目次
特許調査
権利化前の調査・分析
先行技術文献調査
特許、実用新案は各法律で定められた要件を満たし、特許庁による行政処分により権利が認められます。そのため、特許要件等を具備するよう出願前に先行技術文献の調査を行うことが有用です。
また、特許については、出願後・審査請求期限まで期間がありますので、時の経過により権利化を望まなくなった出願を見直すことや、出願時には公開されていなかった先行技術文献を発見する観点から、審査請求時に改めて先行技術文献の調査を行うことも有用です。
内容
出願に先行する同内容の技術又は先願が存在するかどうかについて特許文献・非特許文献を精査し特許性の調査を行います。
調査メリット
スムーズな権利取得を実現します。
迅速な出願も重要ですが、一定の調査をせずに出願すると、先行する出願や発明・考案等の存在により当該出願が法定要件を満たさないため権利化を断念せざるを得ないという事態も生じ得ます。先行技術文献調査は、的確かつ効率的な権利取得のために重要な役割を果たします。
費用の無駄を防止します。
出願後に特許性のないことが判明するなど、事前調査を行っていれば避けられたであろう費用の無駄を防ぐことができます。
出願明細書作成の基礎資料となります。
当該出願に先行する文献を調査し、当該出願に係る発明・考案と文献に記載されている発明・考案を対比しますので、明細書作成のための基礎資料となります。調査から出願までの一連の作業により、効率的な出願準備となります。
法令遵守、審理の迅速化につながります。
特許法は出願時に知っている先行技術文献の開示を求めていますので、出願前の調査結果を開示することでこの要請に応えることができ、ひいては特許庁の文献調査労力を緩和して審理の迅速化に寄与することができます。
調査概要
他社の出願動向調査
他社の出願動向や保有する特許・実用新案を調査します。
活用例
・他社がどのような分野に力点を置き、どの国・地域へ出願を行っているか等、他社の出願動向を知りたい場合に活用できます。
・重複する研究開発を防止し、今後の研究開発の方向性を探りたい場合に活用できます。
・技術統計図や特許マップを作成したい場合に活用できます。
情報源
例えば、国内外特許公報等の特許文献、技報や特許庁による特許出願調査技術動向調査等の非特許文献等が挙げられます。
情報提供用資料収集
他人の出願が拒絶理由に該当することを特許庁へ知らせる情報提供制度の利用にあたり、拒絶理由に該当する事実を証明するために必要となる資料を調査・収集し、情報提供の準備を行います。
登録前の利用
情報提供は競合他社の権利取得を防止するための戦略的方法です。
競合他社が権利を取得すると、当該権利が有効に存続する限り、自社が正当権原を有することなしにその技術的範囲に属する発明を実施することは困難となります。そこで、情報提供制度を利用することにより他社の権利取得を防止できます。
権利化後の調査・分析
権利の有効性調査
新規参入や製品化にあたり、自社特許権・実用新案権の有効性について確認します。
調査の必要性
・他社に対して特許権侵害を主張するには、当該特許権が有効に存続していることが必要です。そこで、事前に特許権の有効性について調査します。
・実用新案権の場合、実体審査を経ていないため、権利行使には相当の注意義務が課されます。そのため、特許庁の判定に加え、特許事務所による権利の有効性調査を行うことが有効です。
無効資料・公知資料調査
製品化の障害となる他人の特許権・実用新案権を無効にするための資料を調査します。
利用・用途
・自社製品の発売に先立ち、障害となる特許権等を無効にするための資料(特許文献・非特許文献)を入手したい場合。
・他社から警告状を受領した、又は侵害訴訟を提起された場合の対抗手段として無効資料・公知資料を収集したい場合。
自由実施確保のための調査(FTO調査)
市場に投入する商品が他社の特許権・実用新案権を侵害しないかどうかについて調査します。
このような時にご利用いただけます
市場に商品を投入する際の知財リスクを検討し、事業遂行の自由を確認したい場合。
他社特許権等の存続期間が満了もしくは消滅している可能性がある発明について自由実施をできるかどうかを調査する場合。
調査概要
侵害鑑定
特許権・実用新案権侵害の成否について、直接侵害・間接侵害、均等論の適用等を検討し、鑑定書を作成します。
利用・用途
自社が非侵害である旨を主張する場合。
自社が特許権・実用新案権侵害に関する警告状を受領した場合、非侵害であることを主張するために鑑定を利用できます。
鑑定書を相手方へ提示することで紛争解決を試みることができます。
