目次
意匠権と著作権の違いについて
デザイン(意匠)も著作物も、共に人間により創作されるものです。創作物に関わる意匠権や著作権について、両者で異なる点とはいったい何でしょうか。本記事では、法律における両者の違いについて解説します。
まず、意匠権と著作権のそれぞれについて簡潔に説明します。
意匠権
- 保護対象:意匠
物品(物品の部分を含む)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状等」)
建築物(建築物の部分を含む。)の形状等
又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。)
であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの(意匠法第2条第1項) - 保護期間:出願日から最長25年
- 権利の発生時期:設定の登録の日
- コスト:特許庁への出願費用 1件16,000円、特許庁への登録費用(1年分) 1件8,500円+(特許事務所等に依頼する場合)代理人の費用
著作権
- 保護対象:著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(著作権法第2条第1項第1号)
- 保護期間:原則、著作者の死後70年を経過するまで
(団体名義の著作物、映画の著作物は公表後70年間) - 権利の発生時期:創作時点
- コスト:無料(登録制度等利用の場合を除く)
意匠権と著作権の違いについて
両者の違いを、各観点から説明します。
目的
意匠法は、新しく創作した意匠を創作者の財産として保護し、その利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、「産業の発達」に寄与することを目的としています。
一方、著作権法は、創作された著作物に関して、その公正な利用に留意しつつ、著作者の権利の保護を図り、「文化の発展」に寄与することを目的としています。
保護対象
意匠法で保護の対象となっているものは、「出願前にそれ(出願予定の意匠)と同⼀⼜は類似の意匠が存在しない(新規性を有する)」、かつ「工業上利⽤できる」ものに限られています。そのため、意匠権を取るためには、出願予定の意匠が新規性を有し、かつ量産可能なデザインでなければいけません。
一方、著作権法で保護の対象となっているものは、「⽂芸、学術、美術⼜は⾳楽の範囲に属するもの」である必要があります。具体的に、「著作物」であるためには、以下の事項をすべて満たす必要があります。
- 「思想又は感情」を表現したものであること → 単なるデータが除かれます。
- 思想又は感情を「創作的」に表現したものであること → 他人の作品の単なる模倣や単なる事実が除かれます。
- 思想又は感情を「表現したもの」であること → アイデア等が除かれます。
- 「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するものであること → 工業製品等が除かれます。
具体的には、小説、音楽、美術、映画、コンピュータ・プログラム等が、著作権法上、著作物の例示として挙げられます。
例えば、1点ものの製品など、物品のデザインであっても工業的に量産できないものは意匠法の対象とはなりません。また、機械等の工業デザインについては、著作権法の対象になりません。
権利の範囲
意匠権の効⼒が及ぶのは、「登録意匠及びこれに類似する意匠」とされています。つまり真似して作られたものであろうと偶然にできたものであろうと、自身が出願した意匠に類似していれば、効⼒の範囲に⼊ります。
一方、他人の著作権の効力の範囲に入っていても、偶然にその著作物と同一・類似のものを創作した場合は、権利行使を受けることはありません。偶然ではなく、既存の著作物を参考に自身が創作した場合は、他人から著作権の行使を受けます(すなわち「依拠性」が必要となります)。
手続および費用
意匠法で保護を受けるには、所定の形式に従って特許庁に出願し、登録を得なければなりません。出願から登録までの手続の費⽤もかかります。また、事務所等の代理人に手続を依頼する場合は、代理人への料金が別途発生します。
⼀⽅、著作権法での保護には、出願や登録のための手続は不要です。著作権は創作と同時に発⽣します。また、出願や登録が不要であるため、手続に関する費用はかかりません。
得られるメリット
意匠権を取ることにより、意匠権を取ったデザインの実施(⽣産、使⽤、販売など)を独占でき、権利侵害者に対して差し⽌めや損害賠償を請求することが可能です。また、意匠権は登録後権利内容が公告されるため、権利の帰属や範囲が明確になります。
一方、著作権は登録されないため、著作物に該当するかしないかで争われるケースが多いです。創作物のうち、「意匠」に該当するものは、意匠登録を受けておくことをおすすめします。
なお、著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生します。意匠権とは異なり、登録することによって権利が発生するわけではありません。しかしながら、著作権法上の登録制度はあります。これは、著作物を公表したり、著作権を譲渡したりという事実があった場合にのみ、登録が可能です。
登録制度を利用することにより、著作権に関しての法律事実を公示する、あるいは著作権が移転した場合の取引の安全を確保することができます。
意匠権の権利化・著作権に関する相談は、ぜひ当事務所へお声掛けください!
本記事では、意匠権および著作権の違いについて説明しました。
ご自身のデザインを使用した今後の事業展開によっては、意匠権の権利化を目指した方がよい場合、または著作権に関する検討が必要な場合、いずれにおいても検討が必要な場合とさまざまなケースが考えられます。権利化に関して必要以上に時間・費用をかけずに、適切に権利を取得するためにも、知財の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
創作物の保護に関するお悩みは、当事務所までお気軽にご相談ください!ご相談の内容に応じて、当所の精鋭スタッフがご案内します。
なお、意匠権は、公開されたデザインに関しては登録することができないため、意匠権の取得をご希望のお客様は、商品の公開・発売前にご相談ください。
※本記事では、意匠権および著作権の違いについてご案内しましたが、意匠権と商標権の違いについて別記事でご案内しておりますので、そちらもぜひご覧ください。
・「意匠と商標の違い」