イスラエル

イスラエルは人口約990万人(2024年5月)、四国と同程度の面積を持ち、GDP約5000億ドル(2023年)を数える国である。

主要産業は鉱工業(情報通信,ハイテク,医療・光学機器,ダイヤモンド加工,化学製品,繊維等),金融・サービス業であるが、近年ハイテク分野の伸長が著しく、光学機器、医療機器、通信機器、医薬品などが主要な輸出品となっている。また、サイバーセキュリティ、人工知能、モビリティ、オートテック、ヘルステック、防衛などに関する技術に強みを持っている。

そうしたハイテク分野の担い手として、IT関連、ライフサイエンス分野等で技術力の高いベンチャー企業が多数活躍しており、大手企業によるイスラエルへの拠点の創設、ベンチャー企業の買収、資本参加等の動きが活発化している。このような状況の下、近年においても経済は堅調に推移しており、日本企業にとってもビジネスチャンスを見出せる場として注目されている。日系企業の進出数は91(外務省「海外進出日系企業拠点数調査 2021年調査結果(令和3年10月1日現在)」)。

2022年の特許出願総件数は10073件、PCT出願件数は9011件であった。人口あたりの特許保有数が世界で最も多い国の一つであると言われている。出願総件数のうち、イスラエル以外の国からの出願が約85 %。日本からイスラエル特許庁への出願件数は294件(2022年)。

【表1】

特許出願件数等(2022年)

 EPOイスラエル日本中国USAその他の国を含めた合計
出願件数(括弧内はPCT出願)2262
(2161)
1527
(728)
294
(286)
251
(239)
4636
(4483)
10073
(9011)
登録件数(括弧内はPCT出願)1481
(1412)
1003
(480)
175
(173)
122
(120)
2255
(2166)
5358
(4655)

(データ参照):WIPO IP statistics updated: December 2023
https://www3.wipo.int/ipstats/key-search/indicator(2024.8.6 アクセス)
EPOは最新データが取得できないため、2020年の情報を掲載

 

イスラエルの知的財産制度の概要

 イスラエルの知的財産制度について、各法域に共通する事項を表1に示す。

【表2】

 特許意匠商標実用新案
現地代理人の必要性制度なし
出願言語英語、ヘブライ語、アラビア語
実体審査あり
審査請求なし
存続期間(出願日から)20年
(医薬:5年まで延長可)
25年10年
(10年毎に更新可)
異議申立あり(3月)なしあり(3月)
無効審判あり

 

3.特許制度

出願人適格

発明者およびその承継人。

出願書類

  • (i)願書
  • (ii)委任状(認証不要)
  • (iii)明細書、クレーム(多項-多項従属可)、要約。PCT出願の国内移行の場合、国際出願の写しの提出要。
  • (iv)必要な図面
  • (v)優先権証明書(出願日から12か月以内に提出)。英訳は登録官から要求があった場合に提出。
  • (vi)出願書類のページ数について
    配列表を除く出願書類が100頁を超えると、50頁ごとに250新シュケル(約11,000円。1新シュケル=約43円〔2025年1月〕)を出願時に支払い要。
    出願時に支払わなくても出願日は確保できるが、支払命令に応じない場合、出願は取り下げ擬制となる。
  • (vii)クレーム数について
    ・クレーム総数の制限はない。
    ・クレーム数が50を超えると、超過1クレームあたり527新シュケル(約23,000円(2025年1月の為替レート で換算))の支払要。
  • (viii)クレームの形式
    スイスタイプクレーム(Use of X in the preparation of a medicament for the treatment of Z)は、薬剤の調製方法自体が進歩性を有する場合を除き、認められない。
    EPC 2000スタイルの クレーム (X for use in/as Y) は許容される。

出願言語

英語、ヘブライ語、アラビア語を選択可能。

出願ルート

(i)パリルート

(ii)PCTルート(移行期間:優先日から30か月)

