願前6月以内に特許出願人から取得されており、更に特許出願人がそれに係る出願人の特許権を留保する旨を表明していたときは、本規定は適用しないものとする;
3物品が特許出願前に、既に台湾に存在していたとき;
4物品が、単に台湾を通過する輸送手段又はその装置であるとき;
5特許権を取得する権利を有していない者が取得した特許権が、特許権者が提起した無効審判請求の結果取り消された場合において、それに係る実施権者が特許の取消の前に台湾において、善意でその特許を実施していたか又はそのために必要な全ての準備を完了していたとき;及び
6特許権者により又は特許権者の承諾を得て製造された特許物品が販売された後、当該物品が使用又は転売されたとき。前記の製造及び販売は、台湾で行われたものに限定しない。
また、特許法第58条の規定により、2種類以上の医薬品を調合して製造された医薬品及び調合方法自体の特許権は、その効力は、医師による処方又は当該処方に従って調合された医薬品には及ばないものとする。
 具体的個別案件の特許権効力が及ぶか否かは裁判所が認定するものである。

Q6:特許権侵害の主張には期限が設けられているか?

A:特許権が侵害されたことにより生じる請求権は、請求権者が当該侵害行為及び賠償義務人を察知時より2年以内に行使しなかった場合は、消滅するものとする。また、当該侵害行為が行われてより10年を超えるものも同様に消滅する。

 

その他Q&A

Q1.外国語明細書での出願日取得に必要な書類および資料は何ですか?

A:
出願日を取得するために、必要な書類および資料は、以下の通りです。
  (1)外国語明細書2通
  (2)出願者の氏名(又は名称)、国籍、住所
  (3)発明者の氏名、国籍
  (4)優先権を主張する場合、優先権主張の基礎となる出願の出願国、出願日
  (5)生物材料に関する発明の場合、
    ①台湾国内寄託機関への寄託日、寄託番号、又は
    ②台湾知的財産局が認可した外国寄託機関の機関名、寄託日、寄託番号
     (ただし、台湾出願後3ヶ月以内に台湾国内寄託機関へ寄託手続きを行う必要がある)

Q2.出願後に補充提出が可能な書類及び資料は何ですか?

A:
下記の書類及び資料は、出願日から4ヶ月以内に(さらに2ヶ月間の延長が可能)、補充提出することができます。
 (1)発明者による署名捺印済みの譲渡証書
 (2)委任状(包括委任状可)
 (3)台湾中国語明細書(クレーム、図面含む)
 (4)優先権証明書
 (5)優先権主張の有無にかかわらず、台湾出願日前に出願した対応外国出願がある場合、その出願番号、出願日、当該出願を受理した国又は組織
 しかし、下記の書類及び資料は、出願日から3ヶ月以内に提出しなければなりません。延長は認められません。
 (1)台湾国内寄託証明書(台湾出願時にすでに台湾国内で生物材料を寄託している場合。)
 (2)台湾国内寄託証明書並びに外国寄託証明書(外国での寄託情報を以って台湾出願した後に台湾国内寄託機関への寄託手続きを行う場合)

Q3:新規出願を外国語書面で提出し、中国語明細書を補完した際、すでに優先権日より15ヶ月期限を超えた場合、中国語明細書の内容に合わせて外国語明細書の補正書を同時に提出することは可能でしょうか?

A:
出願後15ヶ月以内に補足、補正できるのは中国語明細書に限定されます。外国語明細書の補正については、中国語明細書の補完と同時に提出することができます。

Q4:もし同一人物が同日に同一発明や考案を同時に特許と実用新案に出願した場合台湾知的財産局はどう対応しますか?

A:
(1)実体審査時に同一発明や考案を同時に出願していることが発覚した場合、特許法第31条第4項準用第2項の規定により、出願人に片方のみ選択するよう通知します。出願人が発明を選択すると共に実用新案を撤回した場合、当該発明に対する実体審査は継続して行われます;実用新案を選択すると共に発明を撤回した場合、実用新案の形式審査が行われます;どちらも選択しない場合、発明は特許法第31条第4項準用第2項の規定に違反し、実用新案は第102条準用第31条第4項、第2項の規定に違反するため、両方とも特許されません。

(2)もし実用新案が形式審査により登録された場合、発明の実体審査時に両方出願していることが発覚した場合でも、特許法第31条第4項準用第2項の規定により、出願人にどちらを選択するよう通知します。出願人が発明を選択した場合、発明の実体審査は引き続き行われます。すでに登録された実用新案は、特許法第108条準用第31条第4項再準用第2項の規定により、取り消されます。その実用新案権については最初から存在しないものとなりますので、実用新案権者が取消前に実用新案権を行使したことによって他人が被った損害に対する責任を負わなければならないこと(特許法第105条)を注意すべきです。なお、出願人が実用新案を選択し、同時に発明を取り消した場合、発明の実体審査は中断します。

Q5:台湾出願を行う際、PCT出願を基礎としての優先権主張が認められますか?

A:
 台湾特許法第27条には、『出願人が、同一の発明について、世界貿易機関(WTO)の加盟国、又は、中華民国と相互に優先権を承認する外国において最初に法律に則って特許出願し、且つ最初の特許出願の日の翌日から12ヶ月以内に、中華民国に特許出願をする場合は、優先権を主張することができる。』及び『外国の出願人は、所属する国がWTOに加盟していない、又は、中華民国と相互に優先権を承認していない場合にも、WTO加盟国又は互恵関係にある国の領域内に住所又は営業所を有していれば、優先権を主張することができる。』と規定されています。
 したがって、日本の出願人が、台湾出願を行う際、PCT出願を基礎として優先権主張を行うことは、問題ありません。


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