証拠として鑑定書を裁判所へ提出することができます。
自社特許権・実用新案権を侵害している旨を主張する場合。
自社特許権等を侵害している旨を主張するために他社へ警告状を送る前に鑑定を行うことが有用です。
証拠として鑑定書を裁判所へ提出することができます。
実体審査を経ない実用新案権の場合、鑑定書は権利行使にあたって十分な注意を払ったことを証明するための証拠方法のひとつとして利用できます。
情報提供用資料収集
他人の出願が無効理由に該当することを特許庁へ知らせる情報提供制度の利用にあたり、無効理由に該当する事実を証明するために必要となる資料を調査・収集し、情報提供の準備を行います。
登録後の利用
特許権者の権利行使を心理的に抑制します。
特許後においては、情報提供をすることで特許が無効になるかもしれないという心理的不安を特許権者に与え、権利行使を躊躇させます。
特許マップ
研究開発の方向性の検討
技術開発競争に勝つための戦略として、例えば、他社に先駆けて技術開発に着手する戦略、他社が気付いていないニーズを把握し独自に開発する戦略、他社が興味を示していない分野に積極的に展開する戦略、他社が既に着手している分野のなかで手薄なところに参入する戦略等がありますが、いずれの戦略を採用し、研究開発の方向性を決定するために、特許マップは非常に有効です。
競合他社の開発動向の把握・予測
競合他社がどの分野の研究開発を活発に行っているか、競合他社が今後どのような分野に進出するのか、競合他社の技術の広がりがどの程度か、競合他社と比べて技術的に自社はどのレベルにあるか、自社が新規参入できる余地があるか、等について把握・将来予測するために、特許マップは非常に有効です。
自社の特許網の確認
自社のビジネス・製品について他社の参入・模倣を防ぐために十分な特許網を構築できているか、技術分野的に弱い箇所はないか、自社の強みはどこか、研究開発の軌道修正を検討する、等のために、特許マップは非常に有効です。
特定分野における技術動向の分析
特定の技術おける研究開発状況はどうか、節目となった重要特許はどれか、実施の際の要注意特許はあるか、共同開発パートナーとして適切な相手はいるか、技術について体系的に知りたい、等のためにも特許マップは非常に有効です。
特許出願
国内出願
出願から登録までの流れ
特許を取得するためには、特許庁へ特許出願をする必要があります。
出願から登録までの流れは以下のようになっています。
(1)特許出願
法令で規定された様式に従い願書、特許請求の範囲、明細書、要約書、必要な場合は図面を特許庁に提出します。
英語による出願も可能です。この場合、出願日から1年2ヶ月以内に日本語翻訳文を提出しなければいけません。
(2)方式審査
形式上の要件を備えているかどうかについて審査されます。
(3)出願公開
出願日から1年6ヶ月後に発明の内容が公開されます。
(4)審査請求
出願日から3年以内に、当該出願について実体審査を行う旨の請求をすることにより、審査が開始されます。
(5)実体審査
新規性・進歩性等の特許要件を満たしているか等、拒絶理由に該当しないか否かについて審査官が審査します。
(6)拒絶理由通知
審査官が拒絶理由を発見した場合に、それを出願人に知らせるために拒絶理由通知を送付します。
(7)意見書・補正書提出
拒絶理由通知に対して反論する機会が出願人に与えられます。審査官の判断が妥当と判断した場合には、拒絶理由を解消するために補正書を提出することができます。
(8)特許査定
審査官が拒絶理由を発見しない場合又は拒絶理由が解消した場合に特許査定という行政処分がなされます。
(9)拒絶査定
審査官が意見書や補正書を検討してもなお拒絶理由が解消されない場合は拒絶査定という行政処分をします。
(10)拒絶査定不服審判請求
拒絶査定に対して不服がある場合には、拒絶査定不服審判を請求できます。審判官の合議体が当該出願を特許すべきか否かについて審理します。
(11)前置審査
審判請求と同時に明細書等の補正をした場合、審判に先立ち、審査官が再び審査を行います。拒絶理由が解消しない場合、審判官の合議体による審理が行われます。
(12)特許審決
審判官の合議体による審理の結果、拒絶理由が発見されない場合には、特許すべき旨の審決がなされます。
(13)拒絶審決
審判官の合議体による審理の結果、請求に理由がないと判断した場合は、請求を棄却し、原査定(拒絶査定)を維持する旨の審決がなされます。
(14)審決取消訴訟