    • *優先権の回復請求(PCT規則49の3.2)は、国際出願日が優先期間満了の日から2か月の期間内であり、かつ、期間徒過が、「状況により必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず生じた」と認められた場合、所定の手続の下、認められる。

手数料

PCT出願の国内移行に際し、2031新シュケル(約88,000円(2025年1月の為替レート で換算))の出願手数料要。

出願から登録までの流れ

(i)方式審査

出願後方式審査を行い、要件を満たしていれば、出願番号が割り当てられる。特許された場合、出願番号が特許番号となる。

(ii)出願公開

2012年7月12日に出願公開制度が施行され、補償金請求権制度も導入された。
PCTの国内移行出願以外は、最先の優先日から18か月後に公開される。
PCTの国内移行出願は、イスラエルへの移行日から45日後に公開される。
例外として、出願公開される旨の通知の発行日から7日以内に出願を放棄した場合、出願は公開されない。

(iii)Notice Prior to Examination

出願後、平均1~2年でNotice Prior to Examinationが発行され、以下の応答が必要とされる。

・先行技術情報の開示
 米国のIDSに類似した制度があり、下記のものを提出する必要がある。非英語文献は英訳を提出要。

 ①対応出願国における審査結果、審査で引用された先行技術の国別リスト
 ②出願人が知っている関連先行技術のリスト
 ③上記①②のうち、非特許文献の写し
 ④全ての対応外国特許出願のリスト
 ⑤対応外国出願の最先の公開日

先行技術は、イスラエル出願に特許権が付与されるまで提出する義務がある。
* 第三者は、出願人が上記先行技術を提出した日から2月以内に先行技術を提出することができ、審査官はこれを使用することができる。よって、情報提供制度があると言える。

(iv)審査請求制度

審査請求制度はない。審査開始のためのofficial feeは不要。

(v)審査の種類

通常の実体審査の他、簡易審査、早期審査があり、特許審査ハイウェイも利用可能である。
また、イスラエル特許庁は、日本特許庁とドシエ情報の相互参照を実施している。
(a)通常の実体審査 Notice Prior to Examinationへの応答完了後、出願は審査官に割り当てられ、実体審査が開始される。
(b)簡易審査(Modified Examination)
簡易審査とは、所定の外国特許庁*によってイスラエル出願と同一内容の発明に係る外国出願に特許が付与された場合、イスラエル出願も新規性等の特許要件を満たしているとみなし、実体審査を行わずに特許を付与する制度のことである。出願数の10~20%程度について利用されている。
*米国、カナダ、日本、EPO、オーストラリア、デンマーク、ドイツ、イギリス、ロシア、ノルウェー、スウェーデン

  ①申請の時期的要件
  Notice of Allowanceの発行まで、いつでも請求可能。

  ②申請の主体的要件
  出願人に限定される。

  ③申請の客体的要件
  ・イスラエル出願と対応外国特許とが、一方が他方に対して優先権主張しているか、もしくは別の対応外国特許に共に優先権主張していること。
  ・イスラエル出願のクレームが、1の対応特許のクレームに一致しており、かつ当該イスラエル出願のクレーム数が当該対応特許のクレーム数よりも少ないこと、すなわちイスラエル出願が対応特許に含まれること。
  ・対応外国特許が、オーストラリア、オーストリア、カナダ、デンマーク、欧州特許庁、ドイツ、日本、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、イギリス、アメリカのいずれかで成立したものであること。
  ・国際調査機関の見解書および/または国際予備報告において肯定的な見解が示されたPCT出願のクレームに基づく請求も可能。
  ・分割出願について簡易審査を申請することも可能。

  ④申請の手続的要件
  ・書面にて簡易審査の適用を申請する。
  ・対応外国出願の特許査定通知もしくは特許証書、並びに、対応特許のクレーム、明細書および図面をイスラエルの公用語に翻訳して提出する。英語の場合は翻訳不要。
  ・簡易審査申請に関する追加の費用は不要。

