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Tシャツに付したイラスト関する商標判決紹介

Tシャツに付したイラスト関する商標判決紹介
-令和3年(ワ)第10991号 損害賠償請求事件(2023年9月29日)-

(原告:商標権者)株式会社Fathom /(被告)株式会社ストライプインターナショナル

判決要旨

概要

被告が販売したTシャツに付されている被告標章(イラスト)について、原告イラストの著作物性や原告イラストに対する著作権侵害の有無、被告標章の商標的使用の該当性や原告商に対する商標権侵害の有無等が争われた事例。

被告標章(被告イラスト)

被告製品

原告商標
(原告イラスト1)

原告イラスト2

原告製品

原告イラスト2は著作物性が認められ、被告イラストは翻案権・同一性保持権を侵害すると判断された。

・原告イラスト2は、Tシャツの実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となる美的特性を有すると認定された。

・原告イラスト2と被告イラストとで具体的な表現の共通点が5つあり、その全てが偶然一致することは考え難いとして依拠が認められることから翻案権の侵害に該当し、原告イラスト2から改変が認められることから同一性保持権を侵害すると認定された。

原告商標と被告標章との間において、誤認混同のおそれがあると認定された。

・被告標章は、絵柄部分と文字部分について、態様が異なっていること、観念的な関連性を有しているとは認められないこと、一体として何らかの称呼が生じるとは認められないこと、から分離して観察することは取引上不自然と思われるほど不可分に結合しているとは認められない。

・絵柄部分は被告商標の約8割を占めている上、中央に大きく描かれ、明るい色で彩色されている。一方、文字部分は欧文字であり、日常馴染みがある言葉ではない。そうすると、絵柄部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えることから、絵柄部分のみ抽出し原告商標との類否を判断することも許される。

・原告商標と被告標章とは複数の相違点があるものの、黒色のサングラスをかけ、靴を履いたビキニ姿の女性が、水の上に浮かぶビーチマットの上にうつ伏せで寝そべり、膝から下の脚を背部に向けて折り曲げて、頭部は画面奥に向く体勢をとっている点が需要者に対して共通の印象を与える(外観は類似)。また、観念は、いずれも「水の上に浮かぶビーチマットに寝そべる女性」であり同一。以上を総合すると誤認混同のおそれがある。

被告標章の使用は、商標的使用に該当すると認定された。

[被告の使用態様]胸部の中央に大きく印刷

■被告の主張■ 需要者は、通常、Tシャツの首後ろ部に印刷された被告シリーズの名称や被告製品販売時に付された紙製のタグにより被告製品の出所を認識するから、被告標章により出所を認識するものではなく、被告標章は自他商品識別機能を果たさない態様で使用されていた。

■裁判所の判断■ 商標がTシャツの首後ろ部の表示やタグだけではなく、胸元に大きく付された商品も多く存在すると認められること(当裁判所に顕著な事実)に照らすと、需要者がTシャツの首後ろ部に印刷された名称や紙製のタグにより被告製品の出所を認識するとの事実を直ちに認めることはできないというべきであり、本件全証拠によっても、被告主張の事実を認めることはできない。

 

 

コメント

商標的使用の該当性について

装飾的な表示について、ポパイ・アンダーシャツ事件(大阪地裁S51/02/24:S49(ワ)393)のように商標的使用が否定された判決は複数存在するものの、本判決やH25(ワ)27442,34269 判決(東京地裁H26/11/11)のように、その表示の態様の実情等が考慮された場合には、商標的使用に該当すると判断され得る。

特に本判決において、[商標が胸元に大きく付された商品も多く存在すると認められること]が、顕著な事実として認定されたことから、今後の商標的使用に関する判断に与える影響は小さくないと考える。

  

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