国内意匠制度

意匠と商標の違い

意匠と商標の違い

意匠と商標の違いとは?

意匠権も商標権も特許庁が所管する「産業財産権」に含まれます。

意匠権はデザインを保護するものというイメージがあります。一方、商標権でロゴやキャラクターなどの図形や立体的形状のデザインを保護することもできます。

例えば、自動車メーカー「ホンダ」の原動機付自転車である「スーパーカブ」は、発売当初はその新規で独創的なデザインを保護するために意匠登録がされていました。その後、そのデザイン自体がホンダの標章、つまり、ブランドとして定着して著名性を獲得し、立体商標としても保護・登録されることになりました。

また、大塚製薬が販売する清涼飲料水である「アミノバリュー」では、ネーミングである「Amin-Value」の文字について商標権(商標登録第4739252号)が、一方、容器のデザインについて意匠権(意匠登録第1208174号)が取得されています。

このように、一つの製品、使い方であっても、そのデザインを創作として位置付けるのか?標識として位置付けるのか?で、保護の方法を戦略的に使い分けることができます。

以下、意匠と商標の違いについて詳しく見ていきます。

意匠と商標の違い①:法律の目的

意匠法の目的

意匠法は、「意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする」(意匠法第1条)と規定しています。

意匠と産業の発達の関係についてはいくつかの態様が考えられ、第一に優れた意匠を商品に応用することによって需要が増加し、産業の興隆が実現される場合があります。第二に優れた意匠が同時に技術的に優れている場合もあり、技術の進歩ひいては産業の発達が意匠そのものによって直接に実現される場合があります。

商標法の目的

商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」(商標法第1条)と規定しています。

商標を使用する者は商品や役務(注)の提供に係る物品等に一定の商標を継続的に使用することによって業務上の信用を獲得しますが、この信用は有形の財産と同様に経済的価値を有します。
(注)商標法では、他人のために提供するサービスのことを「役務(えきむ)」といいます。

したがって、商品の製造業者若しくは販売業者又は役務の提供者は絶えず自己の商品又は役務に使用される商標に対し、細心の注意を払い、不正な競業者が自己の商標と紛らわしい商標を使用して自己の商品又は役務と混同を生ぜしめるような行為(例えば、周知・著名商標の出所表示機能を希釈化させたり、その信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるような行為)を排除しようとします。そのような不正な競業者の不正な行為に対する法規として商標法が存在し、商標権を設定するという国家の行政処分を媒介として商標を保護します。

また、商標を保護することは、一定の商標を使用した商品又は役務は必ず一定の出所から提供されるということを確保することになり、したがって、一定の商標を使用した商品又は役務は一定の出所から提供されるという取引秩序を維持することは、消費者等の利益を保護することになると同時に、商品及び役務の取引秩序の維持ということを通じて産業の発達にも貢献することとなります。

意匠と商標の違い②:保護対象

意匠法の保護対象

意匠法第2条第1項において、
「意匠」とは、

  • 物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状等」といいます)
  • 建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等
  • 又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。<略>)

であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの
と定義しています。

意匠法は独創的で美感を有する工業製品等の形状等(デザイン)そのものを保護の対象とします。

商標法の保護対象

商標法第2条第1項において、
「商標」とは、
「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」であって、

  • ①業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの、
  • ②業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの

と定義しています。

商標法は自己と他人の商品・サービスを区別するために使用するマーク(文字、図形など)を保護の対象とします。

商標にはさまざまなタイプがあり、商標法の改正により、平成27年4月から、新しいタイプの商標として、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標が登録可能となりました。

意匠と商標の違い③:登録要件

商標登録と意匠登録が別々の制度であることに起因して、登録要件にも多くの違いがありますが、実務的に重要な相違点は「新規性」の要件です。

意匠登録の場合は意匠登録の要件として新規性が必要となります。つまり、新しい意匠でないと意匠登録を受けることができません。ですので、一定の例外はありますが、既に発売してしまった商品について意匠登録はできなくなります。この点は、意匠登録を検討される場合には注意が必要です。

一方、商標登録の場合は商標登録の要件として特別顕著性(識別性)が必要となりますが、新規性の要件はありません。したがって、自分がある商標を使用していて新規性のない商標であっても、後から他人に同じような商標を登録されてしまう危険性がある点に注意が必要です。

意匠の登録要件

意匠の主な登録要件は以下のとおりです。

① 工業上利用可能性(意匠法第3条第1項柱書)

意匠法は、産業の発達を目的に定められている制度ですので、意匠登録を受けるためには、その意匠が工業上利用できるものでなければなりません。具体的には以下のとおりです。

  • 意匠を構成するものであること
  • 意匠が具体的なものであること
  • 工業上利用することができるものであること

② 新規性(意匠法第3条第1項)