拒絶審決に不服がある場合は知的財産高等裁判所へ訴えを提起できます。同裁判所が請求の理由があると判断した場合、拒絶審決を取り消す旨の判決をし、特許庁の審判の審理が開始されます。請求の理由がないと判断した場合、請求を棄却し、拒絶審決が維持されます。
(15)特許料納付
特許査定後又は特許審決後に第1年から第3年分の特許料を納付します。
(16)設定登録及び特許証発行
特許料納付後、特許番号が付与され、特許登録原簿に設定登録により特許権が発生します。権利の存続期間は出願日から原則として20年です。 また、特許証が発行されます。
(17)特許公報
権利内容を記載した特許公報が発行されます。
なお、何人も特許公報発行の日から6か月以内に異議を申し立てることができます(2015年4月1日施行)。
早期審査・審理
審査請求をしても実体審査が開始されるまでには時間がかかります。また、拒絶査定不服審判請求後、審理の開始までに時間がかかります。
特許の審査・審理期間(平均)
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
審査 | 14.1ヶ月 | 9.6ヶ月 | 9.5ヶ月 | 9.5ヶ月 | 9.3ヶ月 | 9.3ヶ月 |
拒絶査定 不服審判 |
12.6ヶ月 | 12.4ヶ月 | 12.5ヶ月 | 13.1ヶ月 | 12.6ヶ月 | 12.4ヶ月 |
審査請求(審判においては審判請求)から、審査官(審判官)による最初の審査結果が発送されるまでの期間。(特許庁年次報告書より)
早期審査・審理制度
下記表のように早期審査・審理制度を利用した場合は審査・審理期間が短縮されます。
早期審査・審理を利用した場合の審査・審理期間(平均)
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
審査 | 1.9ヶ月 | 2.1ヶ月 | 2.3ヶ月 | 2.5ヶ月 | 2.3ヶ月 | 2.3ヶ月 |
拒絶査定 不服審判 |
3.3ヶ月 | 3.1ヶ月 | 3.6ヶ月 | 4.3ヶ月 | 3.7ヶ月 | 3.8ヶ月 |
申出から審査官による最初の審査結果が発送されるまでの期間。審判の場合、申出がなされ審理可能となってから審決が発送されるまでの期間。(特許庁年次報告書より)
スーパー早期審査制度
2008年度10月から試行が開始されました。
平均審査期間は、スーパー早期審査の請求から約20日です。
2009年10月からPCTに基づく国際出願であって、日本へ国内移行した案件に対してもスーパー早期審査の対象となります(この場合、特許庁内の処理上、第一次審査までの平均審査期間は約2ヶ月となります)。
面接審査
出願人(代理人)が審査官に対し技術内容等の説明を行うことで的確な審査がなされるので審査の効率化に期待でき、また、拒絶理由通知をした審査官の見解を直接確認できるため、適切な応答ができます。
外国出願
特許権の効力は特許を取得した国の領域にのみ及び、海外まで効力が及ぶものではありません。そこで、海外でも特許権を取得したい場合には、各国特許庁に出願する必要があります。
外国への出願方法は主として次の3つがあります。
直接出願
権利を取得したい国の特許庁へ直接出願する方法です。例えば、日本で発明をしたが、アメリカでのみ特許権を取得したいため、アメリカへ直接出願を行う場合です。
しかし、各国で定められた言語を使用し、各国ごとの手続きに従う必要があるため、書面の準備や翻訳コスト等の負担が大きいのが問題です。
パリ条約上の優先権に基づく出願
第一国の出願日から12ヶ月以内に第一国出願を基礎としてパリ条約に基づく優先権を主張して海外へ出願をすることができます。
パリ条約上の優先権を主張すると、第一国の出願日を基準に新規性や進歩性等の判断がされ、第一国出願後第二国出願までに発明を公表しても不利益を受けません。
PCT出願
国際出願を行った後、必要な国へ移行して各国の審査手続きを受ける方法です。
一の出願で複数国に出願した効果を受けることができますので特許を取得したい国が多い場合に有効です。パリ条約上の優先権を主張することも可能です。
特許審査ハイウェイ
特許審査ハイウェイは、出願人の海外での早期権利化を容易にするとともに、第1庁の先行技術調査と審査結果を利用し、各国特許庁における審査負担を軽減し質の向上を図ることを目的としています。
第1庁の審査結果を利用するため、第2庁において早期に権利化を図ることができます。また、審査官と出願人とのやりとりが減る結果、コスト削減につながります。
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