国内意匠制度

イラストの意匠権を取得するには?

イラストデザインの意匠による保護について

(1) 意匠の保護対象

(1-1) イラストのデザインそのものは意匠権を取得することができません

意匠法で保護される意匠とは、具体的な物品に施した模様や、具体的な物品の形状である必要があります。具体的な物品とは、例えば、工場等で生産されるマグカップや、ティーシャツ、ノート等の製品のことです。イラストのデザインそのものについては、具体的な製品に結びついていないため、意匠権を取得することができません。

(1-2) 著作権・商標権との違い

このように規定されているのは、意匠法が、産業の発展を目的とした法律であるためです。意匠法第1条には、「この法律は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。」と記載されています。

例えば、工場で大量生産される製品のデザインを意匠権で保護することにより、意匠権者である企業は、新規で独創的なイラストのついた商品を独占的に製造・販売することができます。素敵なデザインには顧客吸引力があるため、各会社はこぞって新しいデザインのついた製品を開発して売り上げを伸ばそうとします。その結果、産業が発展します。

けれども、具体的な製品に結びついていないイラストを保護しても、産業を大きく発展させることはありません。このようなイラストは、産業界で商品として販売される製品につけるものではなく、個人が鑑賞して楽しむ芸術的な意味合いが強いため、下記の著作権によって保護されます。

(著作権)

自分で創作したイラストや美術品等の著作物については、著作権で保護されます。著作権を取得するには、意匠権と違い、特許庁への手続きは不要です。著作権は創作した時に自動的に発生し、著作者の死後70年まで存続します。

しかしながら、具体的な製品に結びついているイラスト、例えば、ノートの表紙にプリントされたイラスト等の場合、当該ノートは、思想や感情を創作的に表現した美術等の範囲に属さないため、著作物と認められる可能性は低く、ノートの表紙にプリントされたイラストについて、著作権の保護を受けるのは困難です。このような場合は、意匠権による保護を考えるべきです。

意匠権と著作権の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

・「意匠権と著作権との違いについて解説します

(商標権)

また、自社で販売する商品の出所等を示すマークとしてイラストを使用する場合、当該イラストはロゴマークの商標と認められるため、商標権で保護されます。

イラストのロゴマークについて商標登録を受けようとする場合、その商標を使用する商品・サービスを指定する必要があります。商標権の効力は、他人が登録商標と同一または類似の商標を、同一または類似の商品・サービスに使用するときに及びます。

例えば、ティーシャツを指定商品とした場合、商標と同じイラストをプリントしたマグカップには商標権の効力は及ばないため、当該マグカップの製造や販売を差し止めることはできません。しかし、ティーシャツと類似する商品、例えば、タンクトップであれば、商標権に基づいて、差止・損害倍意匠請求が可能です。

商標登録には、新規性の要件は不要ですので、現在使用して公知になっている商標でも出願することができます。また、商標権は、更新を繰り返すことにより、半永久的に存続することができます。ただし、登録したイラストのロゴマークを長期間使用していない場合、商標権が取り消される場合があります。

意匠権と商標権の違いについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。

・「意匠と商標の違い

(1-3) イラストを付けた商品は意匠権を取得できます

それでは、イラストについて、著作権や商標権ではなく、意匠権を取得するにはどの様にしたらよいでしょうか。以下では、イラストについて効果的に権利を取得する方法について紹介します。

イラストそのものについては、意匠権を取得することができませんが、例えば、イラストを模様として付けたマグカップや、ティーシャツ、ノート等は、意匠登録することができます。この場合、意匠に係る物品を、それぞれ、マグカップや、ティーシャツ、ノートとして、意匠出願する必要があります。意匠権の効力は、同一・類似する意匠を同一・類似する物品に適用した場合に及ぶからです。

出願する際には、イラストの模様がついたマグカップについて、また、マグカップと同じイラスト(異なるイラストでも構いません)の模様がついたティーシャツについて、また、イラストのついたノートについて別個に意匠出願し、別個の意匠権を取得します(複数意匠一括出願を除く)。

例えば、ティーシャツを意匠に係る物品とした場合、同じイラストをプリントしたスプーンやお皿には意匠権の効力は及ばないため、当該スプーンやお皿の製造や販売を差し止めることはできません。しかし、ティーシャツと類似する物品、例えば、セーターやブラウス等であれば、意匠権に基づいて、差止・損害倍意匠請求が可能です。

このように、マグカップ等の具体的な商品と結び付けて意匠出願することにより、イラストについても意匠法の保護対象とすることが可能です。

イラストについて意匠権を取得すると、意匠権の効力は類似する意匠にも及びます。また、他人の知的財産権を侵害する心配がなくなるというメリットもあります。意匠権の存続期間は出願日から25年間です。

イラストがティーシャツの模様として登録された事例(イラストそのものは意匠登録することができない)

(2) 画像の保護対象

(2-1) スマホ画面に表示される画像にイラストを使うとき、イラストの画像そのものは、意匠法によって保護される可能性があります

意匠法の改正によって、イラストの画像は意匠法の新しい保護対象となり、イラストの画像そのものについて意匠登録することができるようになりました。物品と離れて保護を受けることができるイラストの画像は、下記の通りです。

① 機器の操作の用に供される画像(操作画像)
② 機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)

操作画像の例として、アプリを起動するための操作に用いられるアイコンや、アプリの設定画面に表示される設定用の画像等があります。
表示画像の例として、時刻を表示する機能を発揮した結果、現在の時刻を表示するイラストの画像等があります。

イラストの画像そのものがアイコン用画像として登録された例。イラストの画像そのものがユーザに情報を提供する機能に用いる情報表示用画像として登録された例

これらの画像のイラストは、通常のイラストのように、具体的な物品に結びつけて出願する必要はありません。
出願の際には、画像のイラストの用途を、願書の「意匠に係る物品」の欄に記載します。例えば、情報表示用画像、コンテンツ視聴操作用画像、数値入力用画像といった、用途の内容を記載します。

なお、上記に該当しない事例として、映画やゲームのコンテンツの画像、デスクトップの壁紙等の画像があります。これらの画像は操作画像や表示画像ではないため、意匠法の保護対象ではなく、意匠登録を受けることができません。

(2-2) 変化する画像

変化する画像のイラストについても、所定の要件を満たせば、一意匠として意匠権を取得することができます。

購入可能なアイテムが選択されることをもたらす動作(例えば、クリック、ドラッグ、タップなど)に応答して、変化した状態を示す画像図に表された画像に遷移する画像として登録された例

(3) イラストの意匠のその他の要件

以下、イラストの意匠のその他の要件について説明します。イラストのデザインについて意匠登録を受けるためには、新規性(意匠法第3条第1項)、創作非容易性(同条第2項)、その他の意匠登録要件を満たす必要があります。

意匠出願を予定している場合、出願が完了するまでは、その意匠や意匠を写した写真
をネットや本などに公開しないようご注意ください。また、イラストがついた商品を製造販売する前に、意匠出願を完了する必要があります。出願前にイラストを公開すると、新規性・創作非容易性が認められず、意匠登録を受けることができなくなります。

また、公知の形状等に基づいて容易に創作できた意匠についても登録を受けることができません(創作非容易性)。

当特許事務所は、多くの大企業等のお客様から信頼され、国内外の意匠出願を多数行っている大規模の国際特許事務所です。イラストのデザインの意匠出願をはじめ、意匠調査、料金・費用等についても、お気軽にご質問、ご相談ください。経験豊富な意匠専門の弁理士が解説いたします。

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