外国の商標制度

ベトナムの商標制度

ベトナムにて商標権の権利保護を行う際に役立つ情報を、以下に掲載しております。
本ページが、お客様が海外で知財保護を行う上での一助となれば幸いです。ぜひお役立てください。

ベトナムにおける商標権(登録できる商標について)

※2023年1月1日より改正法施行※

(1)ベトナムにおける商標

「異なる組織および個人の商品またはサービスを識別するために用いられる標識をいう」と定義されている。

また、「登録可能な標章は、文字、語、絵柄、写真、ホログラム若しくはそれらの組合せの形で1若しくは複数の色彩で表現された可視的な標章、又はグラフィック形式で表現された可聴的な標章でなければならず、かつ商標保有者の商品またはサービスを他者の商品またはサービスと識別できるものでなければならない。」と定義されている。

※「単なる色彩であって、文字又は図形等との組合せでないもの」、「匂い」、「味」、「動く商標」等、いわゆる新しいタイプの商標の一部については、商標登録を受けることができない。

(2)特殊な商標

  • 団体商標
  • 証明商標
  • 連合商標

ベトナムにおける商標権(出願から登録まで)

(1)権利の発生

  • 登録主義
  • 先願主義

(2)存続期間

  • 出願日から10年(商標の保護は登録日から始まる)
  • 10年ごとの更新可 → 申請は、存続期間満了の6ヶ月前から可能(割増手数料を納付することで存続期間満了後6ヶ月間更新申請が可能)
  • 更新の際に、委任状の提出が必要

(3)分類(商品または役務)

  • 1出願多区分制を採用
  • 国際分類を採用(商品34区分、役務11区分)
  • 小売等役務制度(第35類)あり

※7区分内で7以上の商品又は役務を指定した場合、7つ目から1つごとにオフィシャルフィーが加算される(マドプロを除く)。

(4)出願書類

  • ①願書
  • ②商標見本(6部提出する必要あり)
  • ③委任状(公証・認証は不要)
  • ④優先権証明書(優先権を主張する場合)

※手続言語はベトナム語

(5)審査

  • ①方式審査
    出願書類について方式審査が行われる。
    方式違反の場合には、応答期間を定めた補正又は補充を求める通知が出される。通知に対して、対応しなかった場合又は不備が是正されない場合、出願拒絶理由通知が出される。
  • ②実体審査
    方式審査の後、実体審査が行われる。
    登録要件を満たさない場合、応答期間を定めた拒絶理由通知が出される。
    拒絶理由通知に対して応答しなかった場合又は拒絶理由が解消しなかった場合には、拒絶査定がなされる。出願人は拒絶査定の発行日から90日以内にその査定について不服審判を請求することができる。
    登録要件を満たす場合又は意見書・補正書により拒絶理由が解消された場合には、登録査定が出される。

(6)出願公開

方式審査を通過すると、方式受理通知の日から2ヶ月以内に公報により出願公開される。

(7)異議申立

  • 出願公開日から5ヶ月以内に、何人も異議申立をすることができる。
  • この異議申立とは別に、出願公告日から登録査定日前までの間、情報提供手続も可能である。

(8)審判制度

  • ①拒絶査定不服審判
  • ②無効審判
  • ③不使用取消審判
    (5年間不使用であれば何人も取消請求可。商品・役務ごとに取消可)

※<ベトナムの平均的な審査期間> ※2018年6月時点
現状では、出願から登録に至るまでの審査期間は、拒絶理由がなければ、約16~18ヶ月程度となっている。

(9)その他

方式審査OA応答期間 2ヶ月
実体審査OA応答期間 3ヶ月
庁期限徒過の弁明 上申と共に不可抗力・客観的障害により所定の期限内に手続ができなかったことを立証する証拠を提出し、審査官が承諾した場合には、庁期限徒過後の手続が認められる。
不服審判に代わる応答手続 拒絶査定を受領した場合であって、審査段階で考慮されておらず、かつ、審査結果に影響を与えるような新たな事実又は詳細がある場合には、不服審判の請求に代え、これらを提出することが可能。
NOIPは拒絶査定を取り消し、再度審査することを検討する。
審判段階での新たな事実又は詳細の取り扱い 新しい事実又は詳細の提出は受理されない。
新しい事実又は詳細がある場合には、出願人・審判請求人の申請により、出願が再度審査される可能性有。
*ただし、「新しい事実又は詳細」の定義、再審査に関する手続規定は未だ公表されていない。
ディスクレーム要求に対する異議 NOIPより、商標の構成中、ある特定の要素についてディスクレームを要求された場合、3ヶ月以内に異議申立可能。
審判請求の通知送達 NOIPは、審判請求書を受領した日から1ヶ月以内に、審判請求の通知を商標権者に送付する。
登録料納付期間 3ヶ月
マドプロでベトナムを指定した場合の実体審査OA応答手続 拒絶の日から3ヶ月以内に意見書等で応答可能。
当該応答によってもなお、拒絶理由を克服しない場合、拒絶査定が通知される。90日以内に不服審判(appeal)を提出可能。

