トラブル回避

「初めての方へ」で述べたように、情報化社会が進み、インターネットによってあらゆる情報に簡単にアクセスできるようになった現在、著作物はあらゆるところに存在するといえます。そして、気づかない間に他人の著作物を利用してしまい、それが著作権の侵害になってしまうというリスクは誰にでも存在するといえるでしょう。ここでは、著作権にまつわるトラブルに巻き込まれた場合に、どのように対処すべきかということにつき説明します

著作権法で保護されるのは、あくまで「著作物」(第2条第1項第1号)であり、それにまつわる複数の支分権(複製権や公衆送信権)や著作者人格権等の著作権法に定められた権利です。

すなわち、著作権法上の権利を侵害したとされるのは、

  • Ⅰ:対象の作品が「著作物」該当すること
  • Ⅱ:著作権法に定められた権利を侵害すること

の両方を充たす場合です。

 

「著作物」に該当すること

「著作物」とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、表現されていない背景思想や単なるアイデアは「著作物」として保護されません。詳しくは、当コンテンツの「著作権制度―著作物・著作者」をご覧ください。

また、「著作物」に該当する場合であっても、

  • A.著作物の類似性があること
  • B.侵害した側の著作物が既存の著作物に「依拠」していること

の二つの要件が必要です。

※著作権法では、他の産業財産権法(特許法、意匠法、商標法等)と異なり、偶然に一致した場合は侵害の問題が生じません。このことは上記B.の「依拠」に関わるのですが、インターネットが発達した現在では、この「依拠」性を否定することは一般に困難だと考えられています(インターネットを利用して、様々な情報に簡単にアクセスできるため)。

 

著作権法に定められた権利を侵害すること

第1に、著作権法上定められた各種支分権(第21条~第28条)に該当することが必要です。単に個人で視聴したりする分には、著作権法上の問題は生じません。詳しくは、当コンテンツの「著作権制度―各種権利をご覧ください。

第2に、各種支分権に該当する行為(たとえば、複製や譲渡)をしたとしても、著作権法上定められている権利制限規定に該当する場合には、著作権者が権利を主張することができず、その結果侵害となりません。これは、著作物の自由な流通を保護する利益が著作権者の利益を上回ると判断される場合といって問題ありません。詳しくは、当コンテンツの「著作物の利用」をご覧ください。

 

具体的な場面

以上を前提に、「侵害されたと考えた場合」および「侵害であると警告された場合」にそれぞれどのように考えるべきか見ていきましょう。

 

侵害されたと考えた場合

まず、侵害していると考える文章や絵画、音楽等が

  • ①単に背景思想やアイデアが共通するものに過ぎないのか、それとも
  • ②具体的な表現そのものが共通または類似するのか

を検討することが必要です。①の場合は残念ながら著作権法上の問題は生じません。②の場合は、さらに次の段階(上記1.(1)のAおよびB)に進み、この両方が認められると、著作権法上の権利侵害が認められることとなります。

 

侵害であると警告された場合

まず、対象の作品が真に「著作物」に該当するといえるのかを考えます。「著作物」とは上記のとおり、「思想または感情を創作的に表現」していることが必要であって、ここから下記の検討事項が見えてきます。

  • ①単なる背景思想やアイデアにとどまるものではないか
  • ②創作的な表現といえるのか

①については、先の(1)侵害されたと考えた場合とは逆で、単にアイデア等を借りただけであって、表現そのものを模倣していない場合には侵害とはなりません。他方で、表現されたものであっても、そこに創作性が全く認められない誰もが容易に思いつくような表現であれば、それは「著作物」としての保護を受けられないため、その部分が共通または類似していたとしても著作権法上の問題は生じません。

※創作性が認められない表現には著作物性が認められませんが、このことはたとえば1冊の本の中にも「著作物性」が認められる部分とそうでない部分とが混在していることを意味します。

対象の作品が「著作物」に該当する場合には、さらに次の段階(上記1.(1)のAおよびB)に進み、この両方が認められると、著作権法上の権利侵害が成立してしまうこととなります。

なお、著作権法上の権利侵害によって作成された著作物であっても、それ自体が独立した著作物として認められるのであれば、その著作物も保護されることになります。このように既存の著作物に独自の創作的表現を付け加えて作成された著作物を二次的著作物といいます。

 

いずれも独立した著作物として保護されます。この場合、二次的著作物を利用する場合には、元の著作物に関する権利も同時に問題となります。

 

 


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