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特許出願の非公開制度の運用開始

特許出願の非公開制度が2024年5月1日からスタートしました。

本制度は、安全保障上機微な発明の特許出願につき、「保全指定」という手続により、出願公開の留保や、外国出願の制限等の措置を講じる制度であり、「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」(令和4年法律第43号)(以下、「法」と称します)に規定されています。

(特許庁HPより引用:https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/hikokai/index.html

保全指定の対象となる発明

(1)特定技術分野(下図参照)に属する発明

(2)特定技術分野に属する発明であっても、保全指定をした場合に産業の発達に及ぼす影響が大きい技術分野(付加要件対象分野)に属する場合にあっては、政令で定める要件(付加要件)に該当するものに限って保全審査の対象となります。

(内閣府HPより引用:https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/doc/tokutei_gijutsu_bunya.pdf

 

損失の補償

保全審査の結果、保全指定されると、発明の実施の許可制(法第73条)、発明内容の開示の原則禁止(法第74条)、発明情報の適正管理義務(法第75条)、他の事業者との発明の共有の承認制(法第76条)及び外国への出願の禁止(法第78条)の制限が課されます。このような保全指定に伴う制約により損失を受けた者に対して、国が「通常生ずべき損失」を補償することが規定されています(法第80条)。

 

外国出願の禁止

特許出願の非公開制度において、外国出願の禁止に違反して外国で特許出願した場合、罰則が科されます。この場合の外国出願の類型は、次の3つです。

①日本出願前に外国出願の禁止の規定に違反して外国出願をしたとき(法第94条)

②日本出願後、保全審査の対象となる発明(法第66条第1項本文に規定する発明)について、保全審査が終わる前に外国出願の禁止の規定に違反して外国出願をしたとき(法第94条)

③保全審査の結果、保全指定された保全対象発明について外国出願をしたとき(法第92条第1項第8号)

保全審査に付される場合には、日本出願日から3月以内に特許庁からその旨の通知が来ますが、日本出願日から3月を経過するまでは、保全審査に付されないとの確証は得られません。そのため、日本出願を優先権主張の基礎とする外国出願を日本出願日から3月以内に行う場合には、上記①の場合と同様の注意が必要です。

 

発明単位の判断

外国出願の禁止に違反しているかどうかの判断は、出願単位ではなく、発明単位でなされます。

ケーススタディ

本制度の施行日(2024年5月1日)前に発明αについて国内出願Aを行っていた場合、施行日以降に発明αについて外国出願Bをしても、本制度は適用されません。

一方、国内出願Aを優先権主張の基礎として、発明αに加えて発明βについても施行日以降に外国出願Cをした場合、発明βについては本制度が適用されます。発明βが発明αのちょっとした変更例であったとしても、発明βが保全審査の対象となる発明であれば、外国出願Cは、「外国出願の禁止に違反して外国でした特許出願」に該当します。

 

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