EPO/EUIPO支援室

このたび、当特許事務所では、欧州及び日本国への知的財産権の出願手続・権利保護をアシストさせていただくと共に、皆様方の多様なご要望等に迅速かつ適切に対応することができるように、EPO/EUIPO支援室を開設致しました。

EPO/EUIPO支援室は、欧州の知的財産権に係る皆様方のご要望、ご質問又はご相談等に迅速かつ適切にアドバイスすると共に、高品質な種々のサービスを提供し、これまで以上に皆様方のお役に立つことを目指しております。

現在、専属スタッフがEPO/EUIPO支援室に配属され、適宜、関係スタッフと連携を取りながら、欧州の皆様の日本国における知的財産権の取得等の業務をサポートできる体制、並びに日本国の皆様の欧州における知的財産権の取得等の業務をサポートできる体制を確立しております。

欧州及び日本国の知的財産権に関し、ご要望、ご質問又はご相談等ございましたら、ご遠慮なく、弊所のEPO/EUIPO支援室までコンタクトを取ってくださいますよう、お願い申し上げます。EPO/EUIPO支援室スタッフ一同、心よりお待ちしております。

EPO/EUIPO支援室 室長 岡部 泰隆

 

制度比較

日英米3国特許法簡易比較

  JP EPC US
不特許事由 公序良俗違反 ・発見、科学理論、数学的方法、美術創作物、精神的行為、コンピュータプログラム、情報の提示、手術もしくは治療・公序道徳違反、植物・動物変種

 

特許法に特段の規定はない
発明の定義

自然法則を利用した技術的思想の創作のうちの高度なもの

産業上利用できるもの農業を含む産業分野において生産又は利用できるもの 新しく有用な機械、製品、プロセス、組成物とその改良
新規性 ・先行技術に開示されていない
・刊行物、公知公用は世界
・新規性喪失例外は6ヶ月
・技術水準の一部を構成しない
・刊行物、公知公用は世界
・新規性喪失例外は6ヶ月
・発明日前の先行技術に開示されて
いない
・刊行物は世界、公知公用は米国
・グレースペリオドは1年間
進歩性(非自明性) 当業者が容易に発明をすることができなかった場合、特許が付与される 産業上利用でき、新規性且つ進歩性を有する発明に特許が付与される 発明主題と先行技術との差異が発明時に当業者にとって、全体として自明でない場合に特許が付与される
審査基準 ・ 技術水準を把握した上で当業者が発明に容易に想到できたことの論理付ができるか否か論理付けができた場合は進歩性は否定される
・ クレーム発明と引用発明とを比較し、一致点、相違点を明らかにし、技術常識から進歩性の存在を否定し得るか
・ 単なる設計変更か、公知技術の寄せ集めか、あるいは引用発明に動機付があるか
・ 明細書の有利な効果の記載は進歩性の肯定に参酌
・技術の通常の進展を超えるか
・ 発明は全体として解釈し、全体として自明か
・ 公知技術の単なる寄せ集めか
・ 課題・解決アプローチ
(1) もっとも近い先行技術の特定
(2) 客観的な技術的課題の特定
(3) Would-Couldアプローチ
(4) 先行技術の組み合わせ

・判例に基づき判断

<グラハム事件の最高裁判決>
・先行技術の範囲と内容の認定
・二次的事項の考慮
・先行技術とクレーム発明との相違点
・当業者の技術水準の決定

<KSR事件の最高裁判決>
・TSMテストが唯一の自明性判断基準に非ず。
・自明性判断のテストは、もっと非制限的で且つフレキシブルなもの
・自明性の判断には、多くの異なるのテストを適用可
・審査官は、従来技術の組み合わせに基づき自明である旨の認定を
する場合、明白な根拠を出願人に示さなければならない
・引用文献は、特許権者が取り組む課題と全く同じ課題を解決しようとするものである必要はない
・自明性判断のテストとして、「試みることは自明である」を使用することが可能
・自明性を認定するためには、引用文献中の相互に関連のある教示内容、当業者に知られ要望されている効果、当業者の背景知識等に目を向けることができる。
・非予測の効果があるか
・クレーム発明によって解決された課題が従来知られていなかったか

 

 