  ⑤その他
  ・対応外国出願が特許されるまで、イスラエル出願の審査の停止を要求することができる。審査の停止を要求する理由の提出と、料金の支払が必要。ただし、審査の停止により、イスラエル出願のペンディング状態が不当に長引く場合は、審査官は審査を行う。
  ・対応外国出願に特許が付与された場合、必ず簡易審査が認められるというわけではなく、審査官には、簡易審査の請求を拒絶する権能が与えられている(例えば、審査官が特許要件を満たしていないと考えた場合等)。簡易審査の請求が拒絶された場合、通常の実体審査がなされる。

 (c)早期審査(Advance Examination)
 イスラエルでは審査は出願順に行われるのが原則であるが、正当な理由の提出と手数料の納付とによって、早期審査の申請をすることができる。申請が認められると、Notice Prior to Examinationが早期に発行され、審査の順序が繰り上げられて、1か月以内に審査に着手されることが期待できる。2022年の申請件数は291件。

  ①申請の主体的要件
  出願人および第三者が申請可能である。

  ②申請の客体的要件
  全ての出願につき申請可能である。

  ③申請の理由
  申請の理由は特に定められていない。典型的なものとして以下の理由が挙げられる。

  ・第三者による侵害あるいは侵害の準備が行われている。
  ・イスラエルにおいて既に事業を行っているか、早期に事業を開始する予定である。
  ・特許権が存在しないことにより、出願人に著しい金銭的損害が生じる可能性がある。

 (d)特許審査ハイウェイ(PPH)
 世界21か国との間でPPHプログラムを利用可能。
 日本との関係では、具体的には、以下の出願が対象となる。
  ①相手国における国内審査で特許性有と判断された出願
  ②日本特許庁またはイスラエル特許庁が国際調査機関・国際予備審査機関として特許性を有するとの見解を示したPCT出願
  ・PPHの申請は、最初のOAが発行される前であれば、いつでも行うことができる。
  ・クレームは、特許性有とされた対応出願のクレームと十分に対応していることが必要。
  ・2022年のイスラエルにおけるPPH申請件数は540件。

 (e)グリーン出願
 地球温暖化防止、大気汚染防止、水質汚染防止などの、非汚染農業の促進、代替エネルギーなどの、環境改善に役立つ発明は、所定の基準を満たすことにより、グリーン出願として審査を受けることができる。
 グリーン出願に分類されると、分類された日から3月以内に審査が開始される。出願済の通常出願であっても、実体審査開始前であればグリーン出願への分類を請求することができる。請求のための庁費用は無料。
 2022年の利用件数は43件であった。

(vi)特許要件など

(a)不特許事由
  ①人体の治療、診断方法
  ②単なる情報の提供にすぎないもの
  ③純然たる精神的方法にすぎないもの
  ④コンピュータプログラム自体
  ⑤公序良俗に反する恐れのある発明
  ⑥新種の動物または植物(植物については種苗法で保護されうる)
  ⑦ビジネス関連発明

(b)発明の単一性
  クレームに複数発明が含まれていると審査官が判断した場合、実体審査開始前に一発明を選択するよう要求されうる(限定要求)。

(c)新規性・進歩性・産業上の利用可能性
  特許出願日(または優先日)前に、世界のいずれかの場所で知られた発明は新規性がないものとされる。公知、公用、文献公知のいずれも対象。産業上の利用可能性がないと判断される対象はない。

(d)新規性喪失の例外
 以下の場合は新規性を喪失しないものとみなされる。
  ①特許を受ける権利を有する者の意に反して発明が公表された場合。
  ②出願日前6月以内に、特許を受ける権利を有する者またはその承継人が発明を公知にした場合。ただし、適用はイスラエル国内での博覧会、パリ条約の同盟国内における公に認められた博覧会に限られる。

