目次
はじめに
フィリピン共和国(以下、「フィリピン」という。)にて商標権の権利保護を行う際に役立つ情報を、以下に掲載しています。
本ページが、お客様が海外で知財保護を行う上での一助となれば幸いです。ぜひお役立てください。
<平均的な審査期間> ※2018年3月時点
現状では、出願から登録査定に至るまでの審査期間は、約1ヶ月から5ヶ月程度となっています。
フィリピンにおける商標権
1.登録できる商標について
(1)フィリピンにおける商標
「商品・役務を識別できる可視標識(visible sign)を指し、刻印または押印した商品の器を含む」と定義されている。
(2)特殊な商標
- 立体商標
- 団体商標
- 色の組み合わせ
- ホログラム
※音、匂い、味、単色、動く商標は非保護対象。
(3)商標制度の概要
- 実体審査
- 使用に基づく先願主義(使用証拠の提出義務あり)
- 1出願1商標制度
- コンセント制度及びディスクレーム制度あり
2.商標権について
(1)権利の発生
-
- 実体審査後、出願公告がされる。第三者による異議申立期間は公告日より30日以内である。
- 異議申立がなされなかった場合、または異議申立により拒絶査定とならなかった場合は、出願人は登録料を納付すれば商標は登録される。
- 使用主義
※出願時には出願する商標を使用している必要はないが、出願日から3年以内に「使用宣言書」及び「使用証拠」の提出義務あり。
(2)存続期間
- 登録日から10年
- 10年毎の更新が可能。更新手続き期間は、登録満了日の前後6ヶ月で、登録満了日を超過しての更新には別途追加手数料が必要。
(3)分類(商品または役務)
- 1出願多区分制度
- ニース分類の区分に従って記載(なお、フィリピンはニース協定には未加盟)
- 包括的表記は認められていない。
(3-1)区分による出願料金体系
- 小規模団体と大規模団体により出願料金が異なる。
(4)出願に必要な書類(書類は英語またはフィリピン語)
- ①願書
- ②商標見本
- ③委任状:出願日より60日以内に提出。公証や認証の必要は無い
- ④出願料の納付
※「現実の使用に基づく出願」、「使用意思に基づく出願」、「出願人の本国登録に基づく出願」のうちいずれかに基づく出願でなければならない。
*以下は必要な場合のみ*
- 優先権を主張する場合:基礎出願の出願国、出願日と出願番号。優先権証明書が英語でない場合は英訳。優先権証明書の提出は出願から3ヶ月以内であれば可能。
- 外国語で表示されている商標の場合:その商標の翻訳または音訳の表示
- 色彩を主張する場合:色彩の表示や色彩の指定
- 立体商標・団体商標の場合:その商標の説明
(5)審査
- 商標出願は最初に方式審査が行われる。方式を満たしていない場合は1ヶ月以内に是正しなければならず、是正がなされない場合には出願は取り下げられたとみなされる。
- 方式審査後、審査請求なしで実体審査が行われる。拒絶理由が通知されてから2ヶ月以内に意見書・補正書を提出する必要があるが、2ヶ月の延長を申請することが可能。
- 一定の条件に該当する商標出願は、宣誓に基づく正式な請求と手数料納付により、優先的な審査の促進が可能である。
(6)取消事由
- 不使用取消制度:商標登録より3年間使用されていない場合、第三者の請求により登録が取り消される。
- 無効・取消請求:商標が登録要件に反して登録された場合はいつでも登録の無効・取消を請求することが可能。なお、先行商標との同一性・類似性を理由とする場合には登録から5年間経過した後の請求は認められない。
3.商標の使用について
フィリピンでは出願時に商標を実際に使用している必要はないものの、出願日から3年以内に使用宣言書(Declaration of Actual Use、略称DAU)及び使用証拠を提出する必要がある。さらに、登録(含む、更新登録)後5年を経過した1年以内に提出義務がある。
また、2017年8月1日より、更新登録後1年以内の提出義務が追加された。
4.権利侵害への対処
- フィリピン商標法では、2種類の侵害が規定されている。
- ①登録商標権侵害:登録された商標と類似または同一の標識または包装箱を用いることは侵害となる。
- ②著名商標侵害:著名商標との関連性を示すような標識は、登録された著名商標と異なる指定商品・役務であっても侵害となり得る。
5.条約
主な条約への加盟状況は以下の通り。
パリ条約 | WTO協定 | 商標法条約 | マドプロ | ニース協定 |
加盟 | 加盟 | 未加盟 | 加盟 | 未加盟 |