意匠制度簡易比較表

  欧州 日本
保護対象 アイコン、タイプフェイスや、ロゴ、グラフィックキャラクター、ビルディング、店舗デザインなど保護対象は多岐にわたります。日本で意匠の保護対象とならないものでも、欧州では意匠として広く保護される可能性があります 意匠法改正により、画像(所定の要件あり)、建築物、内装のデザインについても、意匠法の保護対象となりました。したがって、アイコン、ビルディング、店舗デザイン等は欧州と同様、意匠法で保護されます。しかし、タイプフェイスや、物品と結びついていないロゴ、グラフィックキャラクターは、保護対象になりません。
審査制度 無登録共同体意匠(UCD)EU域内での公表により公衆に利用可能となったことを権利発生の要件として、無登録で意匠を保護します。日本の不正競争防止法2条1項3号に似た規定です。
登録共同体意匠(RCD)
EUIPO(欧州連合知的財産庁)等に出願して登録されることにより権利が発生します。ここでは、主に、このRCDについて説明します。
出願された意匠は、全て方式審査及び実体審査がなされます。
審査期間 審査が非常に早いことが特徴で、電子出願の場合だとほぼ1週間以内で登録となります。さらに、優先権証明書等必要書類がそろっている場合は2日程で登録されます。製品発表まで意匠を非公開にしておきたい場合には、公告延期制度を利用する必要があります。 平均6~7月程度を要します。
審査内容 一部審査主義
①法上の「意匠」に該当するか、②公序良俗違反の2要件のみが審査され、実質的には、ほぼ無審査ということができます。新規性や独自性等は審査の対象ではなく、無効審判によって判断されます。
全ての拒絶理由に該当しないか審査されます。(意匠としての適格性、新規性、創作非容易性、公序良俗違反等)
これらに違反する場合、その出願は拒絶されます。
登録要件 新規性
欧州連合内の当業者が知り得たか否か、実質的に同一かによって判断されます。
新規性
日本国内又は外国において、公然知られた意匠、頒布刊行物に記載された意匠、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠は、登録を受けることができません、 判断主体は需要者です。
独自性
出願日(優先日)以前に公衆に利用可能となった先行意匠と共同体意匠が、「情報に通じた使用者(Informed user)に対し、「異なる全体印象」を生じさせるときは、独自性を有すると判断されます。また、デザイナーの自由度を考慮して、デザイナーが自由にデザインできる部分(機能的に決定される形状以外の部分)が共通するか否かによって決定されます。
創作非容易性
意匠登録出願前に、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が、日本国内又は外国において公然知られた形状、模様等(物品との関係を離れた抽象的なモチーフを含みます)に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠は意匠登録を受けることができません。意匠の構成要素の一部を他の意匠に置き換えたに過ぎない意匠や、複数の意匠を組み合わせて寄せ集めたにすぎない意匠等が該当します。判断主体は、デザイナー等の当業者です。
技術的機能に基づくデザイン
専ら技術的機能のみを有する外観的な特徴は意匠権として認められず、同様の機能を有する代替意匠があることを立証しても認められません。
相互連結(must fit)デザイン
プラグとソケットのように、他の製品に連結等して各製品が機能を発揮するために必然的な形状で製品化される意匠(must fit)は認められません。
技術的機能に基づくデザイン
意匠権の保護対象は、視覚を通じて美感を起こさせるものである必要がありますが、美術品のように高尚な美は必要ではなく、何らかの美感を起こすものであれば足ります。したがって、機能に基づく美感のみを有するものも意匠登録の対象として認められます。
けれども、衛星放送受信アンテナ用反射鏡のように、物品の技術的機能確保のために必然的に定まる形状(必然的形状)のみからなる意匠や、JIS規格のように、物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)のみからなる意匠は認められません。
複合製品の内部構造の視認性
交換、分解、再組立てが可能な複数の構成部品により構成される「複合製品」であって、エンドユーザーによる「通常の使用時」に視認できない内部構造の意匠は認められません。(修理の際にのみ視認できても登録不可)例えば、ボンネット内の自動車部品などは保護されません。
視認性
エンドユーザーによる通常の使用時に視認できない部品等の意匠であっても、流通時等に視認できれば、意匠として認められます。したがって、ボンネット内の自動車部品なども保護されます。
新規性喪失の例外 グレースピリオド
日本の新規性喪失の例外に相当する規定で、出願日(優先日)前12か月以内に、創作者(承継人)等により公衆に利用可能となった場合においても、特に手続きをしなくても、新規性、独自性の判断に影響を与えません。
新規性喪失の例外
公表されたときから6月以内であれば、所定の手続きをすることによって(意に反する公知の場合を除く)新規性を喪失しなかったとみなされます。
存続期間 UCD : EU域内で公衆に利用可能となった日から3
年間で、更新はできませんRCD : 出願から5年間で、更新により最長で25年間保護されます
意匠登録の日から20年間保護されます。
権利範囲 物品の名称によって、意匠の権利範囲に影響を与えません。同じ形態の意匠であれば、物品が相違しても意匠権が及ぶので注意が必要です。 意匠は、「物品」と「形態」によって特定されます。したがって、同じ形態の意匠であっても物品が相違していれば、原則として意匠権は及びません。
多意匠一出願 ロカルノ分類(サブクラス)が同一の場合、意匠が類似していなくても、電子出願の場合は99意匠まで一出願に含めることができます。また、権利行使においては独立の権利として取り扱われます。 一意匠一出願制度を採用しており、一出願につき一つの意匠のみ出願できます。複数の意匠が一出願に含められた場合、7条違反で拒絶されます。
部分意匠 意匠は「製品の全部または部分の外観…」と定義され、部分意匠も保護の対象となっています。 「意匠とは、物品(物品の部分を含む。(略))の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」と定義され、部分意匠も保護の対象となっています。
関連意匠 関連意匠制度は採用していません。 一のデザインコンセプトから創作されたバリエーションの意匠は、所定の要件を満たすことで、本意匠に類似する関連意匠として保護の対象となっており、独自
の効力を有します。
秘密意匠 秘密意匠制度は採用していません。 秘密意匠制度があります。
公開時期 審査が非常に速いので、製品発表まで意匠を非公開にしておきたい場合には、公告延期制度を利用することができます。出願日(優先日)から30か月以内の期間であれば、出願時に公告の延期を請求できます。 秘密意匠制度を利用することにより、意匠登録日から最大3年間、登録意匠の具体的な内容を秘密にすることができます。これによって、登録意匠の実施時期と公開時期とを合わせることができます。
願書 意匠に関する説明(description)
意匠についての説明文を提出することができますが、公報にも登録簿にも掲載されず、権利範囲にも影響を与えません。
経済産業省で定められた物品の区分以外の物品名を記載したときなどに、【意匠に係る物品の説明】欄に、その物品の使用の目的、使用の状態等、物品の理解を助ける説明を記載することができます。この記載は公報や登録簿に記載されます。
図面 提出する図面の枚数に制限があり、7図まで提出できます。比較的図面の表現は自由で、例えば店舗の特徴部分の写真等を提出することができます。使用状態に特徴がある場合、使用状態を示す図を提出することを検討すべきです。 写真またはCGを提出することもできます。 提出する図面の枚数に制限はありませんが、六面図は必須です。意匠に係る物品の形態を認定する役割を担っており、以前と比べて図面の審査はかなり緩くなりましたが、各図面の整合性等の審査は比較的厳しいです。 写真またはCGを提出することもできます。

