目次
1.はじめに
大韓民国にて意匠権の権利保護を行う際に役立つ情報を、以下に掲載しております。
本ページが、お客様が海外で知財保護を行う上での一助となれば幸いです。ぜひお役立てください。
2.保護対象と存続期間、審査期間
(1)「意匠」の定義
韓国デザイン保護法では、保護対象を「物品(物品の部分及び文字体を含む。)の形状、模様、色彩又はこれらを結合したもので、視覚を通じて美感を起こさせるもの」と規定しています。文字体(タイプフェイス)が物品の定義に含まれ、画像デザインの保護についても制約が少なく、日本より保護可能な「意匠」の範囲が広くなっています。
また、新規性や創作非容易性等が日本同様に登録要件となっていますが、出願される物品の分類の一部においては、一部審査登録出願として、登録審査段階においては一部の登録要件が判断されません。
(2) 存続期間
意匠出願日から20年間保護されます。
(3) 審査期間
平均4~6か月
3.新規性と創作非容易性、新規性喪失の例外
(1) 新規性
(i) 出願前に国内または国外において公知であり、もしくは公然に実施された意匠
(ii) 出願前に国内または国外において頒布された刊行物に掲載され、もしくは電気通信回線を通じて公衆が利用できるようになった意匠、
および(iii) 公知である意匠に類似する意匠、は新規性欠如により登録されません。
(2) 創作非容易性
意匠登録出願前に、その意匠が属する分野において、通常の知識を有する者が、国内又は国外において広く知られた形状、模様、色彩又はこれらの結合により、容易に創作することができる意匠は、登録を受けることができません。
(3) 新規性喪失の例外
新規性を喪失したデザインであっても、その日から12ヶ月以内に出願した場合には、意匠出願、登録が可能です。
4.多意匠一出願
同じ物品類区分に属する物品を100個まで複数意匠登録出願することが可能です。
5.デザイン一部審査登録出願
韓国では、ロカルノ協定に基づく1~31類の国際意匠分類が採用されていますが、そのうち、第2類(衣類及びファッション雑貨用品)、第5類(繊維製品等)、第19類(文房具、事務用品等)については、一部の登録要件のみ(工業上の利用可能性、容易創作性等)、審査されます。*
尚、第三者より、情報と証拠の提供があった場合には、通常の出願と同様に実体審査が行われ、拒絶理由通知が出される可能性があります。
また、一部審査登録出願による意匠権が設定された場合は設定登録の日から公告日後3ヶ月以内に、何人も異議申立をすることができます。
*2020年12月以降、上記の3種類に加えて、第1類(食料品)、第3類(身の回り品)、第9類(包装容器)、第11類(装飾用品)に拡大して一部審査制度が適用されることになりました。なお、2019年12月から、韓国特許庁はデザインの一部審査出願に関しては、出願日から10日以内に登録可能となる迅速審査を実施しており、ライフサイクルが短く、模倣され易い物品について迅速な権利確保及び活用に寄与することが期待されます。
6.全体意匠と部分意匠
韓国にも日本と同様に部分意匠制度があります。
7.画像意匠
韓国において、画像意匠は保護され得ます。
また、日本と異なり機能や操作との関連性も求められないことから、装飾目的の画像であっても保護対象となり得ます。
さらには、流通時の一体性要件も不要なので、組み込み画像のみならず、ゲームソフト・WEBページ・壁紙の画像なども登録することが出来ます。
2021年10月21日に改正デザイン保護法が施行
韓国のデザイン保護法では、物品性が要求されるため、従来、画像デザイン自体は保護対象とはなっていませんでしたが、日本の意匠法改正を受け、韓国でも画像デザインの物品性緩和に関する議論が活発になり、意匠出願時に画像デザインの物品性を要求しないことを盛り込んだデザイン保護法改正案が2021年3月24日に国会の本会議で議決され、4月20日に交付されました。
改正法では、デザイン保護法上のデザインの定義を改正し、「画像」を物品と区別してデザイン保護法上の保護対象として明示されました。特に、韓国で物品を指定しない画像意匠を出願する場合、物品を指定する従来の画像意匠では要件とされない「機器の操作に利用される画像」又は「機器の機能が発揮される画像」に限られるため注意が必要です。
[デザイン保護法一部改正法律のうち主要内容抜粋]
デザイン保護法第2条1号のうち「物品の部分及び書体を含む」を「物品の部分,書体,画像を含む」とし,同条に第2条の2を新設する。
2の2.
「画像」とは,デジタル技術または電子的方式により表現される図形・記号等で,機器の操作に利用され,または機能が発揮されるものに限り,画像の部分を含む。
出典:AIPPI(2021)Vol,66 No, 5 [2021 年韓国の最新意匠制度の改正動向 李瓊宣]
8.願書の記載
願書には、デザインの使用目的、操作方法を記載することが出来るので、意匠権の権利範囲を判断するにあたっては、物品の機能・用途が参酌されるものと考えられます。
9.図面について
①6面図と斜視図
デザイン全体形態と創作内容を明確に表現する1以上の図面が必要とされていますが、6面図と斜視図を用いることが一般的とされています。
また、図面には、デザイン創作内容の要点を記載しなければなりません。
②その他の図面
上記①だけでは、そのデザインを十分に表現できないときは、必要に応じて以下の図面を添付しなければなりません。
展開図、断面図、切断部断面図、拡大図
③CG・写真・見本
CGは、データファイルの形式として、JEPG・TIEFが認められ、3Dモデリング図面の使用も可能です。また、モノクロ画像・カラー画像いずれも認められます。
図面に代えて、写真又は見本を提出する際には、デザインが具体的に把握されることが必要です。写真の場合は、背景・陰影等は原則として表れてはいけません。
韓国意匠の特徴
部分意匠の保護 | 画像意匠の保護 | 多意匠一出願 | 実体審査 | 図面 | 写真・CG | ハーグ条約 |
可。 | 可。 | 可。 ロカルノ協定に基づく分類で同じ区分に属する物品は、100個まで複数意匠登録出願できる。 |
有り。 第1、2、3、5、9、11、19類は、一部の登録要件のみを審査。 |
一般的には、6面図+斜視図を推奨。 | CG作成図特有の取扱いはなく、一般的な図面要件との差異は、あまりないと考えられる。 | 加盟。 |
☆日韓意匠法の比較については、韓国支援室のページををご確認ください。