(vii)分割出願

 (a)出願が許諾されるまでは、いつでも分割出願可能。分割出願に基づく孫出願も可能。
 (b)原出願と分割出願との出願日および出願人が同一の場合、下記①,②は認められる(ダブルパテントとの拒絶理由とはならない)。2020/2/10より。
  ①一方のクレームが他方のクレームの上位概念である場合(例:原出願が化合物を一般式で広く特定し、分割出願が前記一般式に包含される具体的な化合物を特定している場合)
  ②両出願のクレームの範囲が重複している場合(例:原出願のクレームの一般式と、分割出願のクレームの一般式が一部重複しているような場合)

一方の出願と他方の出願とが同一のクレームを有する場合は、従前どおり、ダブルパテントとの拒絶理由が通知される。

(viii)出願変更

制度がないため不可。

(ix)拒絶理由通知

 (a)発行回数、応答期間
  拒絶理由通知の発行回数に制限はない。応答期間は4か月。
 (b)応答期間の延長
  延長料金の支払いにより、以下の対応が可能。Notice Prior to Examinationへの応答のための延長期間(最大6か月)は、下記の15か月または12か月に含まれない。
  ・2017年3月27日より前に審査が開始された出願は、最大6か月の延長可能。OAごとに最大6か月の延長が可能だが、トータル15か月を超えることはできない。
  ・2017年3月27日以後に審査が開始された出願は、最大4か月の延長可能。OAごとに最大4か月の延長が可能だが、トータル12か月を超えることはできない。
  応答または延長料金の支払いをしない場合、最初の応答期限から5か月時に A Notice Prior to Refusalが発行され、1か月以内に応答しない場合、出願は最終拒絶される。

 (c)1st OA発行までの期間(2020年)

【表3】

技術分野期間(月)
コンピュータ、情報、医療機器31.2
機械、電機、物理27.7
バイオテクノロジー27.5
化学及び薬剤23.1
平均27.5
  • (d)イスラエルはWIPO-CASE(Centralized Access to Search and Examination)に参加しており、参加国の審査官および一般ユーザーにドシエ情報を提供している。

(x)補正について

 補正はNotice of Allowance の発行までいつでも、クレームおよび明細書等の補正を行うことができる。Notice of Allowanceの発行後でも、クレームの範囲を広げない補正を行うことができる。Notice of Allowance発行後の補正は、強い特許とするために、異議申立期間中に行われることが多い。

(xi)拒絶査定

 拒絶査定から1か月以内に、登録官に対して拒絶査定不服審判を請求することができる。

(xii)異議申立

 Notice of Allowanceが発行されると、出願は公告され、公告日から3か月以内に、何人も異議申立を行うことができる。異議申立がなされると、異議申立書の副本が出願人に送達され、出願人は3か月以内に答弁する必要がある。

(xiii)無効審判

 特許付与後、いつでも請求可能。

(xiv)abandoned applicationの回復

 放棄が確定した日から12か月以内に、Reconsideration of the Rejectionを求めることにより、回復を試みることができる。この場合、出願がabandonmentに至った状況を明示する宣誓書を提出し、出願人は出願を放棄する意思がなかったこと、出願人が出願を維持するための合理的な方策を取っていたことを示さなければならない。

特許権の存続期間

出願日から20年。医薬については5年を限度として延長可能。

 

 

意匠制度

条約類

パリ条約、TRIPS協定、ベルヌ条約、ハーグ協定に加盟している。

出願書類

  • ①願書
  • ②図面:斜視図は不要(ひな形、見本、または写真でもよい)
  • ③委任状
  • ④優先権証明書(必要な場合)

出願から登録までの流れ

(i)単一性

  一意匠一出願である。一体として販売され使用される、共通の特徴を有する一連の物品に適用される意匠(組物の意匠)を一出願することは可能。※1出願に複数の意匠を含めることが可能になった。しかし、1意匠1出願の場合と同様に、各意匠には異なる出願番号が付与され、出願費用も意匠毎に発生する。

(ii)出願公開

 出願公開制度が採用されており、出願後すぐにイスラエル特許庁より庁のウェブサイトにて公開される。
 出願人は公開日について、出願の提出日から6か月を超えない期間内で延長を請求することが可能。

