目次
意匠の出願図面と図の作成
(1) 意匠図面とは?
この記事では、「意匠図面」についての知恵と情報をメインに、皆様に詳細にお伝えいたします。
(1-1) 設計図面と意匠図面
これから製造・販売しようとする製品については、まず設計図面を作成し、その設計図面通りに製品を製造します。一方、その製品にかかる意匠について意匠登録したい場合には、意匠図面を作成し、意匠図面を添付した願書を特許庁に出願します。設計図面と意匠図面、どちらの図面も、原則、JIS規格に基づいて作成します。
それでは、意匠図面は設計図面と同じ図面でよいでしょうか。何か違うところはあるのでしょうか。
言うまでもなく、設計図は、製品を正確に製造するために作成される図面であり、製品の各部の寸法や仕上げの状態などの情報を、製造関係者にわかりやすく伝えるための図面です。設計図がこのように正確に作成されているなら、設計図面をそのまま意匠図面に利用してもよいように思いますね。
ところが、意匠図面は、意匠登録を受けるために特許庁の審査官によって審査され、登録された場合、意匠権の権利範囲を示す権利証的な役目を担うものです。そのため、意匠図面を作成する際には、設計図面にはない、留意すべき事項が多数あります。したがって、意匠図面を作成する際には、下記に述べる事項に留意した上で、設計図面等に変更を加え、意匠図面を作成します。
(1-2) 審査の対象
上述したように、意匠図面は、特許庁の審査官によって審査されます。意匠図面はJIS規格のほか、特許庁発行の「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」(以後「手引き」という)や、意匠法施行規則等によって、作成方法が細かく定められています。
したがって、特許庁の定める方法に従って、意匠図面を作成する必要があります。意匠図面がこの方法で作成されていない場合、審査において、意匠出願が拒絶される場合があります。
例えば、意匠図面は、製品が立体であっても基本、6方向から見た面・外観を示す図(六面図)で表します。
また、意匠図面は中心線を記入したり、断面線を特定する文字等を図に重ねて記入してはいけません。中心線や文字等が、その製品の模様なのか、あるいは中心線や断面線を特定する文字等なのか紛らわしくなるためです。
余談ですが、以前は図面の審査はかなり厳しく、拒絶される意匠出願のうち、図面の不整合等が原因で拒絶されるものが大変多くありました。意匠出願で、まず難しいのは図面の作成、といってよいほど審査は厳しかったのですが、近年、以前と比較してかなり緩やかになっています。
(1-3) 意匠権の権利証
また、意匠図面は、意匠登録された後、権利証的な役目を担います。例えば、土地の権利証の場合、権利者が所有する土地の面積や、他人の土地との境界がわかるように記載されていますね。意匠図面も、願書の記載事項と合わせて意匠権の権利範囲を示します。
したがって、六面図の各図の整合性がとれていなくて各図に矛盾があったり、図に表れていない部分があったり、六面図から特定できる立体的な製品のデザインが、こういうデザインかもしれないが、こうかもしれない等、一つのデザインを導き出すことができない場合、権利範囲に疑義が生じます。
また部分意匠の場合、例えば、破線と実線の区別が不明瞭、または各図に不整合等がある場合、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界がはっきりしなくなります。これでは意匠権の権利範囲が不明瞭となりますね。
(1-4) 意匠のポイントをアピール
意匠登録を受けようとする製品の場合、その製品に特有の形状など、今までにない新規な形状があるかと思います。もし、その意匠のポイントといえる部分が目立たず、せっかくデザイナーが力を入れて創作した部分が埋もれてしまうような図面であれば、がっかりですね。
そのような製品の創作ポイントを、審査官や競合他社にアピールできる図面が、より良い意匠図面であり、審査・権利行使にも有利な図面であるといえると思います。当所では、このような意匠のポイントを十分に理解し、意匠のポイントをアピールできる図面を、経験豊かなスタッフにより作成いたします。
(2) 必要図面と参考図面
意匠の構成要素のみを描いた図であって、物品の形状を理解するために必要な図面を必要図、形状等の説明のための図や使用状態図等であって、意匠を構成しない線等を描き加えた図を参考図といいます。参考図は、【○○参考図】等と表示し、必要図と区別します。
参考図に、必要図と異なる形状が表されている場合、当該形状は意匠の権利範囲に含まれないことにご留意ください。
(3) 六面図 (正投影図の第三角法による)
各図同一縮尺で作成し、正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図のうち、意匠登録を受けようとする意匠を明確に表すために十分な数の図を作成します。
(3-1) 第三角法
2つの投影面を直行させて空間を作り、それぞれを第1角から第4角の4つの空間に分割し、第3角に物体を置いて作図する方法を第三角法といいます。
(3-2) 六面図
(4) 断面図
断面図によって、六面図等の外観図では表しにくい製品の内部の構造を表すことができます。意匠では、外部から視認できない物品の内部の形状については権利化できないため、主に六面図では現れない窪みや孔の形状等を示すために用います。
(5) 写真・CG
例えば、ぬいぐるみなどのように、表面の質感が図面では表しにくい物品については、物品の写真やCGを提出することができます。この場合、六面図と同様に、6方向からみた写真やCGを同一縮尺で作成します。
当所のグラフィックデザイン部で意匠出願用の写真撮影が可能です。意匠出願に最適な撮影・加工をいたします。
なお、写真やCGで意匠出願した場合、線図より意匠の権利範囲が狭くなる可能性がある点、ご了承ください。
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