画像意匠について、創作非容易性が認められた審決の事例をご紹介します。
目次
位置関係の創作非容易性が認められた事例(不服2023-6747)
意匠登録第1769667号(意願2021-20930)「GUI」
本願意匠
引用意匠1
引用意匠2
合議体の判断(抜粋)
(略)十字キーに相当する部分の形状として本願画像部分と同様の態様とした画像は、意匠2に見られるように本願の出願前に広く知られている。
しかしながら、本願画像部分のように、縦長の画像全体の下方左右にRボタン部とLボタン部を配して、Lボタン部の左上に略十字状ボタン部を配した画像は、意匠1及び意匠2の画像の態様から容易に想到できたということはできない。本願画像では、画像内のバーチャルな操作対象であるRボタン部とLボタン部が画像全体の下方左右に配置されているところ、通常の物理的なゲームコントローラーにおいてはRボタン部とLボタン部が人差し指が当たる上部に位置していることが一般的であることを勘案すると、この創作は極めて特異であるというべきである。
コメント
実線部分の個々の形状自体はありふれているが、各実線部分の配置についてその実線部分(ボタン)の機能を考慮したうえで想到容易性が否定されている。(但し、LとRは破線で表されており、意匠に係る物品の説明に各ボタンの機能に係る記載はない。)また、画像意匠の創作非容易性については物理的な物品も先行資料となる点に注意が必要である。
変化する態様も含めて創作非容易性が認められた事例(不服2023-5796)
意匠登録第1753570号(意願2021-18210)「カード情報表示用画像」
本願意匠(画像図)
(変化後を示す画像図)
(各部の名称を示す画像図)
引用意匠1
引用意匠2
引用意匠3
合議体の判断(抜粋)
ユーザーの操作によってクレジットカードの利用額等の情報を含む「情報表示エリア」と、クレジットカードの利用可能額を示す「ゲージ」が切り替わる。また、「変化後を示す画像図」に表されているとおり、「情報表示エリア」は右から左に移動する。
画像を含む意匠において、角丸長方形状である情報表示エリアを有する画像は、意匠1及び意匠3に見られるように本願の出願前に広く知られており、また、長方形状エリアの下方に細横長帯状のゲージを配することも、意匠2及び意匠3に見られるように本願の出願前に広く知られている。しかしながら、本願画像部分のように、細横長帯状のゲージを、「情報表示エリアA」*の左端から「ゲージ」の左端までの長さ:「ゲージ」の横幅:「ゲージ」の右端から「情報表示エリアA」の右端までの長さの比が約2:4:1になるように配した画像は、意匠2及び意匠3の画像の態様から容易に想到できたということはできない。
本願画像部分の「情報表示エリア」は右から左に移動するところ、意匠1の情報表示エリアが右から左に移動するか否かは不明であり、 仮に移動するとしても、移動後の画像が、前記1(5)イで認定した、「変化後を示す画像図」に表された本願画像部分の態様と同様のものであるとは限らない。
したがって、当審における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。
(*「 各部の名称を示す参考図」の「情報表示エリア」)
コメント
実線部分の個々の形状自体及び表示エリアとゲージとの位置関係はありふれているが、表示エリアに対するゲージの具体的位置を詳細に認定し、容易想到性が否定されている。更に、変化後の態様が引用意匠に表れていないとして、創作容易性を否定している。ゲージ部分について権利範囲は狭くなると考えられるが、一見して創作非容易性がないと考えられるような、寄せ集めの意匠であっても出願してみる価値はあると言える。また、画像図のみでは登録可能性が低い場合でも変化する態様に新規性や創作性が認められる場合は変化する画像として積極的に出願すべきである。