権利侵害への対処(商標権の侵害)

ベトナムにおける「商標権の侵害」とは、以下の行為をいう。

  • 商標権者の許諾なくして、登録商標と同一の標識を、当該登録商標に係る指定商品又は役務と同一のものに使用すること。
  • 商標権者の許諾なくして、登録商標と同一又は類似の標識を、当該登録商標に係る指定商品又は役務と同一又は類似、並びに、関係する商品又は役務に使用すること。ただし、当該使用が、当該商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることを条件とする。

権利侵害への対処(救済措置)

他人の商標権の侵害行為を犯した組織及び個人は、当該侵害の内容及び程度に応じて民事的制裁、行政的制裁、又は刑事的制裁を受ける(知的財産法第199条(1))。

①民事的救済 (知的財産法第202条) 裁判所は、知的所有権の侵害行為を犯した組織及び個人に対して、次の民事救済措置を講じる。

  • 侵害行為の差し止め
  • 評判の是正及び謝罪
  • 民事的義務の遂行
  • 損害賠償
  • 知的所有権侵害商品の創出又は取引に主として使用された商品、素材及び用具について、廃棄、非商業目的での頒布又は使用を強制すること。ただし、当該頒布及び使用が知的所有権所有者による権利行使に影響を与えないことを条件とする。

②行政的救済(知的財産法第211条・第214条)
(i)知的所有権侵害である次の行為を犯した組織及び個人は、行政違反処分に関する法律に基づく行政違反処罰および矯正措置に処せられる。

  • 所有者、消費者又は社会に対して損失を及ぼす知的所有権侵害
  • 偽造商品を生産、輸入、輸出する、又は他人にこれらの行為を委託すること
  • 偽造商標を付したスタンプ、ラベルまたは他の物品を生産、輸入、輸出する、又は他人にこれらの行為を委託すること

(ii)知的所有権侵害である次の行為を犯した組織及び個人は、次の内容の矯正措置に処せられる。

  • 知的所有権侵害品や、知的財産権侵害品の製造や取引に用いられた用具、原材料、製造用材料について、非商業的目的のための強制頒布、使用を行う。ただし、当該頒布及び使用が知的所有権所有者による権利行使に影響を与えないことを条件とする。

(iii)模倣品の取締りを行う主な行政機関は以下の2つがある。

  • 産業財産権監査局
    ベトナム全土を管轄しているため、模倣行為がベトナム全土に跨るときに使用しやすい。
  • 工商省の市場管理局
    行政上の処分を求める際、最も一般的に使われる機関であり、摘発件数が多く、スピーディーな処理が可能となっている。ただし、市場ごとに設置されているため、管轄もその市場内に限られる。

③刑事的救済(知的財産法第212条)
基本的には、違反行為に応じて侵害者に対して、警告又は罰金のいずれかの罰則措置を講ずる。

マドプロ出願について

  • 国内出願と同じく、絶対的拒絶理由と相対的拒絶理由について審査がおこなわれる。
  • 拒絶理由には、全体を拒絶するものと部分的に拒絶をするものの2種類があり、部分的な拒絶の場合には、応答せず放置したとしても拒絶の対象となっていない部分についてはそのまま登録が認められる。
  • ベトナム国内に住所や営業所を有しない出願人は、ベトナムでの資格をもつ代理人を通して応答しなければならない。
マドプロでベトナムを指定した場合の実体審査OA応答手続 (新)拒絶の日から3ヶ月以内に意見書等で応答可能。
当該応答によってもなお、拒絶理由を克服しない場合、拒絶査定が通知される。90日以内に不服審判(appeal)を提出可能。

条約

主な条約への加盟状況は以下の通り

パリ条約 WTO協定 商標法条約 マドプロ ニース協定
加盟 加盟 未加盟 加盟 未加盟 ※

※国際分類は採用

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