商標の業種別ヒント

IT企業の皆様へ

はじめに

IT技術の発展はめざましく、私たち全員が日々恩恵を受けているといっても過言ではありません。IT業界の市場規模は年々拡大しており、2014~2019年の年間平均成長率は1.1%、又2019年における国内IT市場に通信サービス事業を加えた国内ICT市場の規模は25兆5375億円と予想もされております。

それだけの規模であることから、多数の商品やサービスに何らかの「名称」を用い、管理していらっしゃるかと思います。そしてIT技術の発展により、私たちはその「名称」をいつでもどこでも見ることが可能になりました。

事業を進めるにあたり、自社製品・サービスの名称を商標権で保護することで、その「名称」を用いた業務上の信用の保護を図ることができるだけでなく、併せて消費者の利益、つまりある商品やサービスに触れたとき、それらは誰が製造又は提供したものなのか、それらの品質はどれほどかが、需要者にとって明瞭になる効果があります。

IT企業の皆様には、商標登録を行う重要性をお知り頂き、その上でこのページをご活用いただけましたら幸いです。

IT業界の指定商品/役務について

IT業界は、ハードウェア業界・ソフトウェア業界・ネット業界・情報処理サービス業界と細かく4つの業界に分類されます。以下、上記業界ごとに商標が用いられる可能性がある商品/役務の例を紹介していきたいと思います。

  • ハードウェア業界
    第9類:「携帯電話機」、「スマートフォン」、「ノートブック型コンピュータ」、「蓄電池」、「半導体」等
    第42類:「コンピュータハードウエアの設計及び開発に関する助言」、「情報技術(IT)に関する助言」等
  • ソフトウェア業界
    第9類:「ダウンロード可能なコンピュータソフトウエアプログラム」、「コンピュータプログラム(記憶されたもの)」、「コンピュータソフトウエア(記憶されたもの)」、「コンピュータ操作用プログラム(記憶されたもの)」等
    第42類:「コンピュータソフトウエアの設計・作成・保守に関する助言」、「コンピュータソフトウエアの設計」、「コンピュータソフトウエアの保守」、「情報技術(IT)に関する助言」等
  • ネット業界
    第35類:「コンピュータネットワークにおけるオンラインによる広告」、「ウェブサイト経由による事業に関する情報の提供」、「インターネットを通じた印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等
    第42類:「検索エンジンの提供」、「情報技術(IT)に関する助言」等
  • 情報処理サービス業界
    第9類:「インターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用プログラム」、「ダウンロード可能なスマートフォン及び携帯情報端末用プログラム」等
    第35類:「ダウンロード可能な映像及び画像の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」等
    第38類:「インターネット回線を用いた電話による通信」、「電子メール通信」、「音声・映像・文字データの伝送交換」、「インターネットへの接続の提供」等
    第41類:「インターネット又はコンピュータネットワークを利用したキャラクターの画像又は動画の提供」等
    第42類:「電子通信ネットワーク及び光通信ネットワークを介して行うソーシャルネットワークシステムの構築」、「コンピュータシステムの設計」、「ウェブサイト経由によるコンピュータ技術及びコンピュータプログラミングに関する情報の提供」、「ウェブサイトの設計に関する助言」、「情報技術(IT)に関する助言」等
    第45類:「オンラインによるソーシャルネットワーキングサービスの提供」、「社交のための紹介」、「オンライン経由での社会ネットワーク作り」等

上記のように、業界が異なっていても商品/役務が類似する可能性があります。例えば、情報技術(IT)に関する助言」は、第42類に分類され、各業界で共通するとも考えられます。業界が似ていることから、知らずに権利を侵害してしまった、とならないためにも、商標権の取得は大変重要です。

次に、どのような点に注意すべきか、IT業界の事件や訴訟とともに具体的にご説明いたします。

IT業界における近年の事件

① チュッパチャプス事件(知財高裁 H24.2.14[平成22(ネ)10076号])

インターネットショッピングモールの「楽天市場」で、棒付きキャンディー「チュッパチャプス」のロゴが入った商品を断りなく販売され、商標権を侵害されたとして権利管理主体のイタリアの企業が、サイトを運営する楽天を提訴した事件。

一審の東京地裁では「商標権を侵害した商品を販売したのは、あくまで出品者であって、運営元・楽天ではない。楽天はただ販売する“場”を提供しただけで、商標権侵害には当たらない」としました。しかし、その後の知財高裁の判決では、基本的に一審の判決を支持し、差し止めや損害賠償請求は退けていますが、一定の範囲で商標法違反の「幇助(ほうじょ)」にあたる可能性も示唆しています。今回のケースでは、商標権侵害の出品を指摘され、把握後8日以内に出品者のページを削除し、迅速な対応を行ったことから「幇助」と見なされなかったのです。

このように、ネットモールの運営元にも商標権侵害の責任が及び得るのです。

では、他の事例も見てみましょう。

② Sky商標権侵害訴訟(H25.7.31. マイクロソフトとBSkyBの間で和解)

有料の衛星放送サービスで知られるBritish Sky Broadcasting Group(通称BSkyB)がマイクロソフトのSkyDriveを商標権侵害として訴えた事件。

“平均的なユーザー”であれば、SkyDriveがマイクロソフトのサービスであることを、きちんと理解している可能性があります。しかし訴訟では、SkyDriveがBSkyBによるサービスであると誤解された事例が多数挙げられました。過去にはマイクロソフトは、“Windows Live SkyDrive”や“Microsoft SkyDrive”という表記を行っていましたが、訴えられる数年前から“SkyDrive”のみで展開を行っていたこともあり、混同が生じたのだと思われます。

結果、マイクロソフトが控訴を行わないことを条件に、新ブランドへの移行が必要な期間に限ってSkyDriveの名前を使い続けることをBSkyBが認めるという形で、BSkyBが勝利を収めました。それにより、今ではマイクロソフトは“SkyDrive”に代わり“OneDrive”としてサービスを展開しています。

”HARAKENZO more”はIT業界の皆様を応援します

近年、常に成長し続けているIT業界では、その発展ゆえ、拡大し続けるサービスや商品を守り、ブランドを支えるものとしての商標の重要性がますます高まっております。

”HARAKENZO more ”としてもIT業界の皆様の知的財産保護にお役立ちしたいと考えておりますので、まずは、お気軽にご相談頂ければ幸いです。

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