 

 

 

出願時に必要な書類

願書
明細書、一又は二以上のクレーム
図面(明細書等で言及されている場合)
要約等
出願料金

 EPC加盟国の言語以外の言語でEP特許出願が行えます。ただし、出願後1ヶ月以内に翻訳文(英語、独語、又は仏語のいずれかの言語による翻訳文)を追完する必要があります。この期間内に翻訳文を追完しない場合、EPOからの翻訳文提出指令を受領し、これに対して所定期間内(2ヶ月以内)に翻訳文を追完することも可能となる予定です。

 また、EP特許出願の優先権主張の基礎となる、たとえば日本国特許出願の書誌的事項(出願国、出願日、出願番号)をEPOに通知することによって、明細書や図面等の書類を提出することなく、EP特許出願の出願日を確保することも可能となります。この場合、日本国特許出願の写しと、その翻訳文(英語、独語、又は仏語のいずれかの言語による翻訳文)を出願日から2ヶ月以内に提出することが求められます。

 

 

 

EP知財情報

統一特許および統一特許裁判所について

経緯

2011年2月15日

欧州議会、統一特許裁判所のための協力の強化(”enhanced cooperation”)に同意。

2011年3月10日

欧州議会、統一特許制度の制定に関する協力強化を承認。これにより、新たな統一特許制度のための正式な法律案の作成が開始。

2011年4月13日

欧州委員会、欧州統一特許保護に関する法案を提示しました。

http://www.epo.org/news-issues/news/2011/20110413a.html

2012年6月29日

統一特許裁判所および統一特許訴訟制度の最終形態が成立。

http://www.european-council.europa.eu/home-page/highlights/eu-unitary-patent-%E2%80%93-a-historical-breakthrough?lang=en