(iii)実体審査

  ①審査請求制度はなく、全出願が実体審査の対象となる。
  ②新規性を有していること、並びに、法律および公序良俗に反しないことが要件である。新規性の判断基準は世界主義である。※新規性判断基準の変更については(5)を参照。

(iv)意匠に特有の制度

  部分意匠制度を有する。秘密意匠制度はない。

(v)拒絶理由通知への対応・不服申立

  拒絶理由通知への応答期間は12か月である。登録官により最終拒絶された場合は、通知から1か月以内に口頭審理の請求をすることができ、口頭審理後の登録官による拒絶に対しては1か月以内に地方裁判所に不服申立を行うことができる。

(vi)登録

  意匠権の存続期間は、出願日から5年であり、更新出願により、5年単位で4回延長することができる(最長25年)。意匠権の効力は、登録意匠およびこれに類似する意匠におよぶ。
※存続期間の変更については(5)を参照。

権利の行使について

(i)効力の及ぶ範囲

  意匠権者は登録意匠および類似意匠に対して排他的権利を有する。
  →類否判断は、購買者(需要者)の視覚に基づく印象で決められる。

(ii)使用許諾

  登録が義務とされている。

イスラエル意匠法の改正について(2018年8月)

2017年7月26日にイスラエルの国会(Knesset)は全会一致で新しい意匠法(以下、「新法」)を承認した。同新法は、1924年制定の旧特許・意匠法に変わり、2018年8月7日に発効された。

新法の最大の目的は、旧法下では考慮されていなかった様々な産業分野(グラフィックシンボルやスクリーンディスプレイ、その他のモダンデザインとしての一般的創作)において意匠権の保護を拡張することにある。新法の制定により、イスラエルは意匠の国際登録に関するハーグ協定への加盟が可能になる。保護対象としてグラフィックシンボル(フォントは除く)とスクリーンディスプレイが追加された他、主な改正点は以下である。

(i)存続期間

新法成立後の登録意匠の存続期間は、25年となる。また、旧法下の登録意匠の存続期間については、更新手続きにより最長15年であったものが18年にまで延長された。

(ii)未登録意匠の保護

未登録意匠であっても、商業目的で模倣されることを防ぐために、最先の公知日から最大3年の保護期間が与えられる。

(iii)新規性

旧法下では、新規性の地理的判断基準はイスラエル国内とされていた。新法設立により、新規性判断基準が全世界へと広げられ、イスラエル国外で公知になっていた場合であっても、新規性なしと判断されることになった。

(iv)新規性喪失の例外

出願人自らが公知にした場合又は出願人より知得した情報に基づいて第三者が公知にした場合、公知日から12ヶ月以内に意匠出願を行うことで、新規性喪失の例外適用が受けられることになった。

 

 

商標制度

条約類

パリ条約、TRIPS協定、マドリッド協定議定書、ニース協定に加入している。

出願書類

  • ①願書:書誌事項の他、商品・サービス、およびその区分を記載(国際分類は採用されていない)。一出願多区分制。電子出願可能。
  • ②委任状(認証不要)
  • ③商標見本 1通(標準文字の使用も可)
  • ④優先権証明書(出願日から3か月以内に提出要)
  • ⑤優先権翻訳(出願日から3か月以内に提出要)

保護対象

商標、サービスマーク、団体商標、証明商標、立体商標、音・匂い・色彩のみといったいわゆる新しい商標の登録が可能。

出願から登録までの流れ・取り消し制度

(i)出願公開

出願公開制度は採用されていない。

(ii)実体審査

  ①審査請求制度はなく、全出願が実体審査の対象となる。
  ②識別性および既登録商標との類否について審査される。
  ③主な不登録事由は下記のとおりである。
   ・識別力を欠く標章
   ※識別力を備える商標に補正することが認められる(登録官の補正指示に従う)
   ・公序良俗に反する標章
   ・他人の先行商標と同一または類似の標章
   ・原産地を誤認させる標章
   ・大統領との関係を推測させる恐れがある標章
  ④本国で登録されていることは要求されない。
 ※審査にかかる期間は、2017年では約16ヶ月であったが、2018年では約12ヶ月まで短縮された。審査官の育成が進んだことや処理システムの変更等が原因と考えられ、今後も審査期間の短縮が期待される。

