国際調査・国際予備審査

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国際調査制度の概要

国際出願日が認定された全ての国際出願は、国際調査機関によって国際調査が行われ、国際調査報告及び国際調査機関の見解書が作成されます(条約第15条~第18条等)。

国際調査は、国際出願の請求の範囲に記載されている発明が新規性、進歩性を有するかどうかを判定するにあたり、関連のある先行技術を発見することを目的として行われます。

関連のある先行技術とは、世界のいずれかの場所において書面による開示(図面その他の図解を含む。)によって公衆が利用することができるようにされており、かつ、請求の範囲に記載されている発明が新規性を有するもの及び進歩性を有するもの(自明のものではないもの)と認められるかどうかを決定するにあたって役立ち得る全てのものをいいます(規則33.1(a))。

また、国際調査機関の見解書により、請求の範囲に記載されている発明が、新規性を有するものと認められるかどうか、進歩性を有するもの(自明のものではないもの)と認められるかどうか、産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうか、等についての見解が示されます。

国際調査機関は、受理官庁によって特定され、日本国特許庁が受理した国際出願の国際調査機関は、日本語出願については日本国特許庁、英語出願については日本国特許庁又は欧州特許庁(出願人が選択)となります。

国際調査の対象は、以下の〔国際調査機関が調査をすることを要しない対象〕と、〔国際出願が発明の単一性を満たしていない場合〕の例外を除き、原則として、全ての国際出願です。

〔国際調査機関が調査をすることを要しない対象〕(規則39.1)

(ⅰ)科学及び数学の理論
(ⅱ)植物及び動物の品種又は植物及び動物の生産の本質的に生物学的な方法。ただし、微生物学的方法及び微生物学的方法による生産物については、この限りでない。
(ⅲ)事業活動、純粋に精神的な行為の遂行又は遊戯に関する計画、法則又は方法
(ⅳ)手術又は治療による人体又は動物の体の処置方法及び人体又は動物の体の診断方法
(ⅴ)情報の単なる提示
(ⅵ)コンピューター・プログラムのうち国際調査機関が当該プログラムについて先行技術を調査する態勢にある範囲外のもの

〔国際出願が発明の単一性を満たしていない場合〕

・国際出願が発明の単一性を満たしていない場合、国際調査機関から追加手数料の支払いを求められます。この求めに対し、追加手数料を支払わなかった場合、請求の範囲に最初に記載されている発明(「主発明」)に係る部分のみについて国際調査報告が作成されます。なお、国際調査機関からの追加手数料支払いの求めに対し、追加手数料を支払った場合、追加手数料が支払われた発明に係る部分についても、国際調査報告は作成されます(条約第17条(3)(a))。

・単一性の判断基準は、PCT規則により規定されています。国際出願が発明の単一性を満たしているか否かの判断基準は、日本国特許庁の特許審査基準の判断基準とほぼ同じものと考えることができます。

<単一性の判断基準>

・国際出願は、一の発明又は単一の一般的発明概念を形成するように連関している一群の発明についてのみ行う(規則13.1)。

・一群の発明が同一の国際出願の請求の範囲に記載されている場合には、これらの発明の間に一又は二以上の同一の又は対応する特別な技術的特徴を含む技術的な関係があるときに限り、規則13.1に規定する発明の単一性の要件は満たされる。「特別な技術的特徴」とは、請求の範囲に記載された各発明が全体として先行技術に対して行う貢献を明示する技術的特徴をいう(規則13.2)。

・一群の発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関しているかの判断は、これらの発明が別個の請求の範囲に記載されているか単一の請求の範囲に択一的な形式によって記載されているかを考慮することなく行う(規則13.3)。

 

 

国際調査機関の見解書(ISA見解書、ISO)

国際調査機関の見解書は、国際調査機関によって作成され、請求の範囲に記載されている発明が、新規性を有するものと認められるかどうか、進歩性を有するもの(自明のものではないもの)と認められるかどうか、産業上の利用可能性を有するものと認められるかどうか、等についての見解書です。

また、国際調査機関の見解書には、請求の範囲、明細書及び図面の明りょう性、又は請求の範囲が明細書によって十分に裏付けられているか否かの問題に関する所見が記載される場合があります。

国際出願の出願人は、各国の国内段階に移行する前に、国際調査機関の見解書により、請求の範囲に記載されている発明の新規性、進歩性、産業上の利用可能性についての国際調査機関の見解を得ることができます。

 

(2-1)新規性の判断基準

PCT条約及び規則には、請求の範囲に記載されている発明は、先行技術のうちに該当するものがない場合には、新規性を有するものとする、と規定されています(条約第33条(2)、規則43の2.1(b))。

ここでいう「先行技術」とは、基準日前に世界のいずれかの場所において書面による開示によって公衆が利用することができるようにされているすべてのものをいい(規則64.1(a))、「基準日」とは、国際出願日、又は国際出願が先の出願に基づく優先権の有効な主張を伴う場合には先の出願の日です(規則64.1(b))。

 

(2-2)進歩性の判断基準

PCT条約及び規則には、請求の範囲に記載されている発明は、所定の基準日に当該技術分野の専門家にとって規則に定義する先行技術からみて自明のものではない場合には、進歩性を有するものとする、と規定されています(条約第33条(3)、規則43の2.1(b))。

