目次
基本情報
国名:フィリピン共和国(Republic of the Philippines)
首都:マニラ
面積:298,170平方キロメートル(日本の約8割)。7,641の島がある。
人口:約1億903万5,343人(2020年フィリピン国勢調査)
加盟条約:パリ条約、特許協力条約(PCT)、WTO
特許庁HP:http://www.ipophil.gov.ph/
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特許法
基本情報
言語 : 英語又はフィリピン語
保護対象から除外されるもの(IP法22条) :
- ● 発見、科学の理論及び数学的方法並びに所定の薬剤製品※
- ● 精神的な行為の遂行
- ● 遊戯又は事業活動に関する計画、規則及び方法
- ● コンピュータプログラム
- ● 手術又は治療による人体又は動物の体の処置方法及び人体又は動物の体の診断方法
- ● 植物の品種,動物の品種並びに植物及び動物の生産の本質的に生物学的な方法。
- ● 美的創作物
- ● 公序良俗に反するもの
※所定の薬剤製品
…既知物質の新たな形式若しくは性質であって,当該物質の既知の効力の向上をもたらさないものの発見にすぎないもの,既知物質の何らかの新たな性質若しくは新たな用途の発見にすぎないもの,又は既知方法の使用にすぎないもの。ただし,当該既知方法が少なくとも一種の新たな反応物を含む新たな製品を製造できる場合はこの限りではない。
存続期間(IP法54条):20年(存続期間の延長制度無し)
優先審査・早期審査制度無し
出願から登録までの経緯
不利にならない開示(IP法25条)
下記1.および2.を満たす場合、下記情報の開示は、新規性欠如の理由とはならない。
- 1.出願日又は優先日の前12月の間における出願に含まれている情報の開示。
- 2.前記出願が次の場合に該当。
(a)その開示が発明者によってなされた場合。
(b)その開示が知的財産庁によってなされた場合であって、
aその発明者がした別の出願に記載され、かつ、知的財産庁によって開示されるべきでなかったか、又は、
bその発明者から直接又は間接にその情報を得た第三者によりその発明者の認識若しくは同意なしになされた出願に記載されている場合。
(c)その開示が前記第三者によってなされた場合。
公開(IP法44条)
出願日又は優先日から18月経過後公開。
先行技術を記載した文献を引用する調査書とともに公開。
実体審査の請求(IP法48条)
公開の日から6月以内。
補正
※新興国等知財情報データバンクHP参照
新規事項を含まないものであれば、審査の段階において特許出願を補正することができる(IP法49条)。
応答期間は、通常2か月。
最大2回まで延長可能。但し、当初の応答期間と延長期間の合計が6か月を超えてはならない(規則929)。延長の費用は必要。
分割出願
※新興国等知財情報データバンクHP参照
- 親出願が取り下げられ、放棄され又は特許を付与される前に係属出願について分割出願をすることができる。ただし、その内容が親出願の内容を超えないことを条件とする。(規則611)
- 単一性違反の指令後の非選択発明についての分割は、その指令書発行から4ヶ月以内または4ヶ月を超えない範囲で認められる追加の期間内(IP法38条)
実施義務(IP法94条)
登録日から3年、または出願日から4年の何れか遅い方。この遅い方の期日まで不実施の場合は、不使用取消の対象。
変更出願(IP法110条)
特許の付与又は拒絶の前のいつでも、特許出願を実用新案登録出願に変更可能(実用新案登録出願も特許出願に変更可能)。
1回限り変更可能。
並行出願の禁止(IP法111条)
同一の対象について実用新案登録出願と特許出願の2 個の出願をすることはできない。
PPH
JPO(日本)、USPTO(米国)、EPO(欧州)、KIPO(韓国)との間でPPH可能。
※JPOとは2021年3月12日から本格実施。
※EPOとは2020年7月1日から本格実施。
JPO-PPHの申請要領については、日本国特許庁HPをご参照。
「フィリピン知的財産庁(IPOPHIL)と日本国特許庁(JPO)との間の特許審査ハイウェイ試行プログラムに関するフィリピン知的財産庁への申請手続(仮訳)」
URL:https://www.jpo.go.jp/e/system/patent/shinsa/soki/pph/document/guideline/philippine_ipophl_ja.pdf
統計情報
<出願件数および登録件数の推移>
※フィリピン特許庁HP参照
出願件数 | ||||
年 | PCT 出願 | 内国民出願 (Resident) |
外国人第一国出願 (Non-Redident Direct) |
合計 |
2015 | 2856 | 293 | 190 | 3339 |
2016 | 2609 | 248 | 243 | 3100 |
2017 | 2559 | 284 | 243 | 3086 |
2018 | 2943 | 469 | 550 | 3962 |
2019 | 3223 | 434 | 367 | 4024 |