(iii)拒絶理由通知への対応・不服申立

  ①拒絶理由通知への応答期間は3か月である。
  ②ディスクレームが認められている。
  ③拒絶査定となった場合、最高裁判所に不服申立することができる。

(iv)異議申立

異議申立期間は、出願公告の日から3か月である。

(v)登録

商標権の存続期間は、出願日から10年であり、10年単位で更新することができる。更新時の使用証明は不要。

(vi)取消制度

①不使用取消制度
 登録後3年間、登録商標が使用されていない場合は、利害関係人の請求により商標登録が取り消されうる。
②登録取消制度
 登録から5年以内に限り、不登録事由に該当することを理由として、利害関係人は商標登録の取り消しを請求することができる。

権利の行使について

(i)効力の及ぶ範囲

  登録商標に類似する商標が、当該登録商標の指定商品・役務に類似する商品・役務に使用されている場合、商標権の効力は及ばないとされている。

(ii)使用許諾

  登録が義務とされている。

 

 

著作権制度

条約類

ベルヌ条約、実演家等保護条約、レコード保護条約、万国著作権条約(1952年条約)に加入している。

著作権法

2007年に新著作権法が制定され、2008年から施行されている。この改正の主要なポイントは著作権の制限につき、米国版のフェア・ユース規定を導入した点にある(それまでは、英国版のフェア・ディーリングを採用していたといわれている)。

著作権法第19条【フェア・ユース】
(a)著作物のフェア・ユースは私的学習、研究、批評、論評、報道、引用、又は教育機関による教育または試験等の目的で認められる。
(b)著作物の使用が本条における意味において公正(fair)となるか否かを判断する場合に考慮すべき要素は、とりわけ以下のものを含む。
  ①使用の目的および性質
  ②使用された著作物の性質
  ③著作物全体との関連における使用の量的及び質的範囲
  ④著作物の価値及び潜在的市場に対する使用の影響

上記の他、下記の権利制限規定が置かれている。
  ・20条:司法ないし行政手続での著作物の使用
  ・21条:公的閲覧のために保管された著作物の複製
  ・22条:著作物の付随的な使用
  ・23条:公共の場での著作物の放送ないし複製
  ・24条:コンピュータ・プログラム
  ・25条:放送を目的とする録音・録画
  ・26条:一時的複製
  ・27条:著作者によって作られた追加的芸術作品
  ・28条:建造物の改装または改築
  ・29条:教育機関における上演
  ・30条:図書館、公文書館での許容される使用
  ・31条:教育機関、図書館、公文書館に関わる規則
  ・32条:レコード生産に関する著作権使用料の支払い

 

 

参考文献

①特許庁ホームページ 産業財産権制度ミニガイド

②日本弁理士会ホームページ

③特許ニュース、第13686号、第13687号、財団法人 経済産業調査会

④「著作物の流通・契約システムの調査研究『著作権制度における権利制限規定に関する調査研究』報告書」別冊「その他の諸外国地域における権利制限規定に関する調査研究‐レポート-」(平成21年3月) 著作権制度における権利制限規定に関する調査研究会 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

⑤中東諸国における特許・実用新案・意匠・商標の審査運用の実態および審査基準・審査マニュアルに関する調査研究 報告書(一般社団法人 日本国際知的財産協会)

⑥イスラエル特許庁ホームページ:www.patents.gov.il

⑦特許庁ホームページ「2020年1月3日発効 1999年改訂協定への加盟:イスラエル(参考訳)」

 

 

弁理士 スペシャリスト  松村 一城


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