意匠法大幅改正

メタバース上で画像意匠として保護される画像について

メタバース上で画像意匠として保護される画像とは

意匠法の保護対象となる画像

意匠法2条1項は、意匠法の保護対象となる画像は以下のいずれかに該当するものに限ると規定。

(1)機器の操作の用に供される画像(以下、「操作画像」という。)

(2)機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(以下、「表示画像」という。)

メタバース上の画像意匠は、物品等から離れた画像それ自体を保護対象としていることから、メタバース上で用いられる画像についても上記のいずれかに該当すれば保護対象となり得ます。但し、以下の画像については意匠法の保護対象には該当しないことが今般、意匠審査基準改定版に明記されました。

画像意匠の保護対象ではないもの

1.(仮想空間内で表される)例えば電化製品の3Dオブジェクトなどの仮想的なもの

⇒画像デザインによって機器や機器に関連するサービス等の付加価値を向上させるものに限って権利の客体とすることが適切。仮想空間上の製品は現実の機器の付加価値向上に資さない。

2.単に画像を表示する機能のみによって表示された画像

⇒コンテンツ画像や装飾画像は従来より画像意匠の対象ではないため。

 

参考:特許庁審査基準令和5年12月改訂版

 

メタバース上で利用され得る意匠の登録事例

仮想空間用情報表示画像

意匠登録1738399号

株式会社NTTドコモ

【画像図】

本画像は、仮想空間内で、様々な情報を確認する他、ユーザー同士でコミュニケーションを図るためのアプリに係る画像である。本画像における映像等表示部は、空間内に配されて、映像や画像等のコンテンツを表示するものである。

音声対話システム用画像

意匠登録第1749627号

国立大学法人名古屋工業大学

【画像図】

本画像は、双方向コミュニケーションが可能な音声対話システムにおいて表示される画像である。

感情表示用画像

意匠登録第1750531号

川本 貴則 成家 幸樹

【画像図】

【変化を開始した状態を示す画像図】

【「喜」表現を示すべく変化した画像図】

本画像は感情表示用画像であって、「使用状態の一例を示す参考画像図」に示すように、拡張現実や仮想空間上で人物やアバター(以下、人物等)間のコミュニケーションを促進するべく、人物等の感情を表現するための画像である。

 

メタバース上の模倣品対策

意匠権

現実の商品のデザインを模した仮想オブジェクトが仮想空間内で無断で作成、販売等されたとしても、物品と仮想オブジェクト(3Dオブジェクト)とは物品の用途・機能が異なることが多く、類似の意匠に当たらず、意匠権侵害は成立しないことが多いと考えられる。

例)自動車≠ 仮想空間で使用する自動車

商標権

現実の商品で商標登録をしても、商品等が非類似となるため、メタバース上での模倣品には権利行使できない。9類や42類での商標取得が必要。

例)靴≠ 仮想空間で販売される靴

※新規に仮想空間の商品についても商品の指定(例えば、第9類;コンピュータプログラムなど)を行う対策が考えられる。但し、不使用による取消に注意。

不競法

商品形態模倣について、メタバース上でも不正競争行為と認定し権利行使可能となった。(令和5年改正法)

商品等表示に関する不正競争は、商標のような商品・役務の類似性までは問題とならないため、使用された商品等表示に類似性があれば、不正競争行為に該当し得るとされる。(不競法第2条1項1号、2号)

著作権

「実用品」については仮想空間内でどこまでが著作物と認められるかには議論がある。

※仮想空間内で「実用品」という設定で創作されるコンテンツなどは、著作物性が肯定される可能性がある。(ドラえもんの「タイムマシン」等)

 

参考:令和5年9月29日第23回意匠審査基準ワーキンググループメタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理

 

関連記事

TOP