統一特許制度におけるgrant and enforcement に関する欧州理事会の最終合意の内容は、主に以下のとおり。

  • 統一特許裁判所は2014年~2015年中に施行予定であり、特許付与前手続および異議申立手続は、実質的に現行のEPO特許プロセスと同じ。
  • 統一特許発行後のvalidation processは、公用語である英語、仏語、及び独語のみで手続可能(費用の大幅削減が可能)。
  • 侵害手続の第一審については、スペイン及びポーランドを除く加盟国のいずれにおいても行うことができるが、特許の有効性に係る全てのissuesおよびappealsを処理するprimary technical courtは、いわゆるCentral Division(パリに本部を置く)とする。Specialist Sections がロンドン(化学、医薬、生命科学の各分野に対応)とミュンヘン(機械工学分野に対応)に開設される。
  • 特許維持年金の一括支払により、全EU加盟国(但し、スペインとイタリアを除く。)をカバー可能。
 

統一特許裁判所について

EU統一特許制度の概要

2012年12月11日に、欧州議会が統一特許制度に関する2つのdraft regulationsを賛成多数で承認しました。これにより、長年にわたり待望されてきた統一特許裁判所の発効への道が開かれました。統一特許裁判所は2014年の早い時期に発効すると言われており、この場合、2014年中に最初の欧州統一特許が発行されることになります。

統一特許制度が発効することによって、唯一の管理工程を経るだけで、25のEU加盟国(スペインとイタリアを除く)において統一特許が発行されます。この際、EPOが、統一特許の業務遂行および管理を行います。

統一特許は、各加盟国の国内特許およびEPCに基づくEP特許と共存することになります。また、統一特許制度においては、法的根拠や特許付与手続は、現行のEPCに基づくEP特許と同じですが、特許付与後のシステムが異なります。出願人は、許可された特許出願を統一特許として処理するか、あるいはEPCに基づくEP特許として各国国内段階手続を行うかについて、許可後1ヶ月以内に決定する必要があります。

統一特許制度では、EPOが特許を一括管理し、annual renewal feesを一括徴収し、統一特許制度に参加する各加盟国へ分配するシステムを採用しています。なお、出願人がsmall entitiesの場合には、annual renewal feesは減額されるようです。

また、特許が全加盟国で無効になるというリスクを嫌う特許権者のために、少なくとも一握りの国においてその国の国内特許を取得・維持するオプションも設けられています。統一特許制度が発効するまでに少なくとも13の加盟国が上記のpackage of new regulationsを批准しなければなりませんが、現時点では、上述のように2014年中に1件目の統一特許が発行されると言われています。

さらに、統一特許は、加盟国共通の唯一の特許として取り扱われますので、加盟国ごとに特許が法的に有効にされたり(翻訳文等の提出する国内段階移行手続)、管理されたりすることはありません。これにより、出願人は、時間と費用の面において多大の節約が可能となります。

なお、統一特許制度においては、英語、独語、または仏語で特許出願をファイルする必要があります。また、統一特許制度下および移行期間中(長くとも12年間)においては、特許出願が独語または仏語で許可され場合、英語の翻訳文を提出しなければなりません。また、特許出願が英語で許可され場合、EU公用語のうちの一つの言語の翻訳文を提出しなければなりません。

 

統一特許裁判所について

統一特許制度下では、EPOによって付与された特許権は、統一特許裁判所を介して法的強制力を持つことになります。この際、各国国内段階移行手続は不要です。このため、各国国内費用および翻訳費用が不要となります。

統一特許裁判所は,統一特許だけではなく、EPCに基づくEP特許についても専属管轄権を有します。移行期間中、EPCに基づくEP特許は、統一特許裁判所の管轄から除外されることを請求することが可能です(opt-out)。この場合、当該EP特許は、各国国内裁判所の管轄となります。

前記のpackage of new regulationsには、統一特許裁判所を創設する国家間の条約に基づいて統一特許訴訟制度が規定されており、それによれば、統一特許裁判所(パリ、ロンドン、ミュンヘン)は、統一特許に関係する侵害および有効性の問題に関し、第1審裁判所および控訴裁判所として機能すると共に専属管轄権を有する専門裁判所(specialized court)として位置付けられています。

第1審裁判所には、中央部、地方部、地域部があります。すべての部に多国籍の裁判官で構成される合議体が置かれます。中央部は、イギリス(医薬品、生命工学、化学関連の案件担当)、フランス(電気通信、電機、その他の案件担当)、ドイツ(機械、武器関連の案件担当)に置かれる3つのセクションに分かれ、統括部門がパリに置かれます。

