目次
(1)はじめに
事務用品は、「文具・紙製品・事務機年鑑」が発行されるほど、多種多様な商品が毎年販売されています。
多くの事業者の皆様は、事務用品について新しい発明や考案をすれば、特許権や実用新案権により保護されることはすでにご存じかと思います。
では、これらの新しい事務用品が技術的に新規なだけでなく、デザイン的にも優れている場合はいかがでしょうか。新規なデザインであること、視覚を通じて美観を起こさせるものであること等、所定の要件を満たして意匠登録を受けることにより、特許権等と同様に、その意匠について独占・排他的な実施ができるようになります。
”HARAKENZO more ”では、毎年数多くの商品を開発・生産している事務用品業界の皆様を応援し、業界固有の意匠登録の「ノウハウ」について知って頂きたく、このようなページを設けました。
(2)事務用品の意匠について
意匠とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいいます。
ここで、「事務用品に美感?」と思われるかもしれませんが、美術品のように高尚な美を要求するものではなく、何らかの美感を起こすものであれば足ります。
例えば、下図のような整理棚といった事務用品についても、意匠登録が認められます。
Dグループ(住宅設備用品)
(岐阜プラスチック工業株式会社 登録意匠第1233625号)
(3)部分意匠について
上記の整理棚のように物品全体の意匠について意匠登録を受けることができるほか、物品の部分の意匠についても、登録を受けることができます。
下図を例にとると、実線で描かれたキャビネットの囲いの部分の意匠について独占・排他的に実施したい場合、意匠に係る物品を「キャビネット」として部分意匠の登録が受けられます。
例えば、他社が、下図の実線で描かれた囲いの部分の意匠を、その製造しているキャビネットにそっくり取り込んでいるけれど、キャビネット全体でみたら、下図のキャビネットの意匠とは非類似であるとします。この場合、囲いの部分について部分意匠の登録を受けていれば、このような他社による模倣を排除することができます。
部分意匠制度を活用することにより、独創的で特徴のある事務用品の部分の意匠を有効に保護することができます。
Dグループ(住宅設備用品)
(株式会社岡村製作所 登録意匠第1466835号)
(4)関連意匠について
1つのデザインコンセプトから生まれたバリエーションの意匠について意匠登録を受けたい場合は、関連意匠制度を利用することができます。
例えば、ボールペンの意匠について出願又は登録を受けている場合に、後からそのバリエーションの意匠について出願したい場合など、先に出願した意匠を本意匠、後から出願した意匠を関連意匠として出願することができます。
本意匠と関連意匠の意匠権の効力は同等なため、それぞれの意匠について、独占・排他的な実施が可能です。
Fグループ(事務用品及び販売用品)
左(株式会社パイロットコーポレーション 登録意匠第1428229号)
右(株式会社パイロットコーポレーション 登録意匠第1428487号)
[Point]
2020年4月1日に施行された改正意匠法では、基礎意匠※の出願日から10年以内であれば、基礎意匠の関連意匠及び当該関連意匠に類似する意匠を出願することが可能になりました。改正後の関連意匠制度について詳しくはこちらをご確認下さい。
※最初に本意匠として選択した一の意匠を「基礎意匠」といいます(意匠法第10条第7項)。
(5)組物の意匠について
同時に使用される2以上の物品、建築物又は画像であって経済産業省令で定めるものを、組物といいます。組物を構成する物品、建築物又は画像に係る意匠は、組物全体として統一があるときは、一意匠として出願をし、登録を受けることができます。
例えば、万年筆とボールペンは、組物「一組の筆記具セット」を構成する物品です。下図のように、万年筆とボールペンのクリップ部分が同じような造形で表されていることにより、組物全体で統一があると認められる場合、この万年筆とボールペンは、組物として一意匠で出願し、意匠登録を受けることができます。
これにより、システムデザインやセット物のデザインを、適切に権利化することができます。
[万年筆の意匠] [ボールペンの意匠] → 「一組の筆記具セット」
Fグループ(事務用品及び販売用品)
(イノックスクレム エス エー 登録意匠第1273721号)
(6)”HARAKENZO more ” は事務用品業界の皆様を応援します
事務用品業界では、事務用品としての機能はもちろんですが、デザイン面に優れた事務用品については、仕事に対するモチベーションがあがり、作業効率があがる効果も期待できます。一方、知的財産で適切に保護されていないと、そのデザインをマネた海賊版が簡単に流通してしまい、せっかくのデザイン開発の労力が無駄になってしまう可能性もございます。
そのため、皆様が知的財産権の問題を意識せざるを得ない状況に直面することもあろうかと思います。”HARAKENZO more ”では、事務用品業界の皆様の知的財産保護に全力を尽くす体制を整えております。どうぞお気軽にご相談ください。