※2020年第三四半期(7~9月)の出願件数:前年同期比で9.7%減。
登録件数 | ||||
PCT 出願 | 内国民出願(Resident) | 外国人第一国出願(Non-Redident Direct) | 合計 | |
2015 | 1875 | 24 | 130 | 2029 |
2016 | 1837 | 31 | 123 | 1991 |
2017 | 1420 | 18 | 99 | 1537 |
2018 | 2085 | 29 | 565 | 2679 |
2019 | 1191 | 35 | 101 | 1327 |
<出願日から登録日までの平均期間>
※「ASEAN産業財産権データベースから得られる特許および実用新案の統計情報」(2023年3月 日本貿易振興機構(JETRO) バンコク事務所 知的財産部)
URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ip/pdf/report_202303_asean.pdf
※2022年に登録された特許が対象。
※LocalはPCTルート・パリルートに分類されない出願。
全案件 | 6.0年(件数1862件) | |
出願人国籍 | フィリピン | 5.0年(件数65件) |
フィリピン以外 | 6.0年(件数1797件) | |
出願ルート | PCTルート | 6.2年(件数1626件) |
パリルート | 3.8年(件数156件) | |
Local | 5.1年(件数80件) |
<出願件数上位リスト>
※2019-2021年。上記JETROの資料122-126頁参照。
特許関連手数料
URL : https://www.ipophil.gov.ph/services/schedule-of-fees/patent-related-fees/
施行規則の改正
施行日:2022年9月20日。
目的 :事務手続きの合理化
URL:
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2022/ph/20220915.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/ph/ip/pdf/philippines-tizai_kisoku_en.pdf
実用新案法
基本情報
言語 : 英語又はフィリピン語
保護対象から除外されるもの :
⇒ 特許と同じ
存続期間 : 7年
出願から登録までの経緯
実施義務(IP法108条で使用する同第94条)
登録日から3年、または出願日から4年の何れか遅い方。この遅い方の期日まで不実施の場合は、不使用取消の対象。
特別規定(IP法109条)
・新規性があり、かつ、産業上の利用可能性がある場合は、実用新案として登録を受けることができる(進歩性は実体的要件ではない)。
・実体審査無し(方式審査のみ)。
・出願公開制度無し(但し、登録後に公告)。
統計情報
<出願件数および登録件数の推移>
※フィリピン特許庁HP参照
出願件数 | ||||
年 | 内国民出願(Resident) | 外国人第一国出願(Non-Redident Direct) | 合計 | |
2015 | 767 | 46 | 813 | |
2016 | 1102 | 46 | 1148 | |
2017 | 1332 | 62 | 1394 | |
2018 | 2080 | 66 | 2146 | |
2019 | 2141 | 86 | 2227 |
※2020年第三四半期(7~9月)の出願件数:前年同期比で49.4%減。
登録件数 | ||||
内国民出願(Resident) | 外国人第一国出願(Non-Redident Direct) | 合計 | ||
2015 | 489 | 38 | 527 | |
2016 | 555 | 35 | 590 | |
2017 | 504 | 27 | 531 | |
2018 | 1052 | 61 | 1113 | |
2019 | 969 | 23 | 992 |
<出願日から登録日までの平均期間>
※「ASEAN産業財産権データベースから得られる特許および実用新案の統計情報」(2023年3月 日本貿易振興機構(JETRO) バンコク事務所 知的財産部)
URL:https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ip/pdf/report_202303_asean.pdf
※2022年に登録された実用新案が対象。
※LocalはPCTルート・パリルートに分類されない出願。
出願日から登録日までの平均期間
全案件 | 9.1年(件数1134件) | |
出願人国籍 | フィリピン | 8.6年(件数1057件) |
フィリピン以外 | 15.6年(件数77件) | |
出願ルート | PCTルート | 33.1年(件数18件) |
パリルート | 14.9年(件数31件) | |
Local | 8.5年(件数1085件) |
<出願件数上位リスト>
※2019-2021年。上記JETROの資料138-142頁参照。
実用新案関連手数料