ここでいう「自明」とは、技術の通常の進歩の範囲を超えず、先行技術から明らかに、かつ、論理的に得られることを意味します。

また、進歩性の判断にあたって適用される基本的考察事項は以下のとおりです。

(ⅰ)クレームに関わる発明は、全体として考察されなければならない。
(ⅱ)引例は全体として考察されなければならず、かつ、当業者がクレームされた事項に到達できるように、当該文献の教示を組み合わせることを動機づけられ又は促されなければならない。
(ⅲ)引例は、クレームされた発明によりもたらされる、許されざる後知恵の恩恵を用いずに検討されなければならない。

新規性および進歩性に関するより具体的な判断基準は、「PCT 国際調査及び予備審査ガイドライン(日本語仮訳)第Ⅲ部 国際調査機関及び国際予備審査機関に共通する審査官の考慮事項」(特許庁)に記載されています。

 

国際調査報告を受けた後の対応

(3-1)条約第19条の規定に基づく補正

出願人は、国際調査報告の送付の日から2か月の期間または優先日から16か月の期間のいずれか遅く満了する期間内に請求の範囲について1回に限り補正(19条補正)をすることができます(条約第19条、規則46.1)。

条約第19条の規定に基づく補正は、出願時における国際出願の開示の範囲を超えてすることはできません(条約第19条(2))

条約第19条の規定に基づく補正がされた場合は、補正後の請求の範囲は国際公開されます(規則48.2(f))。また、補正後の請求の範囲は国際事務局から指定官庁へ送達されます(条約第20条(2))。

条約第19条の規定に基づいて国際段階で請求の範囲を補正することで、国内段階移行後の補正手続きを事前に行うことができ、補正後の状態で国内段階に移行することができます。そのため、明らかな不備などについては、国際段階で補正をするメリットがあるといえます。

 

(3-2)非公式コメントの提出

出願人は、国際調査機関の見解書に対しては正式な反論はできませんが、国際調査機関の見解書に対する非公式コメントを国際事務局に提出することができます。

非公式コメントは、国際事務局が指定官庁に転送されますが、これを参酌するかどうかは各国特許庁審査官の裁量に委ねられます。

 

(3-3)国際予備審査の請求

出願人は、国際予備審査の請求をすることで、国際出願について国際予備審査を受けることができます。国際予備審査の請求は、国際調査報告及び国際調査機関の見解書又は国際調査報告を行わない宣言の送付の日から3月、又は、優先日から22月のうちいずれか遅く満了する期限までにする必要があります(規則54の2.1(a))。

 

 

国際予備審査

国際予備審査制度の概要

出願人が所定の期間内に国際予備審査の請求を行うと、国際予備審査機関によって国際予備審査が行われ、国際予備審査機関の見解書及び国際予備審査報告が作成されます(条約第33条~第35条等)。なお、国際予備審査の請求は、国際調査報告及び国際調査機関の見解書又は国際調査報告を行わない宣言の送付の日から3月、又は、優先日から22月のうちいずれか遅く満了する期限までにしなければなりません(規則54の2.1(a))。

国際予備審査は、請求の範囲に記載されている発明の新規性・進歩性・産業上の利用可能性について、予備的なかつ拘束力のない見解を示すことを目的としています(条約第33条(1))。なお、条約第19条の規定に基づく補正がなされている場合には、当該補正は、国際予備審査において考慮されます(規則66.1(c))。

国際予備審査機関は、受理官庁によって特定され、受理官庁としての日本国特許庁が受理した国際出願の管轄国際予備審査機関は、日本語出願については日本国特許庁、英語出願については日本国特許庁又は欧州特許庁(出願人が選択)となります。

国際予備審査報告は、1又は2以上の見解書及び場合によっては国際予備審査機関とのその他の連絡の後、作成されます。

国際出願が発明の単一性の要件を満たしていない場合、国際予備審査機関から追加手数料の支払い又は請求の範囲を減縮することを求められます。出願人がこの求めに応じない場合、国際出願のうち主発明であると認められる発明に係る部分について国際予備審査報告が作成されます(条約第34条(3)(a))。

なお、国際予備審査における単一性、新規性、及び進歩性の判断基準は、国際調査における判断基準と同様です。

 

国際予備審査を受けるメリット

・新たな見解書
出願人は、国際予備審査報告により国際調査機関の見解書よりも一歩進んだ見解が得られるため、選択国の国内段階へ移行するか否かについての判断をより適切に行うことができます。

・補正
請求の範囲、明細書及び図面について補正(34条補正)をすることができます(条約第34条(2)(b))。さらに、国際調査機関の見解書に対して答弁書を提出する機会が与えられます(条約第34条(2)(d))。このとき、国際予備審査機関の審査官と面談などのやり取りをすることもできるため、審査官に対して出願人の意見を的確に主張することができます(規則66.6)。

・国際予備審査報告
出願人は、見解書に対して答弁書を提出し、または補正をすることで、特許性を肯定する旨の国際予備審査報告を入手することができます。

・その他
国際予備審査報告には拘束力はありませんが、特に新興国などは、国際調査や国際予備審査の結果を重要視する傾向があるため、特許性を肯定する旨の国際予備審査報告を入手することで、国内段階移行後の権利化の可能性が高まります。

 

 


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