第1審裁判所は、各加盟国の裁判所において行うことも可能です。この場合、法的資格を有する3名の裁判官の合議体で審理されます。特許の取消に関する反訴の場合には、合議体または当事者の要請により、技術的資格を有する一人の裁判官が割り当てられます。

一般に、侵害手続は侵害が行われた場所または被告の居住地で行われますが、有効性の手続は反訴が提起されない限り統一特許裁判所のCentral Division(パリに本部を置く)で行われる必要があります。なお、侵害手続と有効性の手続の両方にまたがる場合には、これらの手続を統一特許裁判所で行うことも可能です。なお、統一特許裁判所の本部は、法的資格を有する2名の裁判官と、技術的資格を有する1名の裁判官とで構成される合議体で審理されます。裁判官は多国籍の裁判官の合議体であり、これらの裁判官には法的資格を有する者と技術的資格を有する者とが含まれます。

また、ルクセンブルグの専門裁判所(specialized tribunal)は、従前どおり、控訴裁判所であると共にEU司法裁判所(CJEU)であり続けます。この控訴裁判所においては、法的資格を有する3名の裁判官と、技術的資格を有する2名の裁判官とで構成される合議体によって審理されます。なお、各国国内裁判所は、上記移行期間において依然として各国国内特許に法的強制力を持たせるために利用可能です。この移行期間経過後には、統一特許裁判所が各国国内特許の審理も行うようになります。

 

Q&A

  • ◆ 統一特許の対象となる国は?
    2013/4/1時点で全EU加盟国(但し、スペインとイタリアを除く。)です。スペイン、イタリアは、参加拒否を撤回した場合に対象国となります。

 

  • ◆統一特許、統一特許裁判所を簡単に言うと?
    EPOが、EU全体に効力の及ぶ単一の特許を付与することが可能となります。また、統一特許は、統一特許裁判所での単一の訴訟により、参加国すべてに対して権利行使、権利無効化が可能となります。

 

  • ◆EPCに基づくEP特許を統一特許へ変更することは可能か?
    EPCに基づくEP特許であっても、その特許付与が統一特許規則の発効日を超える場合には、統一特許を取得することが可能です。

 

  • ◆特許の種類は選択可能か?
    出願人は、新しい統一特許、EPCに基づくEP特許、参加国ごとに付与される国内特許のいずれも自由に選択することができます。

 

  • ◆統一特許に関連する費用はどのようになるか?
    未確定の部分が多く、今後の経緯を見守る必要があります。
    ただし、すべての統一特許について、少なくとも6年、最長12年にわたり、明細書全体が英語で提出されるか、英語に翻訳されることになります。英語で提出された場合には、他の1つのEU official languageに翻訳されなければなりません。クレームは、現在と同様に、英語、フランス語、ドイツ語に翻訳されなければなりません。

 

  • ◆統一特許の出願方法は?
    現行通り、EPOに対して行います。審査手続きもこれまでと同様です。

 

  • ◆Allowance後にどのような対応が求められるか?
    出願人は、登録時に、統一特許を指定する、国別に指定する、といった選択が可能です。
    異議申立手続きは、既存のEP出願と同じです。

 

 

EUの地理的表示(GI)

1. 基本法令

・農産品および食品の品質体制に関する2012年11月21日付欧州議会・理事会規則1151/2012
・外務省:経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU経済連携協定)

2. 概要

地理的表示(GI)は、農産物・食品等の品質または特性が、原産地の領域・土地などに由来する場合、その土地の原産であることを示す表示です。
現在EUでは、理事会規則1151/2012により農産物・食品の保護対象が定められていますが、ワインやスピリッツ(蒸留酒)に関しても、GIの保護対象となっています。

3. 英国EU離脱に関する取扱い

離脱協定に基づき、2020年12月31日の移行期間終了前にEUで登録済みのGIは、移行期間の終了後も、英国において引き続きGIの保護対象とされています。また、移行期間終了前に英国で登録済みのGIも、EUにおいて引き続き保護されます。
EUにおいて移行期間終了に、新たに英国産品のGI登録を申請する際は、英国はEU域外国として手続きする必要があります。

4. 日EU経済連携協定(EPA)

日EU経済連携協定(EPA)により、日本とEUの間で、農産品および酒類のGIの相互保護が規定されました。これにより、神戸牛や夕張メロンなどの日本のGIも、EU市場において保護されます。


<関連ページ>
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