商標登録異議申立、無効審判

商標の登録異議申立

登録異議申立制度とは

特許庁で審査官が審査をしているといえども、先に登録されている商標を見落として、後に出願された同一や類似する商標を登録してしまうケースが起こり得ます。
また、その他に登録できないと決められている規定にもグレーゾーンがあるため、完璧ではありません。

そのため、登録に相応しくない商標が登録されてしまった場合に備え、その登録の取消しを求める「異議申立」をする機会が与えられています。その申立ては、誰でも行うことができます。
その商標は登録すべきではないという理由を添えて、商標登録に異議を申し立てることにより、特許庁が登録の適否を審理し、認められればその登録は取り消されます。

 

異議申立の理由の例

異議申立ての理由として、以下のような例があります。

  • 需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
  • 公共の機関の標章と紛らわしい等、公益性に反する商標
  • 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
  • 他人の氏名等や著名な略称等を含む商標
  • 他人の周知商標等と同一又は類似する商標
  • 他人の商標登録と同一又は類似の商標であって、同一または類似の指定商品/役務に使用するもの
  • 種苗法で登録された品種の名称と同一又は類似の商標
  • 他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標
  • 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標
  • 他人の周知商標と同一または類似であって、不正の目的をもって使用するもの

 

異議申立ができる期間

上記であげた理由に該当すると考えられる場合、いつでも、その登録商標に異議を申立てをすることができるわけではありません。異議申立ては、「商標掲載公報の発行の日から二月以内にすることができる」と商標法で規定されているため、商標が登録されたことが公開された日から、2ケ月以内に書類を提出する必要があります。

登録異議申立の書類提出後は、特許庁において複数人の審判官により、書面での審理が行われ、登録を取消す理由があるかどうかが判断された後、その結果が通知されます。

期間内に異議申立をするには

商標の登録は公開されますが、影響がありそうな関係先に連絡されるわけではなく、その公開情報にアクセスしない限り知ることができません。

そのため、期間内に異議申立がされているケースでは、対象の商標が出願後審査中の段階から定期的に審査経過をウォッチングして、登録されたのを見計らって、期間内に異議申立されていることが多いです。

 

異議申立てをするときの費用

庁費用(特許印紙代)は11,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。

 

異議申立以外の対応策

異議申立以外にも、商標登録を無効にしたり、取消したり、登録前の審査段階で登録に不利な情報提供をしたりすることができます。その方法は以下の通りです。

無効審判

異議申立の期間(商標公報発行後、2ケ月)経過してしまった後の場合、商標登録の無効の審判を請求することができます。

  • 無効審判を請求できるのは利害関係人に限られます。例えば、商標権者から商標権侵害で訴えられていたり、同一または類似の商標を使って商売をしようとしている等の関係性が必要です。
  • 登録後5年を経過してしまうと、無効審判を請求する理由が限られてしまう点に注意が必要です。
  • 庁費用(特許印紙代)は55,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。

無効審判について、以下で詳細を解説していますので、ご参照ください。

 

取消審判

商標の登録を取消すための取消審判にはいくつかの種類はありますが、ここでは利用されるケースが最も多い不使用取消審判を紹介します。

不使用取消審判とは、商標登録から一定期間(直近の3年以上)継続して商標が使用されていない場合に、その登録の取消しを求めることができる制度です。取消の対象とする指定商品/役務の全部もしくは一部を審判請求書に記載します。選択した指定商品の全てについて不使用が確認された場合に、登録が取消されます。なお、使用しているかどうかは、商標権者が証明することになります。

  • 誰でも取消審判の請求をすることができます。審判請求書に請求人を記載する必要があるため、相手方(商標権者)には、誰が取消請求したかが分かります。
  • 庁費用(特許印紙代)は55,000円~で、区分数の増加により加算されます。弁理士に依頼する場合には別途手数料が発生します。

取消審判についてはこちらをご参照ください。

 

情報提供

出願中の商標について、この商標は登録すべきでないという情報を特許庁に提供して、その商標が登録されるのを阻止することを目的に利用されています。審査段階で登録するかどうかの判断をするための参考情報として「刊行物等提出書」という書類を特許庁に提出します(参考情報であるため、それを採用するかどうかは審査官に委ねられています)。

  • 誰でも情報提供することができます。なお、情報提供者として名前を出しだくない場合は、匿名での提出が可能です。
  • 庁費用(特許印紙代)は掛かりませんが、弁理士に依頼する場合には手数料が発生します。

 

 

 

 

無効審判

無効審判、無効理由とは

無効審判とは

商標登録の無効審判とは、以下の無効理由を有する商標登録を、無効化して消滅させる審判です。
無効審判を請求して無効にする旨の審決が確定すると、①登録されるべき商標ではなかったのに誤って登録された商標や、②登録後に不適切になった登録商標を無効にすることができます。

無効理由の例

1.商標登録要件違反の例(商標法第3条に規定の拒絶の理由と同じ)

  • その商品等について普通名称のみからなる商標(例えば「ワープロ」)
  • 商品の産地、品質、形状等を表す標章のみからなる商標(例えば「和歌山」)
  • ありふれた氏又は名称のみからなる商標(例えば「田中」)
  • 簡単でありふれた標章のみからなる商標

 

2.不登録事由違反の例(商標法第4条1項の拒絶の理由と同じ)

  • 国旗、菊花紋章、赤十字のマーク、国際機関のマーク、都道府県のマーク等と同一又は類似の商標
  • 公序良俗違反の商標
  • 他人の登録商標と同一又は類似の商標であって同一又は類似の商品について使用するもの
  • 商品の品質等の誤認を生じるおそれのある商標
  • 他人の業務に係る商品等と混同を生ずるおそれのある商標

など、以上の無効理由が挙げられます。

 

無効審判の請求人

無効審判は、だれでも請求できるわけではありません。利害関係人と認められる人だけが請求できます。利害関係人には、登録商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品・役務に使用する準備をしている人も含まれます。

利害関係人およびその要件

  • 登録商標と同一又は類似の商標を、同一又は類似の商品・役務に使用している者、又は使用していた者
  • 登録商標と同一又は類似の商標を、将来使用する可能性がある者 (登録商標と同一又は類似の商標の使用を準備している者)
  • 登録商標によって、商品の出所混同が生じて不利益を受ける可能性がある者
  • 商標権について訴訟関係にある者、またはあった者、商標権侵害の警告を受けた者

 

無効審判の請求期間

無効審判は、商標権が消滅した後でも請求できます。例えば、商標権侵害で損害賠償金を求める訴訟を提起されたとき、商標登録を取消すことができれば、始めから商標権は無かったとみなされるため、損害賠償金を支払う必要がなくなります。ただし、手続きには除斥期間が設定されているため、いつでも請求可能ではない点、ご留意ください。


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