URL : https://www.ipophil.gov.ph/services/schedule-of-fees/utility-model-industrial-design/
施行規則の改正
施行日:2022年9月20日。
目的 :事務手続きの合理化
URL:
https://drive.google.com/file/d/1SGU-OvSLEasCzKhC7tt0dkUkIARYquWd/view
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Ipnews/asia/2022/ph/20220915.pdf
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/ph/ip/pdf/philippines-tizai_kisoku_en.pdf
意匠法
出願件数および登録件数の推移(2015年~2019年) ※フィリピン特許庁HP参照
出願件数(件) | 登録件数(件) | |||||
年 | 在外者 | 内国民 | 合計 | 在外者 | 内国民 | 合計 |
2015 | 555 | 530 | 1,085 | 453 | 430 | 883 |
2016 | 516 | 972 | 1,488 | 483 | 532 | 1,015 |
2017 | 666 | 727 | 1,393 | 555 | 955 | 1,510 |
2018 | 645 | 877 | 1,522 | 896 | 804 | 1,700 |
2019 | 612 | 1,019 | 1,631 | 675 | 731 | 1,406 |
存続期間:
出願日から 5 年
(ただし、更新料を納付することにより、2回を超えない各5 年の引き続く期間について更新することができる。)
出願から登録までの経緯:
商標法
2017年から2021年までの出願件数の推移
出典:特許庁委託事業 フィリピンにおける商標制度・運用に係る実態調査
(2022年3月独立行政法人 日本貿易振興機構バンコク事務所)
審査期間の平均(2021年10月末時点)
直接出願:4.95ケ月
マドプロ出願:3.02ケ月
特徴的な制度
1.使用宣誓書の提出
- 出願のための要件として、商標の使用は要求されていない(登録主義の採用)
- 以下の期限内に、商標を使用していることを宣言する書面(“Declaration of Actual Use”)と使用を証明する証拠をIPOPHLに提出しなければならない
①出願日から3 年以内
②登録日から5年を経過した日から1年以内
③更新日から1 年以内
④更新日から5年を経過した日から1年以内
→提出しない場合、登録が取り消される
2.ディスクレーム制度
商標の一部に識別力を欠く語が含まれていたり、公序良俗に反する語が含まれている場合で、当該要素がなければ登録が認められる場合、出願人は当該要素について独占権を放棄することを宣明することで登録を受けることができる。
このディスクレームは出願時に自発的に行うこともできるし、OAで審査官の要請に応じて行うこともできる。
3.コンセント制度
類似する先行商標がある場合でも、当該先行商標の権利者から登録を受けることについて同意を得た書面(コンセントレター)を提出することで、先行類似商標の存在という拒絶理由を解消することができる。
コンセントレターの運用について、これを認めるかどうかは審査官の裁量に委ねられているが、先行商標の権利者の同意を尊重する方向で進められているとのことである。
4.優先審査制度
通常、出願の実体審査は方式審査が完了し、出願日及び出願番号が設定されたものから順になされる。
一定の要件を満たす出願については、審査官の同意があることを条件に、出願日及び出願番号にかかわらず、優先的に審査を受けることができる
→「一定の要件を満たす出願」の例
①更新手続の未履行によって取り消された商標の再出願
②使用宣言書の未提出によって取り消された商標の再出願
5.冒認出願について
・フィリピンの法制度上、冒認出願についての規定はない。このため、審査で冒認出願であることを理由に拒絶されることは通常ない。
・冒認出願であるかどうかについては、ASEAN 共通ガイドライン(ASEAN Common Guidelines for the Substantive Examination of the Trademarks)に基づき判断される。当ガイドラインでは冒認について「出願人がその商標の存在を知っており、その商標が誠実な先使用である他人のものであって登録について許可を得ていないもの」と定めている。
・冒認出願であることを理由に取消審判・異議申立を請求することは可能。法制度上、何が「冒認」に該当するか定めはないが、概ね以下のような理由が存在するかどうかが考慮されている。
① 事前に出願人を知っていたこと
② 当該商標が国際的・フィリピン国内で周知な商標と同一又は混同が生じるおそれがあるほど類似すること
③ 商標の由来について道理のある説明ができないこと
④ 出願人と商標の所有者の間に取引上の関係または実際の取引があること
出願から登録までの経緯: