目次
商標法第4条第1項第8号の改正
~他人の氏名を含む商標の登録要件緩和~
2024年に商標法第4条第1項第8号の改正が予定されております。本改正により、他人の氏名を含む商標の登録要件が緩和される予定ですので、下記の通り改正の経緯と改正の内容をお伝えいたします。
※2023年12月15日時点における情報(特に12月13日に公開された審査基準改定案)をもとにしています。実際に開始される運用は異なるものになる可能性がある点、ご留意ください。
1.現行制度とその課題
(1)現行の規定
第4条第1項柱書
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)
(2)改正の必要性
人格的利益の保護に重きを置くあまり硬直的な運用となっており、一部問題する声が上がっておりました。
①創業者やデザイナー等の氏名をブランド名に用いることの多いファッション業界を中心に、本規定の要件緩和の要望あり
②氏名を含む商標が採用されることの多いファッションブランドの多くは中小企業が展開→そのような中小・スタートアップ企業のブランド保護の観点
③米国、欧州、中国及び韓国等の諸外国では、他人の氏名を含む商標の登録について、他人の氏名の知名度を要件とする制度が設けられている→国際的な制度調和の観点
②氏名を含む商標が採用されることの多いファッションブランドの多くは中小企業が展開→そのような中小・スタートアップ企業のブランド保護の観点
③米国、欧州、中国及び韓国等の諸外国では、他人の氏名を含む商標の登録について、他人の氏名の知名度を要件とする制度が設けられている→国際的な制度調和の観点
(3)改正の指針
①「人格的利益の保護」という本規定の趣旨を「出願に係る指定商品・役務と氏名とを結びつけられることによる弊害又は不利益を受けない権利」と整理
②当該「他人」の知名度が高ければ高いほど、上記弊害又は不利益は高くなる→「他人」を一定程度知名度のあるものに限定可能
③知名度がない他人の氏名についての冒認的出願への対処として、出願人側の事情(正当な理由があるか)を考慮
②当該「他人」の知名度が高ければ高いほど、上記弊害又は不利益は高くなる→「他人」を一定程度知名度のあるものに限定可能
③知名度がない他人の氏名についての冒認的出願への対処として、出願人側の事情(正当な理由があるか)を考慮
2.改正法
八 他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないもの
・商標法施行令
第1条 商法法第4条第1項第8号の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
二 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。
第1条 商法法第4条第1項第8号の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
二 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。
(1)改正法の概要
①4条1項8号を「他人の承諾」が必要な場合と不要な場合に分離。
②「又は」の前部分については、従来の規定のうち、「他人の氏名」についてのみ、一定の知名度があることを必要とした。
③「又は」の後部分については、冒認的出願への対処として、出願人側の事情につき政令で定めるものとした。
②「又は」の前部分については、従来の規定のうち、「他人の氏名」についてのみ、一定の知名度があることを必要とした。
③「又は」の後部分については、冒認的出願への対処として、出願人側の事情につき政令で定めるものとした。
(2)政令で定める要件
①1号の「相当の関連性」とは、出願人の自己氏名、創業者や代表者の氏名、出願前から継続的に使用している店名等である場合が想定されている。
②2号の「不正の目的」とは他人への嫌がらせの目的や先取りして商標を買い取らせるといった目的が想定されている。
②2号の「不正の目的」とは他人への嫌がらせの目的や先取りして商標を買い取らせるといった目的が想定されている。