特徴的なパッケージは商品名と共にブランド⼒を発揮します。しかしパッケージの保護が⼗分検討されておらず、模倣品発⾒時に権利⾏使ができなかったというケースも多々存在します。
本記事では、パッケージデザインの権利化の有⽤性について紹介します。
目次
商品包装の侵害事件の例(不競法)
マスカラ化粧品容器事件
(⼤阪地裁平成20.10.14判決_平成19年(ワ)第1688号 不正競争⾏為差止等請求事件)
原告らの製造販売するマスカラの容器及びその包装が原告の商品表示として周知・著名なものになっており、被告の⾏為が不競法2条1項1号又は2号の不正競争に該当するとして被告製品の差止め及び損害賠償等を求めた事件。
裁判所は、原告ら容器(及び包装全体)の独自性及び周知性、被告包装及び容器との類似性(混同のおそれ)を認め、損害賠償請求を認めた。
不競法による訴えでは、パッケージ等の包装が原告商品等表示として周知性があるかが争われるケースが多くみられる。商品等表示に該当するためには、独自性等が必要とされ、また、周知性が認められるためには、広告宣伝費や、販売店舗数、売上高などの根拠を示す必要がある。このほかにも侵害者の故意・過失や混同が生じるおそれ、営業上の利益の侵害(またはそのおそれ)についても原告側の⽴証が必要となり、不競法を根拠に差止請求や損害賠償請求をするには原告側のハードルが高い。
→商標権 or 意匠権が有効
パッケージデザインの保護方法
商標
・商標権を更新することで半永久的に保護される。(存続期間10年、更新可能)
・権利行使の際に、故意・過失、周知性、商品等表示該当性の立証等が不要。
・識別性が必要とされるため、容器等の立体形状のみでは商標権として登録されない可能性がある
(コカ・コーラのボトル、ヤクルト容器)➡意匠権と合わせて保護を検討。
・商標を変更したパッケージには権利行使ができない可能性がある。
※左の例では被告製品には商標「塗るつけまつげ」(登録4737240号)が使用されておらず、商標権侵害を主張できなかった。
意匠
・パッケージデザインのみ(商標を含まない)で登録が可能。(存続期間25年)
→商標が表示されていないものや変更されたものにも権利が及ぶ。
・権利行使の際に、故意・過失、周知性、商品等表示該当性の立証等が不要。
・新規性が必要となるため、販売後人気が出た後で登録ができない。
パッケージの意匠登録例
意匠登録1663517
意匠登録1535059
著作権
・著作権で保護を受けるためには、パッケージが著作物として認められる必要がある。
※キャラクターの図柄をメインにしたパッケージであれば著作物性が認められる可能性はある。
・権利行使の際に、著作物性や侵害行為の違法性の立証が必要となり権利者側の負担が大きい。
※著作物性、特に創作性の立証については、当該著作物の性質に応じて変動する。
不競法
・侵害事件においては、侵害者の行為が不正競争に該当することを原告側が立証する責任を負うため、原告の負担が大きい。
・デッドコピー以外はパッケージの商品等表示該当性や、周知混同又は著名性がネックになり、権利行使できないことがある。
(デッドコピー:日本での販売開始から3年以内の保護)
税関登録(輸入差止)について
意匠権や商標権等の知的財産権に基づき、税関で模倣品の輸入品差止が可能。商標権侵害品が差止実績の⼤半を占めるが、国内に持ち込んだあとに商標を付けて販売しようとするものや、標章を隠匿したケースには意匠権に基づく差止が有効。※税関への輸入差止申⽴が必要
税関に輸入差止申⽴がされた意匠権
包装袋(蒟蒻ゼリー入り)
オリヒロプランデュ株式会社
意匠登録第1455116号
商品例
オリヒロ健康食品ショップより
https://health.orihiro.com/jelly/