外国の意匠制度

海外出願の主なルート

1.直接出願

意匠権を取得したい国ごとに直接出願することができます。

直接出願の場合、出願する国ごとに、その国の言語、出願様式で出願書類を作成しなくてはならないこと、出願後の管理(住所変更等の手続き、更新手続き等)も各国ごとにする必要がありますので、手間がかかるというデメリットがあります。

また、複数の国に意匠出願をする場合、出願後すぐに公開される国や地域(EU)に出願する場合はそこで新規性を喪失してしまうため、優先権の主張を前提に出願の計画を立てることが必要です。

2.ハーグ協定による国際意匠出願

ハーグ(ヘーグ)協定とは、各国別に発生する出願手続きを一元化し、国際事務局への一つの出願手続で、指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国際出願・登録システムです。

≪ メリット ≫

英語、フランス語、スペイン語から出願人が選択した単一の言語で出願できるため翻訳の負担を軽減できます。マドリッド協定の議定書による国際商標出願(以下、「マドプロ出願」という。)と同様、現地代理人を介して出願する必要がないため、コストを抑えることができます*1。無審査国であれば国際公表から6カ月又は12ヶ月までに登録、実体審査国であれば遅くとも12か月で審査結果(登録又は拒絶)が出ます。また一括して登録の更新が可能であるため、更新管理が行いやすくなります。

*1 但し、拒絶通報に応答する場合は現地代理人を指定する必要があります。

特許の国際出願(PCT)のように、国内移行手続きをする必要がなく、商標のマドプロ出願の様に、日本の出願を基礎とする必要がない点でも、手続きの簡略化が図られています。

≪ デメリット ≫

日本語で出願することができません。原則、国際登録の日から6月後(国により延長可、日本は最長30月*2)に国際公報で公表されるため、登録の可否にかかわらず、意匠が公表されてしまいます。この際、拒絶された願書の内容のみならず拒絶理由や引例となった類似先行意匠の内容も公表されるため、意匠出願の戦略上、大きなデメリットとなります(他方、日本出願では原則として登録になった意匠しか公開されません)。日本出願と異なり、秘密意匠制度(登録から最長3年間意匠を非公開)もありません。

*2 指定国の中に公表の延長を認めない国が含まれている場合は、当該国の指定を取下げない限り公表の延長は認められません。

ハーグ意匠出願について詳しくはこちらをご覧ください。

3.欧州共同体意匠制度による意匠出願

欧州共同体意匠制度に基づく出願を行うことで、一つの出願で欧州共同体全加盟国における権利を取得することができます。

権利が一元化されるため、登録が取り消された場合には欧州共同体全体について効力が失われる、一元化された権利を国別に譲渡することはできないというデメリットも存在しますが、国ごとに直接出願するよりも費用面で大幅に有利であり、更新管理等も行いやすくなるというメリットがあります。

欧州共同体意匠制度について詳しくはこちらをご覧ください。

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