意匠登録を受けるためには、意匠登録出願前に出願の意匠と同一又は類似の意匠が日本国内又は外国において公に知られていないこと、すなわち、新規性を備えている必要があります。出願前に公に知られている意匠や、刊行物(意匠公報、書籍、雑誌、新聞、カタログ、パンフレットなど)、インターネット上に掲載されている意匠や、それらに類似する意匠は、新規性がないものとされます。

出願前に意匠を公開してしまった場合には、出願と同時に「新規性喪失の例外規定」の適用を受ける手続きが必要です(※意匠の公開から1年以内に出願することが必要です)。

③ 創作非容易性(意匠法第3条第2項)

その意匠の分野について通常の知識を有する者(当業者)が容易に創作できる意匠に対し、独占権(意匠権)を与えることは、産業の発達の妨げとなる可能性があります。よって、当業者であれば容易に創作できる意匠は、意匠登録を受けることができません。

④ 意匠登録を受けることができない意匠(意匠法第5条)

各国元首の像や国旗、皇室の菊花紋章や外国の王室の紋章などを用いたもののように、公序良俗に反するもの及び他人の業務に係る物品、建築物又は画像と混同を生ずるおそれのあるものは、公益的な見地から意匠登録を受けることができません。

また、物品の機能を確保するために必然的に定まる形状のみからなる意匠、建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなる意匠、又は画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる意匠は、特許法・実用新案法によって保護されるべき技術的思想に当たるため、意匠法による保護対象から除外されています。

⑤ 一意匠一出願(意匠法第7条)

意匠登録出願は、原則として意匠ごとにしなければならず、また、意匠は物品等ごとに成立するため、物品等が異なるものは別々に出願する必要があります。

例外として、「一組の飲食用具セット」などのように、同時に使用される二以上の物品については組物の意匠として、また、複数の物品や建築物、画像から構成される内装のデザインについては内装の意匠として、一つの意匠として出願できる場合があります。

⑥先願(意匠法第9条)

同一又は類似の意匠について二以上の出願があった場合には、最先の意匠登録出願人の出願(同日のものはいずれか一方)の意匠のみが意匠登録を受けることができます。

商標の登録要件

以下の①~③に該当する商標は、登録を受けることができません。

①自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの(商標法第3条)

商標は、自己と他人の商品・役務とを区別するために用いられるものであるため、以下に該当する商標は登録を受けることができません。

  1. 商品又は役務の普通名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第1号)
  2. 商品又は役務について慣用されている商標(商標法第3条第1項第2号)
  3. 単に商品の産地、販売地、品質、その他の特徴等又は役務の提供の場所、質、その他の特徴等のみを表示する商標(商標法第3条第1項第3号)
  4. ありふれた氏又は名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第4号)
  5. 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章(マーク)のみからなる商標(商標法第3条第1項第5号)
  6. その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)

②公共の機関のマークと紛らわしい等公益性に反するもの

公益的に使用されている標識と紛らわしい商標や需要者の利益を害するおそれのある商標は登録を受けることができません。

③他人の登録商標や周知・著名商標等と紛らわしいもの

他人の使用する商標、他人の氏名・名称等と紛らわしい商標は登録を受けることはできません。

意匠と商標の違い④:存続期間

意匠権の存続期間

意匠権の存続期間は意匠登録出願の日から25年であり(意匠法第21条)、権利の更新をすることができません。

同じ工業製品でも、デザインが斬新で、簡単に創作することができないようなものであれば、そのようなデザインの創作を保護しようとするのが意匠制度であるところ、創作された当初は、斬新なデザインでも、時間とともに斬新さが失われていくため、意匠登録出願の日から25年で権利の存続期間が終了することとされています。

商標権の存続期間

商標権の存続期間は設定登録の日から10年です(商標法第19条)。ただし、商標は、事業者の営業活動によって蓄積された信用を保護することを目的としていることから、その商標の使用が続く限り、商標権を存続させることとしており、存続期間の更新登録の申請(商標法第20条)によって、10年の存続期間を何度でも更新することができ、半永久的に商標権を存続させることができます。

キャラクターやロゴマークは意匠と商標のどちらで保護すべき?

キャラクターを例にしますと、あるキャラクターを、会社のマスコットキャラクターして使用するのであれば、その会社が提供している商品・サービスを指定商品・指定役務としてキャラクターを商標登録するのが良いと考えられます。

一方、あるキャラクターの人形を製造販売するにあたり、その人形のデザインを守りたいのであれば、物品を「人形」として意匠登録をするのが適切であると考えられます。意匠権の審査では「新規性」が重視されるため、できれば販売前に登録するのが望ましいです。

キャラクターによっては意匠権と商標権(人形の立体的な形状を「立体商標」として登録)の両方で保護できる場合もあります。より強固にキャラクターの権利を守りたいときは、双方の出願を検討してみてください。

商標登録や意匠登録をご検討中の方は、費用のお見積りを含め、当所までお気軽にご相談ください。当所では、特徴的なデザインの保護、及び、大切な商品のブランド力と価値の保護について、確かなお手伝いをさせていただきます。

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