国内意匠制度

「意匠」と「デザイン」 言葉の意味は同じでしょうか

「意匠」と「デザイン」

「意匠」と「デザイン」の言葉の違い

本ページでは、「意匠」と「デザイン」の言葉の違いについて解説します

まず、デザインと意匠のそれぞれの言葉の意味について、簡単にご説明します。

「デザイン」とは?

「デザイン」という言葉を国語辞典で調べると、次のように書かれています。

  1. 建築・工業製品・服飾・商業美術などの分野で、実用面などを考慮して造形作品を意匠すること。「都市を―する」「制服を―する」「インテリア―」
  2. 図案や模様を考案すること。また、そのもの。「家具に―を施す」「商標を―する」
  3. 目的をもって具体的に立案・設計すること。「快適な生活を―する」

「デジタル大辞泉」より

デザインという用語は、一般には装飾、図案などを意味し、英語のdesignの訳語ですが、広く建築などのような造形に関する創作や、設計案などを意味する場合にも用いられます。

デザインとは、「美しさ」や「使いやすさ」などの目的を達成するために創意工夫すること、そして、その創意工夫を反映させた外観や見た目のことを意味します。
外観や機能などをより良いものにするための工夫ともいえます。「美しさ」、「使いやすさ」、「斬新さ」などのような目的が形となって表されたものが「デザイン」であり、実用品であっても、或いは抽象的な構想やイメージであっても、どちらも「デザイン」といえます。

「意匠」とは?

「意匠」という言葉を国語辞典で調べると、次のように書かれています。

  1. 絵画・詩文や催し物などで、工夫をめぐらすこと。趣向。「舞台照明に―を凝らす」
  2. 美術・工芸・工業製品などで、その形・色・模様・配置などについて加える装飾上の工夫。デザイン。

「デジタル大辞泉」より

このように辞書によれば、「デザイン」の意味は広い範囲に及び、「デザイン」の中の1つの関連分野が「意匠」ということができるようです。

「デザイン」の意義

美術作品や工芸品、工業製品などの形状や色、模様について、さまざまに工夫を施したり、より美しく見せたりすることで、モノの価値を高めることができます。

デザインに関する情報は、自然と商品購入の判断に大きく影響します。例えば、商品を購入する時、同じ種類の2つの商品で迷った場合、性能や品質が同じであれば、自分好みのデザインで選ぶでしょう。また、多少値段が高くても、デザインの良さが決め手となって、商品を選ぶことがあるかもしれません。
このように、製品のデザインは、消費者にとって商品購入における重要な要素になっています。

意匠法における「デザイン」

デザインを保護する法律として意匠法があります。意匠法に基づき、意匠出願が特許庁で登録されると得られる権利を意匠権といいます。意匠権は、特許と同じく知的財産権の1つです。

商品のデザインは、需要者の商品選択の基準となり、ビジネス上、商品の売れ行きを左右する重要な要素ですから、優れたデザインを保護し、独占的に製造・販売できるようにして、他者による模倣を排除しようという目的で制定されています。

意匠法は、「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与する(意匠法第1条)」ことを目的としています。
また、「『意匠』とは、物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状、画像(意匠法第2条)」と規定されています。

つまり、意匠権を取得する際の重要な要件の1つに「工業上利用できること」、つまり量産できることがあります。意匠法における意匠は、工業意匠やインダストリアルデザインとも呼ばれています。美術品のような一品制作物など工業によって量産できないものは、意匠制度では保護されません。

意匠登録を受けることができるデザインについて、以下の記事で詳しく解説しています。ご参照ください。
■「こんなものも登録できる!

「デザイン」と「意匠」の違い

「デザイン」と「単なる意匠」は、基本的には同じ意味といえます。しかし、「デザイン」と「意匠法上の意匠」は、意味が違ってきます。
「デザイン」の場合は、抽象的な構想やイメージまでも含み、その言葉によって表現できる対象の範囲が非常に広いのに対して、意匠法で保護される「意匠」は、意匠法により定められた工業製品のデザインである必要がありますので、その範囲は限定されたものになります。

また、単に紙に描かれた絵は、意匠法では意匠とみなされません。物品と一体になったデザインでなければ、意匠法による保護対象となり得ないからです。

本記事では、デザインと意匠法で保護される意匠との違いについてご紹介しました。
ご自身で作成したデザインが意匠法で保護されるかどうか、判断に迷っていらっしゃるのであれば、ぜひ一度、当特許事務所へお問合せください。

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